Vol.4 No.4 2011
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研究論文:地質学から見た高レベル放射性廃棄物処分の安全性評価(山元)−203−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)の影響が及び得る範囲を考慮する必要がある。・地震活動により、将来放射性物質を閉じ込めておく機能に影響を与える可能性のある地下水の流動あるいは水質の変化が予想される地域は、地震活動の影響について考慮する必要がある。・地震活動に影響を与えるテクトニクスについて、将来におけるその安定性を考慮する必要がある。③火山・マグマ活動・第四紀火山の存在が明らかとなった地域は、噴火により廃棄体が直接破損あるいは地表に放出される可能性があり、避ける必要がある。・第四紀火山が存在しなくとも新たに火山が出現し得る地域は、噴火により廃棄体が直接破損あるいは地表に放出される可能性があり、避ける必要がある。・第四紀火山の周辺あるいは巨大噴火の可能性のある範囲の周辺で、将来放射性物質を閉じ込めておく機能に影響を与える可能性のある地下水の流動、水質の変化あるいは地温の変化が予想される地域は、火山・マグマ活動の影響について考慮する必要がある。・火山・マグマ活動に影響を与えるテクトニクスについて、将来におけるその安定性を考慮する必要がある。④深部流体・深部流体の活動により、将来放射性物質を閉じ込めておく機能に影響を与える可能性のある地下水の流動あるいは水質の変化が予想される地域は、深部流体の活動の影響について考慮する必要がある。・深部流体の活動に影響を与えるテクトニクスについて、将来におけるその安定性を考慮する必要がある。⑤泥火山・第四紀に活動した泥火山の存在が明らかとなった地域は、噴火により廃棄体が直接破損あるいは地表に放出されることが懸念されるので、避ける必要がある。(泥火山=異常に高い間隙水圧をもつ泥が、地下水、ガス、時には石油とともに地表に噴出する現象)⑥マスムーブメント・大規模なマスムーブメントの兆候が概要調査で明らかとなった地域では、斜面変動に伴うクリープやずれ破壊により廃棄体が直接破損することが懸念されるので、クリープやずれ破壊の影響が及ぶ範囲は避ける必要がある。(マスムーブメント=地表における物質移動の総称で、地すべりや土石流等を含む)4 長期的な将来予測の方法論4.1 基本的考え方すでに述べたように地層処分の安全性評価では、数十万年以上先まで地質および気候関連事象の将来予測を行う必要がある。例えば地震活動の評価では、問題とする時間スケールによって、短期(直前〜約1年)と長期(約1年〜100年程度)の評価に分類されることがあるが、この区分けにしたがえば地層処分で行うべき予測は超長期と呼ぶべきものである。地震活動の評価の方法論は評価期間によって違いがあり、短期評価では地球物理学的・測地学的・地球化学的・水文学的観測が主な手法である。これに対し、長期評価では、過去の歴史からの統計的推論が主な手法となってくる。日本では、1995年の兵庫県南部地震以後、地震の長期評価が積極的に進められ、プレート境界地震や主要活断層沿いの地震については発生確率で評価できるようになってきた(地震調査研究推進本部;http://www.jishin.go.jp/main/p_hyoka02.htm)。しかし、今回の東北地方太平洋沖地震(M9.0)が“想定外の事象”であったように、今の長期評価自体が防災上も十分に機能していたとは言いきれない。ましてや、既存の長期予測をそのまま超長期に外挿しようにも、長期評価の元になる初期条件や再来間隔が超長期に一定であるかどうか不確実性が大きく、信頼性のある評価とは現状ではなり得ない。それゆえ10万〜100万年という超長期の時間を取り扱うには、統計的推論以外にも地質学的な各種の調査が必要となる。地層処分における地質および気候関連事象の将来予測では、評価対象地域で過去に起きた事象の地質学的な変動傾向を明らかにし、これを将来に外挿することが基本となる。将来10万〜100万年間に外挿するのであれば、これと同じかこれ以上の過去にまで遡る必要があろう。その上で統計的推論に十分な質・量の事象の活動履歴が得られれば、地震の長期評価のように確率的な評価もできるようになるかもしれない。しかし、すべての活動履歴が地質学的に保存されているわけではなく、十分な履歴が得られないケースのほうが圧倒的に多い。そのため、限られたデータから将来予測を行わなければならず、必ずしも定量的な扱いが可能ではないことは考慮しておく必要がある。例えばプレート境界地震では、活動履歴は歴史記録や津波堆積物に頼るしかなく、地質学的な痕跡を地表調査から長期間にわたり捉えることには限界がある。また、活断層沿いの大地震も、断層と被覆層の関係によっては、1万年内程度の活動履歴しか得られず、評価期間に比べて情報量が不足するケースが多いと予想される。変動地形学的に侵食履歴を明らかにする場合も、評価期間に見合うだけの十分な編年された指標地形面が、評価対象地域やその周辺に
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