Vol.4 No.3 2011
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−181−Synthesiology Vol.4 No.3(2011)座談会:システム科学技術の研究開発小林 欧米あるいはアジアで文理融合あるいはシステム科学技術の取り組みがうまくいっている例はありますか。木村 オーストリアのIIASA(国際応用システム解析研究所:International Institute for Applied Systems Analysis)は70年代の初めにできましたが、そこは文理のどちらもいます。『成長の限界』が発表された後、当時の東西冷戦下で、協力できるテーマがないかということで、国連の肝入りで作られましたが、人口問題やCO2の低減にも随分力を入れています。権威があるRAINS(越境大気汚染の輸送に関するシミュレーションモデル:Regional Acidification Information and Simulation)というモデルももっていますし、一つの成功例ですね。それから、中国もシステム科学は強いのです。科学院にシステム科学研究所がありまして、とても大きい。それと、複雑系研究所のメッカと言われるサンタフェ研究所は、物理学者だけでなく経済学者や社会学者もいます。日本には、システム科学の研究所はないですね。小林 新幹線のような成功例が出るといいですね。あんなに大きくなくてもいいと思うのですが。木村 ほんとうにそう思います。私が今提案したいのは、救援組織のシステム化、救助体制のハイテク化ですね。今度の災害以来、日本の科学技術は国際的に評価を下げました。救助システムの普遍的なものを作って、他の国にこういうふうにやればいいということを示せればと思います。赤松 対応できるシステムを作っておけば、どれが機能するかしないかということがわかります。システム化することによって、状況が変わったときに判断ができるはずです。復興のプロセスをシステム的にやれるといいですね。小林 システム科学技術とシンセシオロジーはかなり重なっていると思っています。シンセシオロジーの論文を元に議論した中で、スパイラルやフィードバックがとても重要だというのが最近の私達の認識なのです。木村先生がおっしゃったように、初めからリジットに設計するだけではなくて、システムでも回していくということが大切ですね。木村 日本はいったん計画を立ててしまうと変えられません。この欠点を補って時間的な進化を担保する必要があります。赤松 “課題研究”がキーワードだと思います。課題と言うと与えられたものというように思いがちなのですが、そんなことはなくて、自発的に課題を捉える力があって、それをシステムとしてブレークダウンして初めて解決できる。構成学もシナリオを作る方法論を目指しているので、ねらっているところはすごく近いと思います。木村 システム科学技術、構成学が存在感をもつことがこれからの科学技術においては求められます。産総研におけるシンセシオロジーのウケはどうですか。赤松 認知度はまだまだかもしれませんが、3年前からイノベーションスクールというポスドクの教育を始めて、シンセシオロジーを教材にしています。ドクターを出たばかりの若手研究者に、研究全体の流れを捉えて、どうやって研究を構築していくか、そういう観点でものを見ることが大切だという話をすると、けっこう評判がいいのです。木村 徐々に広がりつつあるということですね。JSTの中ではシステム科学技術に対する理解はまだまだで、システムって研究になっているの?こんなものはやろうと思えばだれでもきるんじゃないの、というような考えの人は多いです。ただ、第4期基本計画の中にシステム科学技術が振興分野の対象に書かれましたので、何かがこれから起こってくるだろうと思いますね。小林 科学技術のあり方も、モデルベースでアナリシスをきちんとして、シミュレーションをして、その上で貴重なお金をつぎ込むというふうにしないといけませんね。システム科学技術が広まることを期待しております。この座談会は、2011年4月22日に東京都千代田区にある(独)科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センターにおいて行われました。略歴木村 英紀(きむら ひでのり)1970年東京大学大学院工学系博士課程修了、工学博士。大阪大学工学部教授、東京大学大学院工学系研究科教授、理化学研究所生物制御システム研究チームリーダー等を経て、2007年より理研BSI-トヨタ連携センター長。横断型基幹科学技術研究団体連合監事、科学技術振興機構研究開発戦略センター上席フェロー。IFAC、IEEEフェロー、IEEE CSSよりGeorge Axelby Award、IFACよりPaper Prize Award等受賞多数。2011年IFAC(国際自動制御連盟)よりGiorgio Quazza メダル受賞。
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