Vol.4 No.4 2011
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研究論文:地質学から見た高レベル放射性廃棄物処分の安全性評価(山元)−202−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)長期にわたり安定していることが必要である。特廃法でも「地震、火山、隆起、侵食その他の自然現象による地層の著しい変動の記録がないこと」、「将来にわたって、これらの自然現象による地層の著しい変動が生じるおそれが少ないと見込まれること」を処分候補地に求めている。すなわち、地層処分では、高レベル放射性廃棄物を地震等の自然現象の影響が及ばない安定した地質環境へと隔離することが重要となる。そのためには、地層処分システムが将来10万年を越えるような地質環境の長期変動によってどのような外的影響を受けるかを網羅的かつ定量的に評価することが求められよう。産総研深部地質環境研究コアおよびその前身の深部地質環境研究センターでは、経済産業大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会の下に設置された廃棄物安全小委員会での地層処分に関する安全規制の検討に必要な知見の取りまとめを行ってきた。図2は、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)の作成した地層処分についての国際FEPリストをもとに、我が国の場合の地層処分システムに外乱として影響を及ぼし得る事象を特定した相関図である[4]。FEPは大きくは地球の内部エネルギーに原因がある「F1.2.01構造運動・造山運動」を起因とする地質関連FEPと、太陽の入射エネルギーに原因がある「F1.3.01地球規模気候変動」を起因とする気候関連FEPに区分される。図2では、これらを左右に配置し、下流の最下段に処分システム領域を置いている。一つの出来事がプロセスを経て次の出来事を引き起こし(図中の矢印)、これがさらに次のプロセス、出来事を誘発するという一連の事象(シナリオ)ととらえられるようにしている。なお、図2中で因果関係の矢印で結ばれていない括弧付きのFEPは、日本の場合、ほとんど影響を無視し得るとして検討から除いたものである。上記の処分システムに影響を与える地質および気候関連事象の検討を経て、深部地質環境研究センターでは、さらに2007年に「概要調査の調査・評価項目に関する技術資料」を公表した(http://www.gsj.jp/GDB/openfile/files/no0459/0459index.html)[5]。この資料は特廃法の定める概要調査(精密調査地区選定段階における地表からの各種調査)において、閉鎖後の処分場の安全確保に必要な評価項目と調査手法を明示したことに特色があり、以下の項目を抽出している。①侵食・堆積および海面変化・予測侵食量が埋設深度以上となり、廃棄体が地表に露出する可能性のある地域は、避ける必要がある。・隆起・沈降および氷河性海面変化による相対的海面変化により、将来放射性物質を閉じ込めておく機能に影響を与える可能性のある地下水の流動あるいは水質の変化が予想される地域は、相対的海面変化の影響について考慮する必要がある。・隆起・沈降に影響を与えるテクトニクスについて、将来におけるその安定性を考慮する必要がある。②地震活動・第四紀に活動した断層の存在が明らかとなった地域では、断層沿いのずれ破壊により廃棄体が直接破損する可能性があり、その断層の影響の及ぶ範囲は避ける必要がある。・第四紀に活動したものでなくとも、地表やその地下に大規模な断層が存在する場合は、その断層の再活動性や誘発変異の可能性が想定されるので、ずれ破壊F1.2.07 侵食と堆積大気循環系の変化海流系変化気温・降水量変化降水量変化塩淡水界面の移動の変化浸食基準面動水勾配の変化裂か形成裂か形成水温・水質変化マグマの発生裂か形成ユースタシー非地震性変形変形地震性貫入構造性地震火山性地震火山性流体アイソスタシー隆起・沈降深部流体の上昇F1.2.05 変成作用F1.2.03 地震活動F1.2.04 火山・マグマ活動F1.2.02 弾性、塑性または脆性的変形(地質構造の変形)[F1.2.09 岩塩の注入・溶解][F1.3.06 暖かい気候の影響]F1.3.02 地域的・局所的気候変動F1.3.01 地球規模気候変動F1.2.01 構造運動・造山運動プレートの運動・マントル対流・プリューム地球の内部エネルギー太陽の入射エネルギー[F1.3.05 局所的な氷河と氷環の影響][F1.3.04 周氷河現象]F1.2.06 熱水活動隆起・沈降F1.3.03 海面変化削剥地震動・断層噴火・貫入F1.2.10 地質の変化に伴う水文学・水文地質学的変化処分システム領域F1.3.07 気候変動に伴う水文学・水文地質学的変化F1.2.08 続成作用図2 FEP(Feature、 Event and Process)リストに基づく地層処分における地質および気候関連事象の相関図Fで始まる番号は、OECD/NEAのFEP番号である。矢印はFEP間の影響の伝搬を示している。山元・小玉[4]を一部改変。
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