Vol.4 No.3 2011
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研究論文:札幌市庁舎ビルの空調システムの省エネルギー化実証実験(武内)−135−Synthesiology Vol.4 No.3(2011)1971年に竣工し、その規模は、地下2階、地上19階、総床面積42,000 m2であり、第二種エネルギー管理指定工場注1)として登録されている。図5に市庁舎の冷暖房用水循環システムの系統を示す。循環水は、地下2階機械室に設置されている夏、冬用それぞれ37 kWの循環ポンプから吐出され、8階空調機室にある5.5 kW4台、3.7 kW1台の計5台のブースターポンプを経由して19階の膨張タンクに至り、地下二階に戻る循環流路を形成しており、32 tonの水が循環している。各部屋には個別空調が併設されておらず、日々稼動している庁舎内共通のシステムを使用する実験となることから、実験を優先してこのシステムを運転・停止することは不可能である。このような状況のため、研究室での実験と異なり、パラメータを自由に変えたりすることが困難であるばかりか、緊急時には実験を速やかに中止し原状復帰しなければならない。そこで実証実験に当たっては、薬剤の開発に当初から関与し、その性質を熟知していると同時に、これまで幾つかの施設での注入作業に実際に携わり種々の事例を経験している(財)周南地域地場産業振興センター、基礎研究のみならず薬剤注入後に起きる循環水の流動および伝熱現象の過渡的な変化を予測あるいは解明することのできる総合力を有する産総研および東京理科大学、複雑な配管群からなる冷暖房システムでの流量、温度、電力量測定が得意な㈱藤原環境科学研究所、システム全体に詳しく注入完了後もその安定的な維持・管理を行う電気系および機械系の技術系職員を中心とする札幌市役所の5者がそれぞれの役割を担うことにした。5 実証実験の準備5.1 流動特性の基礎的把握使用する薬剤は5~65 ℃で流動低減効果を発揮するので、冷水を循環する夏期、温水を循環する冬期ともに継続して使用できる。ただし、流動抵抗低減効果には温度依存性があり、あらかじめ実使用範囲の7 ℃から45 ℃までの値を調べておく必要があった。また、既存の防錆剤が低減効果に及ぼす影響についても把握しておくことが有用である。これらについては、東京理科大の流路長1 m、内径10.7 mmのテストセクションを有する水循環実験装置で実測した。薬剤の濃度は3000~6000 ppmの間で変化させ、流動抵抗低減効果の流速依存性を測定した[7]。現場での界面活性剤使用に当たっては、発泡が原因で薬剤を使用できなくなる場合も考えられる。例えば、大気開放型の膨張タンクや空気を定常的に吸引してしまう箇所があげられる。それらを含め、複雑な流路特定については、日々システムのメンテナンスにあたっている市役所監視盤室スタッフが、事前に問題箇所がないことを確認した。薬剤注入前には、それぞれのポンプ流路での流量ならびにポンプの消費電力量を測定した。流量計測にはトランジットタイム方式のポータブル型超音波流量計を、電力計測にはフィーダー電力レコーダーを用いた。5.2 インバータ設置薬剤注入により流動抵抗が低減し、その結果定格流量を超える循環水が流れるようになる。これを循環ポンプの回転数をインバータを用いて下げることにより、定格流量まで戻す。その結果ポンプでの消費電力量が減少し、省エネルギーが図れる。したがって、この技術導入にはインバータの設置が必須である。事前の流動特性実験および流量測定の結果から、薬剤注入後は8階のブースターポンプ5台の運転を停止しても十分な循環が得られると判断できたので、インバータは37 kWの冬期および夏期用循環ポンプそれぞれに1台ずつ設置した。なお、他の機器に影響を及ぼす可能性のある高調波流出電流を計算したが、対策は不要と判明した。5.3 水質調整サンプリングした循環水に、使用予定の薬剤を1000 ppm添加し攪拌したところ、綿状の沈殿物が生成した。これは今回使用する薬剤がカチオン系であり、循環水中に含まれていたアニオン系の防錆剤との反応で生じた水和物と推定された。したがって、循環水にこのままこの薬剤を注入すると水和物が生成し、配管の細部を閉塞させてしまう。これを回避するためカチオン系の防錆剤を用いることにし、休日等を利用して循環水を合計4回入れ替えアニオン系防錆剤の濃度を数十ppmにまで下げ、カチオン系防錆膨張タンク冬期使用熱供給地域ブースターポンプ5.5 kW×4台3.7 kW×1台吸収式冷凍機地下2階インバータ37 kW熱交換器地上8階~19階空調機ファンコイルユニットインバータ37 kW定量ポンプ熱供給地域界面活性剤夏期使用図5 札幌市役所冷暖房システム循環水系統図
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