Vol.4 No.3 2011
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研究論文:自動車用ナビゲーションの総合的開発(伊藤)−161−Synthesiology Vol.4 No.3(2011)マンファクタの研究から、もっと高い位置が良いことは分かっていたが、これまでの伝統的な内装デザインを変更することへの抵抗や、空調の吹き出し口やダクトの取り回しの問題もあった。TFT-LCDが登場し、搭載位置の検討が進み、運転そのものを邪魔せず、走行中にも視認性、判読性の良い位置、さらに衝突安全性を確保したセンタークラスタ上部に設置位置を確保している。またマジェスタやBMWではHUD注17)の中にTurn by Turn表示も出しており、走行中の視線移動を減らしている。3.4 国内外のプロジェクト:公的プロジェクトによるインフラと車載機器とのシステムアップ第4の技術開発はナビゲーションを含む技術とシステムを検討する多くのプロジェクトの発足である。米国では、1960年代後半におけるRobert French[1]の新聞配達ナビゲーション、Route Guidance with Map Matching System、1970年代初期のFHWA注18)主導のERGS注19)やIVHS注20)、欧州ではALI注21)やDRIVE注22)、T-TAP注23)等に始まる官学民協力の下に推進された研究開発プロジェクト[4]があった。日本では、1970年代から通商産業省大型プロジェクト「自動車総合管制技術」CACS注24)、警察庁AMTICS注25)、建設省RACS注26)等のプロジェクトが始まり、更に1990年代には運輸省ASV注27)、建設省ARTS注28)、AHS注29)、スマートウェイ、警察庁UTMS注30)、DSSS注31)、通商産業省SSVS注32)等がITS時代の準備を行った。これらの開発項目は、研究開発、実証実験を通して日本のIT注33)/ITS戦略となった。1996年ITS関連5省庁は「ITS全体構想注34)」を発表、その中で「ナビゲーションの高度化」があげられた。そして、ITS Japan注35)という官民学を纏め上げ、国を挙げて推進するという効率の良い体制ができ上がった。なお郵政省は電波行政でサポートした。ナビゲーションはスタートして約30年経過したが、技術的にはまだまだ発展可能性があり、今後、現在地精度のさらなる向上、渋滞を避けるルートだけでなく、最も早く着く、また最もエコなルート提供や、運転技術に応じたルート等ルート提供の改良、新しい道路への対応や事故・工事中情報の折り込み、目的地への進入方向まで考慮した案内等、課題改善を期待したい。DSRCを利用した情報交換、プローブシステムによる渋滞検知精度の向上、前述の準天頂衛星「みちびき」等、日本の技術への期待は大きい。4 国際的調和−ヒューマンインタフェース:社会受容性のための安全確保への取り組み4.1 社会受容のためのガイドライン、国際標準化の整備技術者達は夢としてもっていたナビゲーションを、前述したように多くの人々の力と技術で実現してきたが、単に製品を作るだけでなく、それを社会に受け入れてもらえるための努力もしてきた。ナビゲーションの機能は運転に役に立つものであるが、それと同時に、地図を始めとする情報を提示することは、道路から眼を離させることになり、いわゆる脇見運転を助長するのではないか、という危惧も早くからもっていた。商品開発だけをし、市場に投入すると、不適切な使用による問題が発生しかねず、そうなると人に役立つ技術が社会から葬り去られる危険を認識していた。例えば欧州のプロジェクトDRIVEではその危惧を明示し、ヒューマンファクタの検討を早くから始めた[5]。日本でも、RACSの中で、視認タイミング等ドライバーがどのようにナビゲーションを利用するのか研究を行った[6]。製品化の技術開発とほぼ平行してカーメーカーを中心にヒューマンファクタの研究が推進されてきた。そして、ヒューマンインタフェース設計の指針の標準化の活動や業界でのガイドラインの策定が進められた。他国に先駆けてナビゲーションの市場導入を行った日本では、省庁の援助のもとで表1のように、市場導入後の間もない1990年に日本自動車工業会注36)画像表示装置安全性分科会が業界内で守るべきガイドライン「画像表示装置の取り扱いについて」を策定し、公表した。ここでは、走行中での細街路表示を禁止し、目的地設定の操作もできない。これは、ナビゲーションという新しい技術を社会に導入するに際して、その利用の安全性も考慮して進めていることを社会に示すものでもあった。また1990年頃にはITS機器の将来の拡大を見越して、ITSの開発推進とその国際標準化の機運が盛り上がった。そして1993年ISO/TC注37)204 (TICS注38)、現在ITSに改名)が国際標準化推進団体として結成された。また、1994年には第1回ITS世界大会がパリにて開催され、その後、年1回アジア太平洋地域→北米→欧州→と3極持ち回りで学会と展示会が催され、技術・商品力の面での推進役を果たしている。ISO活動が国際的調和のとれた基準作りを行い、ITSの発展を支える役割を担うことになったが、これらの機能ができたのは日本で拡大しつつあったナビゲーションが一つのきっかけになったことは疑いない。また日本ではTC204国内委員会(現ITS標準化委員会)、TC204国内技術委員会が統制をとって対応したことは、技術の発展、標準化の面で国益に貢献したと考える。ISO/TC204/WG11(Route Guidance and Navigation Systems)はシステム、メッセージセットやインターフェース類の標準化を担当した。著者はヒューマンファクタとインターフェースの標準化を行うISO/TC204/WG13(Human Factors and MMI注39)、以下WG13と略す)とISO/TC22/

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