Vol.4 No.3 2011
18/66
研究論文:人の認知行動を知って製品やサービスを設計する(赤松ほか)−146−Synthesiology Vol.4 No.3(2011)か、応援と野球そのものを全体として楽しむ人になる、「野球を知っていて、プロ野球に関心のあった人」は生の試合を知って選手やチームに感情移入をし、試合を楽しむまたは試合と応援とを楽しむ人になる、といったパターンがあることが認められた(図4)。このようにCCEを用いることで、野球にほとんど関心がなかった人がどのようにリピーターになり、どのように野球を楽しむようになるのか、というファンの成長の構造を明らかにすることができた。5 製品・サービス設計への応用CCE法によってターゲットユーザーが欲しい、嬉しいと思う機能やサービスを設定するための手掛かりを得たのちは、それを製品やサービスの形にする研究開発プロセスに入る。例えば、気の利いた助手席乗員からのタイミングの良い有益な情報が、いつ何について提供されるかが分かった場合に、それをカーナビシステムから提供することを開発目標にしたとする。良いタイミングで情報が提供されるかが気が利いていると感じるかどうかのクリティカルパラメータであることから、そのタイミングをシステムが判断できるかどうかが技術課題となる。そのために、情報提供の提示タイミングの判断や内容をルールに明文化し、それに正しくのっとって情報提供させる実験を行った。これは人間によって情報提供を行うが、臨機応変に情報提供を変えるのではなく、マニュアルにのっとることで、このルールに基づいて構築したシステムによる情報提供を模擬したものになる。さらに、この研究では、同乗しないと交通状況や運転者の状態によるタイミングの判断が不可能かどうかを検討するために、別の車両に乗車した情報提供者が、通信を介して得られるカメラ映像や音情報をもとに適切なタイミングで情報提供できるかどうかも検討した。この研究は現在も進行中であるが、別車両から通信を介して情報提供をさせることで、何を手掛かりとしてタイミングを判断しているかが明らかになり、センサー等を用いてシステムがタイミングを判断できる可能性があるものが分かってきている[16]。機器による情報提供であれば、こういった研究プロセスを経て、製品が持つべき機能が明確になり、実現すべき製品の機能が具体化されてくる。サービスの場合についても、例えば、野球ファンが「たまの観戦」から「リピーター」になるステージアップのきっかけが何であったかが明らかになった場合には、球団サイドが行うべき施策の検討を行う。どのようにして対象者にアクセスして、どのような形できっかけを提供できるか、またそのためのインセンティブをどのように設定するか等を決めることになる。もちろん、これらの案は一つではなく、複数考えられる。製品であってもサービスであっても、このようにしてCCE法で得られた知見に基づいて設計案を構築し、実現すべき機能を備えたプロトタイプや施策の要求仕様の具体化を行う。そして、その実現方法を検討し、現在の技術レベルやサービス提供環境も考慮にいれ現実的に実現可能なプレファンがファンになるきっかけファンにとどまらせているものファンがリピーターになるきっかけリピーターにとどまらせているもの野球を知らない野球は知っているがプロ野球には興味がないプレファンファイターズに関心がある誘われればドームで観戦するファン自分なりのドーム観戦の楽しみ方を発見ドームでの観戦に合わせた生活リピーター野球を知っている野球を知らないプロ野球に関心があるプロのプレー一体感を得る盛り上がりを観て感じる選手に感情移入生の試合の楽しさ球場の盛り上がりに感動選手・チームに感情移入選手に親近感応援が主体試合が主体野球の醍醐味を勉強中頑張る選手を応援して自分も楽しむ球場での出来事を楽しむ選手を全力サポート自分の世界で楽しむ短期決戦に期待采配・配球を楽しむシーズンを通して気長に楽しむリピーター仲間を増やして皆で盛り上がるファンプレファンチームに感情移入日ハムファン他球団ファンプロ野球に関心がない好きな球団なし図3 ファンとしての成熟度を示す3つのステージ図4 ファン状態の遷移のパス
元のページ