Vol.4 No.3 2011
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研究論文:札幌市庁舎ビルの空調システムの省エネルギー化実証実験(武内)−133−Synthesiology Vol.4 No.3(2011)面活性剤注入方法、それにより起こりうる現象、達成された省エネ効果および界面活性剤の寿命も含めた日常管理方法等が明らかにされていないため、一般に普及するには至っていない。この研究の目的は、流動抵抗低減効果を活用した技術の省エネ効果を実測し、ビル空調システムの省エネルギーにどれ程貢献できるかを明らかにすることである。そのため、札幌市と協力してこの技術を市庁舎の冷暖房水循環システムに適用し、省エネルギーの検証実験を行い、成果を公表することでこの技術の普及拡大を図る。この論文では、研究が基礎的な段階でとどまり、あるいは実証されてもデータが公開されないため限られた施設にしか導入されていなかった技術を、技術の構成要素をなす分野の専門家を集め、技術統合のシナリオのもとで役割を分担し、実際に使用されている札幌市庁舎で実施した実証実験とその結果について述べる。2 シナリオはじめに簡単にToms効果について説明する。1949年、Tomsは管内を流れる水に長鎖の高分子を5から10 ppm少量添加することによって、管内乱流の圧力損失を低減できることを示した[2]。高分子は、流れのせん断力で構造が破壊され再生しないため、その効果は一時的である。一方高分子に代えて界面活性剤を用いると、形成されるミセル構造が普遍的に再生されるため、この効果が持続する。すなわち、図1に示すように、界面活性剤の濃度の増加に伴い、単分子同士が接合し球状のミセル、さらには棒状のミセルが形成され、この棒状ミセルが三次元的なミセルネットワーク構造を呈することで流れの乱れが抑制され、流動抵抗が低減される。水路流れの速度ベクトルの分布を図2[3]に示す。図2aが水のみの場合、図2bが界面活性剤を添加した場合である。界面活性剤の添加により、流れの中のたくさんの不規則な渦が消失し、規則正しい流れに変化することがわかる。この構造は、ポンプ、バルブあるいはエルボ部分等流路が大きく変化する箇所で破壊され、その効果は消失するが、比較的長い直管部で再び形成され流動抵抗低減に寄与する。冷水あるいは温水を循環し大規模なビルの冷暖房を行う際、水循環ポンプの動力に大きな電力が使われている。このエネルギーの大幅な削減を図るために、循環水に界面活性剤を注入し、流動抵抗の低減を図る上述のToms効果の適用が有効である。この方式による省エネルギーの原理は、界面活性剤の添加により流動抵抗が低減すると定格流量を超える循環水が流れるようになり、これを定格流量に戻すために循環ポンプの回転数をインバータを用いて下げ、その結果ポンプでの消費電力量が減少して省エネルギーが図れるというものである。図3に示すようにどのような界面活性剤がこの目的に合致しているか、薬剤を設計して創製する技術が構成要素の一つとなる。さらにこの薬剤を注入した水が、循環水路内でどのような流体挙動および熱挙動を示すかを解明し、その省エネルギー効果を明確にすることも、もう一つの構成要素である。さらに、省エネルギー技術として継続的に運用・維持していくためには、添加した界面活性剤の長期的な安定性、省エネルギー効果の持続性、メンテナンスの手順を明らかにする必要がある。日本では流動抵抗低減技術に関してこれまで多くの基礎研究がなされ、いろいろな薬剤が開発され、その流体力界面活性剤濃度淡棒状ミセル球状ミセル界面活性剤単分子疎水基親水基濃流れ方向(b)界面活性剤を添加した流れ(a)水のみの流れ05101520253035404550403020100X mmY mmWater: Re=1.77×1040.000.080.170.250.340.42U m/sVector: Galilean decomposition ( -0.9 0 , ), Contour: UUUV流れ方向05101520253035404550403020100X mmY mmCTAC25 ppm(30℃, DR=58 %): Re=1.35×1040.000.070.140.220.290.36U m/sVector: Galilean decomposition ( -1.03 0 , ), Contour: UUUVトランス損失、店舗動力、他5.1その他その他エレベータ、エスカレータ、他2.8昇降機揚水ポンプ、他0.8給排水駐車場ファン、他5.0換気動力事務機器、他21.1コンセント照明器具21.3照明照明・コンセントボイラ、循環ポンプ、電気温水器、他0.8熱源本体給湯空調機、ファンコイルユニット、他9.4空気搬送冷温水2次ポンプ2.6水搬送熱搬送冷却水ポンプ、冷却塔、冷温水1次ポンプ、他5.2補機動力冷凍機、冷温水機、ボイラ、他26.0熱源本体熱源割合(%)細目項目主たるエネルギー消費機器エネルギー用途区分表1 業務用ビルのエネルギー消費構造[1]図1 濃度変化に伴うミセルの形状変化図2 ミセルネットワークによる流れの変化

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