Vol.4 No.3 2011
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研究論文:札幌市庁舎ビルの空調システムの省エネルギー化実証実験(武内)−137−Synthesiology Vol.4 No.3(2011)作業できるようになった。その結果薬剤の追加投入は年に一度有るか無いかという現状である。界面活性剤の濃度測定は冷暖房切り換え後の年2回行っている。濃度は校正曲線を用いてサンプル水の導電率から現場でも間接的に推定できるが、最終的には依頼分析により、鉄、銅等の濃度と共に薬剤の濃度を求めている。配管は、老朽化による錆の発生のため2001年に鉄からステンレスに変えられているが、熱交換器は鉄製そして各部屋のファンコイルは銅製であり、電食が起こる可能性がある。今回の薬剤に変えてからすでに1600日余りが経つが、循環水中の鉄および銅の濃度は安定しており系内に腐食は発生していないと判断される。薬剤の長期安定性については、循環水中にすでに混入していた物質と薬剤との相互作用、温度履歴からくる失効、薬剤そのものの寿命等が影響すると考えられる。短時間で起こる不安定性は注入前に把握できることもあるが、長期的なものは実施例から判断せざるを得ない。しかし、これまで実施してきた注入で追跡調査は公開されておらず、1600日余り効果が持続しているこの例は、この観点からも貴重な実証である。なお、薬剤の毒性については製品安全データシート(MSDS)が作成されており、河川に直接放流せずに廃水処理場を経由して処分すれば問題はない。7 技術普及促進の効果これまで3度の報道発表後の、流動抵抗低減剤の開発元であるL社への問い合わせ件数の推移を図6に示す。2007年2月の暖房期の実験結果を5月に産総研でプレス発表[10]したところ、その後の問い合わせ件数は増加している。また、翌年の冷房期の実験結果発表を札幌市役所で行ったが、発表が地方紙中心であったためか件数の顕著な増加は見られなかった。翌年の1月にNHKで全国放送[11]されると、件数は急増した。図6に示した2年間で実際に導入が行われた箇所としては、民間の工場が最も多い9件、空港施設4件、公共施設3件そして民間ビル2件の合計18件であり、L社によれば明らかに産総研の実証実験の公表後導入件数が増加したとのことである。これまではL社が民間施設に導入しその省エネ効果について公表しても、民間会社が自社技術の宣伝を行っているとしか受け取られなかった面が強かった。しかし、今回のように産総研という公的研究機関が公共施設でその技術の有効性を実証したという報道は、客観的であり、省エネ導入を加速したい事業所に実現可能な情報を与え、その結果問い合わせ件数の増加とそのうちのいくつかが導入につながったと考えられる。また、問い合わせ内容は技術の概要を聞くこれまでのものとは明らかに異なり、導入対象と考えている建物の設備概要を示し、経費も含め導入を前提とした質問が多かったとのことである。表3には2007年5月のプレス発表後、産総研に寄せられた約150件の問い合わせの中で典型的な例とそれへの回答を紹介する。問い合わせでは、より低温すなわち不凍液との共存下での流動抵抗低減について、さらには氷蓄件数010203040502007年1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月2008年1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月2009年1月冬期実験夏期実験2007年5月28日産総研プレス発表2007年11月2日札幌市プレス発表2008年1月4日NHK全国放送おはよう日本月どんな小さなポンプでも効果はある。例えば、Toms効果のデモンストレーションに用いている可搬型実験装置は、内径12 mmのビニールチューブ18 mを直径約30 cmの輪状に束ねた流路であるが、約30 %の省エネ効果を示す。ポンプは150 Wを使用。この界面活性剤5000 ppm程度では凝固点降下はあまり期待できない。不凍液の混在下での流動抵抗低減効果については小型の実験装置で確かめる必要がある。15年前から屋根裏に熱交換器を設置し、春から秋まで温水を得ている。小さなポンプでも同様な効果は得られるのか。また、熱媒体には凍結防止のため不凍液が入っている。界面活性剤入りの水は不凍液と同様の機能もあるのか。個人宅札幌市役所の現場見学をしながら原理およびMSDSを説明。食品添加物で流動抵抗低減の基礎実験をしたことはない。工場で冷水循環に大きなエネルギーを必要としているので省エネ化を図りたい。また、食品添加物として認められている界面活性剤で流動抵抗低減効果のあるものはないか。大手飲料メーカークーリングタワー部が大気開放系であり、この箇所で発泡が起きるため使用できない。設備担当が図面を持参し、建設中の新庁舎で実験したいと問合せ。地方自治体配管の経年劣化がかなり進んでおり、管内壁の錆が問題である。界面活性剤が錆と結びつき効果が現れない可能性がある。庁舎ビルに導入できないか。中央省庁回 答内 容問合せ元図6 L社への問い合わせ件数の推移表3 産総研への問い合わせと回答例

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