Vol.4 No.3 2011
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研究論文:自動車用ナビゲーションの総合的開発(伊藤)−159−Synthesiology Vol.4 No.3(2011)用いて、出発地点(現在地)から目的地まで目的地方向と残距離を表示する「ナビコン」という商品で、1981年にセリカXXに搭載された。同時期に日産も同種製品を発売し、またホンダ「Electro Gyrocator」ではガスレート・ジャイロを使って方位ではなく、方位角度変化を求める方式を採用した。このように同時期に類似製品が世に出されたことは、技術者の夢が社会的に共有されており、発達しつつあった電子技術を使ってそれぞれが実現しようとしたといえる。また「Electro Gyrocator」はCRT注1)を使ったディスプレィを採用することで後の地図の表示を決定付けた。1985年ソアラではカラーCRTを使った「エレクトロマルチビジョン」で故障診断表示、燃費モニタ、高速道路地図、走行情報(サスペンション状態)、自動車装備の取り扱いマニュアル、TV放送表示(停止時のみ描画可能)等、その後のナビゲーション機器が具備する情報表示機能の一部が搭載された。なお上記マニュアルや地図情報を提供するため、当時音楽用として一般的であったカセットテープがメモリ機器として搭載された。2.2 市場導入後の発展期:【支える技術】の利用1987年に、次の商品としてCRT表示と推測航法を活用した現在のナビゲーション機器に近い商品「エレクトロマルチビジョン」がクラウンに搭載された。ソアラで始まった車載情報機器の一つの機能として、ナビゲーション機能が追加されたのである。この車は地図情報を搭載したCD注2)をメモリ機器として搭載、デジタル地図表示が可能となった。デジタル地図データは当初各メーカーで準備したが、開発・維持費用も莫大であるため共通化の動きが進んだ[2]。メモリは前述のようにカセットテープからCD、DVD注3)、その後SDメモリカード注4)やHDD注5)に変化し、データの大容量・高速化につながり、多機能化に貢献できた。オーディオやコンピューター用のメモリが発展していったので、それを適宜採用してきたといえる。1991年には、表示器がCRTからTFT-LCD注6)へと大幅に薄型・軽量化・低電圧化し、自動車への搭載性が格段によくなった。一方、米軍専用技術と考えられていたGPS注7)導入による位置精度向上が可能となった。推測航法では、センサーによる走行距離情報と方位角度/角速度情報を演算して現在地を出すため、センサー情報が誤差を含んでいればそのまま累積した位置誤差となるが、GPSは受信できる限りは連続的に自車位置を入手するので一時的な誤差は修正される。また走行軌跡と地図データを比較するマップマッチングで位置が補正されるケースもあり[2]、位置精度向上と、経路探索のソフトウェア技術をベースにした経路案内、軌跡表示、地点登録等機能が充実し、32 bitマイクロコンピューター投入により実用的なナビゲーションができるようになった。ナビゲーションが目指しているDoor to Door Navigationの第一歩へ進んだといえる。2.3 転換期2.3.1 経路誘導の転換:通信の利用1)VICS等の展開1996年に警察庁、旧郵政省、旧建設省の協力で道路交通情報通信システムVICS注8)が導入された。VICSは光ビーコン、電波ビーコンとFM多重放送で送信される交通情報(渋滞情報、所要時間、事故・故障車・工事情報、速度規制・車線規制情報、駐車場の位置、駐車場の満車情報等)をナビゲーション機器で受信し、情報表示と最短のルートを選択するための情報とするもので、現在は約半数の自動車用ナビゲーション機器に搭載されていると推測される。このことは自動車が孤立して動いているのではなく、インフラストラクチャ側とリンクして情報交換し、最適ルートを選択・決定するという機能ができたことになる。またDSRC注9)とナビゲーション機器を統合制御するITS注10)車載機が導入されつつある。これはナビゲーション、VICS、ETC注11)等、個別に提供されていたサービスを一つの車載器で提供することである。2)課題:センター型ナビゲーション経路探索を個々の自動車がするより、現在地と目的地のデータをアップロードし、交通管制センター等のインフラストラクチャ側で渋滞緩和も視野に入れて経路誘導・ダウンロードを行ったほうが効率と精度が良いのではないかという検討もされており、今後の課題である。3)外部からの付加情報ナビゲーションの表示器を使った多くのアプリケーションが期待されている。一つは衝突防止システムであり、路車間通信を使って交差点で見えない方向から近づいてくる自動車の警告表示や、見えないカーブ前方の渋滞警告、などが実証されている。2.3.2 地図データベースの転換:運転制御への利用地図データの自動車運転への応用である。道路データの内、道路の傾斜、カーブ等の情報を利用して自動変速機のシフトアップ/ダウンや速度制御、サスペンションのチューニングを自動的に行うもので、安全走行に役立つと思われる。すでに、カーブ手前での自動変速機のシフトダウン機能をもっている車種もあるが、この用途へのさらなる活用は次世代地図情報がもつべき情報にかかわるので、これからの大きな課題になると思われる。2.3.3 新しいサービスの創造Telematics注12)が普及してきた。これはカーメーカーが自社の顧客に対するサービスとして、双方向通信、電話による対話で渋滞情報等情報交換を行って運転の手助けを
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