Vol.4 No.3 2011
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研究論文:緊急時に飲料水を確保するための技術(苑田)−152−Synthesiology Vol.4 No.3(2011)置(飲用不可)、2)汚染範囲や汚染源の特定等の調査、また、3)地下水の用途等を考慮しつつ浄化等の対策の推進が行われている。陰イオン交換体を用いて「硝酸イオン」を除去する試みは行われていたが、共存陰イオンが存在すると、その効果は限定的であった。そこで、これまで知られていなかった「硝酸イオン」に選択的な吸着剤注3)の開発に取り組んだ(図3、図4、図5)。硝酸イオンに選択的な吸着剤はアルミニウムとマグネシウムの層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide、以下、LDH)で、ハイドロタルサイトと呼ばれる鉱物(Mg0.75Al0.25(OH)2(CO3)0.125)とはMg/Al比とイオン交換性の陰イオンが異なる無機イオン交換体(Mg0.80Al0.20(OH)2Cl0.20)である。これまでLDHのアルミニウム含量を多くすることで、イオン交換容量を増やす検討が数多くなされていたが、逆にアルミニウム含量を少なくすることで、硝酸イオンに対する選択性が発現する事を明らかにした。また、塩化物イオン型なので、海水のように塩化物イオンが大量に存在する中からも硝酸イオンを吸着することができた。一方、阪神淡路大震災以降、防災意識が高まり、地方自治体等においては緊急時に備えて浄水システムを導入しているところも少なくない。しかし、海水から淡水を製造可能な逆浸透(RO)システムは動力を必要とし、一般市民が感覚的に操作できるものではないため、より簡易な浄水システムを求める声があった。この研究開発では、ROシステムとは明らかに異なる「動力源を用いず、人力のみで稼動できる簡便な装置」というマーケットを目指し、試作機の作成を行った。用いる原水として、河川水、井戸水、プール水の水質調査を行った。河川水には有害イオンは含まれておらず、簡単なろ過と殺菌の組み合わせで十分飲用可能であった。井戸水に関しては、地域により硝酸イオンの水道水基準値を超過するものがあり、本硝酸イオン選択吸着材が有用と思われる。プール水によっては塩素殺菌剤の不純物である臭素酸イオンが検出される場合があり、臭素酸イオンの除去剤を用いる必要があることがわかった。図2 地下水質継続監視調査の環境基準超過井戸本数の推移(主な項目)図1 地下水質概況調査における環境基準超過率の推移(主な項目)図3 粉末吸着剤のSEM写真板状粒子の大きさは幅:約500 nm、厚さ:約20 nm図4 繊維状吸着材のSEM写真およびTEM写真繊維の直径:約1 mm、内部は多孔性ポリマーの壁に粉末吸着剤が非接触で閉じ込められた構造調査年度硝酸・亜硝酸砒素鉛テトラクロロエチレン砒素トリクロロエチレン硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素ふっ素超過率(%)0123456720092007200520032001199919971995199319911989調査年度硝酸・亜硝酸テトラクロロエチレンテトラクロロエチレン砒素トリクロロエチレン硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素ふっ素0100200300400500600700800900環境基準超過井戸本数(本)200920072005200320011999199719951993199119891 mmφ粉末吸着剤非接触界面
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