Vol.4 No.3 2011
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研究論文:自動車用ナビゲーションの総合的開発(伊藤)−163−Synthesiology Vol.4 No.3(2011)JAMAガイドラインは1995年と1999年に改定された。1999年道路交通法でテレビ映像等の動画像の走行中の視認が禁止された。これは事実上野放しであったテレビ番組の視聴を規制するものであったが、ナビゲーション画面の視認も同時に規制対象にならないように、動画の定義が検討された。2002年には、JAMAガイドラインVer 2.0はVer 2.2に改訂されたが、ここでの主な追加点は表示装置の設置位置に関するもので、正面から視角30度以内にディスプレィを置くことを定めた。この年に、ガイドラインに沿った形で、道路交通法の改訂がなされ法的な整備が行われた。また、4.1節で述べたように、運転中の視認・操作はいわゆる脇見運転を誘発することになることから、安全運転を阻害する脇見という観点から、規制すべき視認・操作を規定することの必要性がでてきた。4.4 ドライバーの脇見(Driver Distraction)への対応討議のキーポイントは、走行中ドライバーが前方運転視界から視線を移動し、ナビゲーションの表示を読み/判断し/操作をするという脇見行為をどこまで許すかであった。この問題意識は米国でも持たれ、AAM注43)でも検討が始まった。その結果、WG8において、2002年からDriver Distractionとして測定法、評価法の構築が始まった。JAMAではナビゲーションやメーター等への視認行動の計測、車内へ視線がいくことによる運転への影響等の実験を行った。また米国からの提案のあった液晶シャッターのついた眼鏡で視認・操作するOcclusion法をも並行して検討し、この方法によって運転中に許される範囲を実験的に検討した。これを基にして、JAMAガイドラインVer3.0が2004年に発行された。この試験法のISO 16673 Occlusion Methodが成立したのは2007年で、国際標準化活動に先駆けて、国内ガイドラインとして公表されたことになる。このように、ナビゲーション製品が世界を先駆けたと同様、安全のための基準作りも日本が世界をリードしてきたことを明記したい。海外では他に国連欧州経済委員会のWP29注44)、IHRA注45)/ITS WG等で検討し、Standard(標準)、Code of Practice(服務規程)、ガイドライン、法律等強制力の異なるものにまとまりつつある。カーメーカーや部品・ナビゲーションメーカーが、国際規格等を満足したうえで、使いやすく安全を担保した形での商品開発と社会導入を図って活動をしてきたことが、官民学の連携の基盤となり、図2のごとく、広く市場に普及することに貢献してきた。5 おわりにナビゲーションが世界に普及したのは、目的地にガイドしてくれる装置へのニーズの存在と、多くの分野の技術者がそのことに共感して先行検討してきたこと、また時代が必要な技術を提供してきたこと、メーカーに商品力向上の一環として開発しようとする意欲があったこと、自動車の販売が急速に伸び市場が成長したこと、新規産業創出への期待から行政組織からの支援を得ることができたこと、世界的なITS推進の動きに乗って各国に展開されていったこと等、人智を集約し、多くの技術や状況が融合・統合・発展し、成果を上げたと考える。今後の自動車に期待される知能化・自働化への貢献も望みたい。また第4章では、製品の技術開発と安全性のため技術開発を両輪として進めたことを紹介したが、氏家[9]は立体映像の分野でも進めており、こういったアプローチは人が日常生活で使う製品の社会受容性を作り出すことに有効に働くものと考える。なお効率よい自動車の目的地への走行は、ドライバーの精神的・肉体的負担軽減だけでなく燃料消費等環境にも良い効果を導くことを明記したい。世界をリードしてきたナビゲーションは、日本国内での装着率は約40 %にもなり、また携帯電話、スマートフォーンのパーソナルなナビゲーションにとって良いお手本になってきた。このように、日本はナビゲーションにおいて世界に先鞭をつけてきたが、車載用PNDの出現で、生産量、収益の点で海外企業に差をつけられているのが現状である。名ばかりでなく実をナビゲーションで得たいものである。謝辞この論文を作成するに当たり、情報のご提供と内容のご討議をいただいた、トヨタ自動車株式会社第1電子開発部 杉本浩伸氏、(独)産業技術総合研究所ヒューマンライフテクノロジー研究部門赤松幹之氏に御礼を申し上げます。2009200720052003200119991997199519931991198919876000500040003000200010000201020082006200420022000199819961994199219901988図2 出荷台数 × 1,000[8]

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