Vol.4 No.3 2011
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−180−Synthesiology Vol.4 No.3(2011)座談会:システム科学技術の研究開発した。ですから、今のこの時代に、私はシステム基盤技術振興基本法くらい、作るべきではないかと思うのです。赤松 教育もあるかもしれませんね。研究室の博士課程の大学院生が教授から与えられたテーマをやっているようでは、課題を具体的にシステムとして理解するのは難しいでしょうね。小林 国際機関や諸外国の政策を形成する中枢にはPhDをもった人が大勢います。今、日本の中央省庁の行政官でPhDをもっている人は極めて少ないのではないでしょうか。もう少しPhDのコースを充実させて、大学の教育自体を変えていかないといけないと思います。教育からいうと先生も変わらなければなりませんね。要素技術はもちろん重要なのですけれども、それをいかにシステム化するかというところが大切です、というふうにもっていけるといいですね。構成学もシステム科学技術もスパイラルが重要赤松 そうですね。システムを設計するということは、どういう順番でそのシステムを動かしていいかを決めることにもなるので、いったん設計して、それで動かしていくことによって解決できることがたくさんあると思うのです。実世界とインタラクションしながらスパイラルしていくのです。木村 全くそのとおりですね。私達も今回の災害でなぜシステムがうまく作動しなかったかを調べているのですが、最大のポイントは、防災という概念と救助が結びついていなかったのではないかという気がしているのです。スパイラルが動いていなかったのですね。一方で、災害救助特別措置法や災害救助法等、法律はいっぱいあって、そこではこういう災害が起こったら対策本部を立ち上げて、次にどうするというプロトコルはけっこう書かれているのですが、防災体制は時々刻々変わっていきます。人も移動するし、都市環境も変わっていくので、それらをアップデートしていかなければいけません。災害が起こったら、まず地震のスケールと震源地がわかれば、第一次の被害予測をします。さらに情報が集まってくれば、被害予測を精密にしていく一方で、それをベースにして、どういう救助体制を組むか、これらをループで回すことが必要です。赤松 正常の状態に対する防災はあるかもしれないけれども、大震災の後の状態に余震が来たときの防災は考えていないということは、スパイラルを回していないということですね。小林 木村先生がおっしゃったように、最初にモデルベースでアナリシスをして、シミュレーションしてシンセシスをするというプロセスを何回も回すことが重要ですね。木村 そうです。シンセシオロジーは、研究が終わった後もスパイラルを回すのですか。赤松 まだそこまで至っていません。世の中に出したときにその研究を評価する力が必要になってきます。要求仕様が出てきたらそれに対応するレベルではなく、その先に行かないといけない。1回スパイラルを回すと、制約条件が最初のレイヤーと全く変わっていくので、もう1回、設計し直さなければいけません。スパイラルを回すということはそういうことなのですね。小林 社会実装は産業界を巻き込まないとだめですから、産業界のまさに実装した人たちが振り返って、その方法論の論文を出していただけるといいなと考えています。システム科学技術は文理融合の促進剤赤松 システム科学技術委員会活動は去年で一応終わりになって政策提言が出されましたが、こういう考え方なり、学問が伸びていくためにどんなことが重要だと考えておられますか。木村 イノベーションの中にシステム科学技術を入れ込んでいくということですね。具体的に提案して、その中でちゃんと実績を作っていくのです。文科省にそういうことを担当する原課がないので、今、いろいろお話をしているところです。小林 科学技術をシステムと考えると、いろいろな分野や異業種のシステム化が必要になってくると思います。大学で昔から文理融合が必要とか言われてはいるものの、なかなかうまくいきません。理系に比べると文系の社会科学系の先生方はあまりのってくれません。ただ、今後システムと考えると、今はたぶん理工学の分野だけの話だけではなくなっていますね。木村 システムが文理融合の促進剤になる可能性はありますね。文のほうでもシステムというのは大問題になっています。社会システムとは一体何なのか、喧々囂々の議論を社会科学でやっています。
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