Vol.4 No.3 2011
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研究論文:自動車用ナビゲーションの総合的開発(伊藤)−160−Synthesiology Vol.4 No.3(2011)する。また事故、故障等の際の救助要請を行う緊急通報サービスも運用されている。3 技術の変遷3.1 航法技術:コア技術としての位置同定技術2.1節で述べたように、自動車のナビゲーションは方位コンパスの電子化から始まった。推測航法のために方位の電子データが必要で、採用したのが地磁気センサーである。地磁気は3×104 nT前後の小さな値で、自動車ボディーの着磁や、送電線、鉄道線路、山地付近等で誤差が大きくなる欠点があった。ボディー着磁の原因として、自動車生産時プレス工程にて鉄材が圧延されると部分的に磁化することに加え、走行中踏み切り通過時に架線に流れる電流によることが多かった。また地磁気の特徴として地球の南北極と磁極がずれているため、日本のように国土が狭く、その偏角がおよそ5度西から9度西に収まる場合は限定された精度で使えるが、海外、例えば米国では国土の東西端の距離が大きく、偏角が大きくなるため使用できない。そこで「電子コンパス」導入時には国内利用に限定することとし、更に自動車生産時の着磁の対策で自動車全体の消磁装置を作って完成車を消磁した。その後の走行時の着磁を随時補正するため、自動車を360度旋回させ、電子的に地磁気センサー出力を補正する方法を導入した。走行距離と速度(スピードメーター用車速センサー、その後車輪回転センサーから入手)と方位データ(電子コンパス)、を計算して現在地を推定し(推測航法)、目的地までの距離と方位を計算・表示することで「ナビコン」、そして初期のナビゲーション[3]が実用化した。一方「Electro Gyrocator」では方位角の変化をガスレート・ジャイロで求める方式を導入したが、その後、車載ジャイロは光ファイバージャイロ、振動ジャイロと小型化し進化した[2]。また米軍衛星を使ったGPSの利用によって現在位置が常時受信できるようになったことにより状況が改善した。初期のGPSは軍用外の使用では精度が約100 mと悪く、またビル影、地下、トンネル内等で受信不可の場合があった。そのためにGPSデータ、マップマッチングで現在地を推定したが、一般道路と高速道路が2層になっている等の間違いやすい道路構造の場合もある。このためナビゲーションは通常は自動車内蔵の車速・距離信号、左右タイヤ回転差の検出、機器内蔵の加速度センサーやジャイロ等で補正される。また位置が分かっている固定局(放送局)を利用しGPSデータを補正するDifferential GPSのシステムも運用されたが、その後GPS自体の精度が向上したため終了した。今後、日本で開発中の準天頂衛星「みちびき」によるGPSデータの補完では、位置精度向上が期待される。3.2 道路地図データベース:コア技術2:地図上に自動車位置を載せる第2の技術開発は道路地図データベースの開発である。データベースはユーザーのインターフェース部分である地図を描画するためのデータと道路のネットワークを定義付ける部分である。ネットワークはリンク(道路部分)とノード(交差点)で記述し、経路探索、所要時間計算、渋滞情報処理等に利用される。道路にはいわゆる生活道路から高速道路までさまざまなレベルがあり、道路管理者も異なるため、そのデータベースを作成することと追加・修正等の維持に多大の費用がかかる。このため当初各メーカー準備でスタートしたデータベースであったが、フォーマット、データ、登録方法の標準化をするため、ナビ研(現ITナビゲーションシステム研究会)、日本デジタル道路地図協会が組織された。その後、日本のカーメーカー、ナビゲーションメーカー、地図会社が中心になって、本格的なナビゲーション用地図データ「KIWIフォーマット」が誕生し、JIS D 0810、その後ISO/TC204/WG注13)3にてISO/TS注14)20452として規格化された(ISO/TC204は4.1節参照)。また当初より走りもしない遠隔地の地図データを個々の自動車に搭載するのは不要との意見もあり、通信で必要な地図データを提供する仕組み、例えばiフォーマットが導入された。国土交通省国土地理院を中心にGIS注15)も研究されており、今後この分野の発展が期待される。3.3 ヒューマンインタフェースの進化:コア技術3:ドライバーへの経路情報提示と表示操作の安全性地図表示ハードウェアは当初のCRTから、軽量・薄型・省電力のTFT-LCDが主流になって現在に続いている。地図表示技術は、これまでのあたかも地図を見ているようなNorth up表示のほか、進行方向を上に表示するHeading up表示、交差点拡大図、Turn by Turn表示(曲がる交差点までの距離と曲がる方向を指示)が採用されたが、広く受け入れられた手法にバードビュー表示がある。これは詳細な近傍の地図と粗いが遠方まで俯瞰できる、使い勝手の良い地図表示である。また多色利用による識別性向上、記号の利用、等表示方法にはさまざまあり、ディスプレィの解像度の向上にも伴って視認性、判読性向上が図られているが、選択はドライバーの好みに任されている。しかし、好みには国民性があり、海外では当初Turn by Turn表示が普及したし、ハードウェア面では安価で、小型、脱着容易なPND注16)の普及が著しい。操作では通常のスイッチから、画面を触るタッチパネル・スイッチ、音声認識、リモコン等が採用されている。当初、ナビゲーションはセンタークラスタ下部に設置され、走行中視線移動に時間がかかる位置であった。ヒュー

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