Vol.4 No.4 2011
12/62

研究論文:地質学から見た高レベル放射性廃棄物処分の安全性評価(山元)−201−Synthesiology Vol.4 No.4(2011)ベルによって二つの処分施設のいずれか、すなわち第一種廃棄物埋設施設または第二種廃棄物埋設施設に処分することが決められている。前者は、いわゆる地層処分と呼ばれるものであり、長期にわたり廃棄物を生物圏から隔離する必要のある場合にとられる処分方法で、地下300 m以深に廃棄物を埋設する。対象となる廃棄物は、高レベル放射性廃棄物と低レベル放射性廃棄物の一部(長半減期低発熱放射性廃棄物)である。高レベル放射性廃棄物は、使用済核燃料を再処理する過程で生じた高レベル放射性廃液をガラス固化したもので、半減期の長い核種を含むため放射性廃棄物としての「寿命」はとても長いことに特徴がある。そして、このことが地層処分という人による管理を前提としない処分方法を選択する基本的な理由となっている。高レベル放射性廃棄物の放射能がもとのウラン鉱石(品位1 %の高濃度のもの)の放射能レベルまで下がるのには発電後10万年程度を要するものとされている[1]。一方、第二種廃棄物埋設とは、人の介在を前提とした管理処分であり、比較的浅い地下に前述以外の低レベル放射性破棄物を埋設する。放射性廃棄物の処分の形態は廃棄物の種類によって異なるが、いずれの場合も廃棄物による一般公衆の被ばくを所定値以下にし、かつ合理的に可能な限り低く保つものでなければならない[2]。これを基本的な安全性と考え、その安全性を確保するために、最終処分場では廃棄体そのものを含む人工的なバリア(「人工バリア」)とその周辺の地層等(「天然バリア」)から構成される多重のバリアが構築される計画である[3]。人工バリアは放射性核種をできるだけ長く保持し、天然バリアへの放出を緩慢にさせる役割をもつ。また、天然バリアは単に物理的に放射性核種を生物圏から隔離するだけでなく、たとえば人工バリア環境を長期にわたり一定の環境に保つための安定した外部条件を提供することも期待されている。このように、これらのバリアは相補的に機能することが期待され、廃棄体そのものとその周囲にある多重バリアの全体を一般に処分システムと呼ぶ。地層処分の場合、閉鎖後の処分システムの安全性評価の対象期間は数十万年を超えるとされるが、そのような長期の安全性をいかに示すのか、いかなる基準を設けるべきなのかが大きな問題となる。日本における高レベル放射性廃棄物の地層処分の事業化は2000年6月に制定された「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(「特廃法」)に基づいている。この法律では、次に示す3つの段階を経てサイト選定を進めることが定められている。①概要調査地区の選定:文献その他の資料による調査(文献調査)を行い、文献調査の対象となった地区の中から概要調査地域を選定する。②精密調査地域の選定:概要調査地区について、地表踏査、ボーリング、トレンチの掘削や物理探査等地表からの調査を行い、概要調査地区の中から精密調査地区を選定する。③最終処分施設建設地の選定:精密調査地域について、地上での詳細な調査に加え、実際に地下に施設を建設し、地層の物理的および化学的性質の調査等を行い、精密調査地区の中から最終処分施設建設地を選定する。 また、特廃法に基づき処分を実施する組織として2000年10月に原子力発電環境整備機構(NUMO)が設立されている。同機構は2002年12月から全国の市町村に対し処分候補地の公募を行っているものの、2011年10月現在、公募に応じた自治体はない。3 FEP(Feature、Event and Process)に基づく日本の地層処分における地質学的課題の抽出日本における地層処分の最大の関心事の一つは「地震等が頻発する我が国で安全性を十分に確保した地層処分が可能なのか」という点にあろう。地層処分の安全確保では、当然ながら、処分施設を設置する地域の地質環境が 閉鎖後の安全確保シナリオによる安全評価地層処分に適さない地域・範囲の除外- 地下水システム- ベースライン- 鉱物資源地質環境に関する調査・評価項目- 侵食・堆積及び海面変化- 地震活動- 火山・マグマ活動- 深部流体- 泥火山- マスムーブメント長期変動(外的要因)に関する調査・評価項目の調査・評価項目地層処分立地選定調査原子力安全委員会環境要件特廃法第6条、第7条、第8条処分地選定要件処分システム領域に影響を与える事象G1-G56関連事象(廃棄物安全小委員会報告書)地質および気候階層2処分システム領域階層1外的要因国際FEP閉鎖後の安全評価事項図1 地層処分における立地選定調査の調査項目と閉鎖後の安全確保との関係

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です