Vol.4 No.3 2011
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研究論文:人の認知行動を知って製品やサービスを設計する(赤松ほか)−144−Synthesiology Vol.4 No.3(2011)ティカルパラメータとした。運転者のことを良く知る助手席乗員を得るために、夫婦や友人等普段から頻繁に同乗している2人をWebアンケートで募り、1,600名の中から「おせっかい」「マメ」「気が利いている」といった質問に対する答え等を元に、エリートモニター候補として10組の運転者と助手席乗員になるペアを選定した。そして、インタビューを行って、2人のどちらもが気が利く人であることを確認するとともに、2人のうちの一方は良く知っているが他の人は知らないような目的地を選定してもらい、良く知る方の人にそこへのルートにおけるアドバイスのポイントを記述させた。このインタビュー結果を精査し、気の利いた情報が数多く提供されることが期待される4組をこの実験に参加するエリートモニターとして選定した。このようにして選定したモニターであっても、その人が気が利いていると思って提供する情報が運転者にとって本当に有り難いと感じられる内容であるかは明らかではなく、単にそう思い込んでいる可能性もある。そこで、この問題を解決するために、この研究では3回の走行を行う実験デザインとした。最初の走行では、気が利いていると助手席乗員が思っていることにしたがって、情報提供を行わせた。走行後に走行中の道路シーンも含めて記録された対話のビデオ映像を両者に見せ(図1)、運転者側からみて提供された情報が気が利いていたかの評価をさせた。そして、どの点が有り難かったのか、また、そうではなかった場合にはどこに問題があったか等を回顧的インタビューによって抽出した。これによって、運転者が何を有り難いと感じるかを助手席乗員に理解してもらい、第2回目の実験を行った。第2回の走行の終了後も同様のことを行ったが、他の組の実験から得られた知見も開示し、気が利くと感じるためのポイントを共有して、第3回目の走行を行った。さらに、運転者と助手席乗員を相互に入れ換わることも行い、両方の立場から気が利いた情報とはどういうものかを考えてもらえるようにした。目的地までの経路に詳しく、互いを熟知し、また運転者にとって嬉しいと思う情報提供がどのようなものであるかを知ったエリートモニターを用いることで、いわば理想化された運転支援のための情報提供を明らかにすることができた[15]。このような手順で抽出された対話内容は、右左折等の道案内に関するもの、安全でスムーズな運転のためのもの、周辺スポットの情報等に分類された。そして、それぞれの提供情報について、情報内容、タイミングや指示方法等の提供方法、道路幅等のその時の道路状況、余裕があるか等の運転者の状態を記述した(表1)。提供内容とともにこれらの事項によっても気の利いたものか否かが変わってくるので、クリティカルパラメータである。抽出された提供情報の中から、気が利いているとみなせる提供情報を、運転行動を修正させるもの、運転行動を支援・促進させるもの等に分類した(表2)。例えば、運転行動の修正とは、現在の状況においては運転者にはある運転行動が必要である(例えば、早めの車線変更等、その行動があると後が楽になること)と助手席乗員が考えるが、運転者がその行動をとらない可能性があると思った時に提供される情報のことである。交差点を過ぎて交通の流れがスムーズになった時等の適切なタイミングで、その情報を提供すると、気の利いたアドバイスと感じるの 属性説明値 提供内容発話により提供された情報具体的な内容提供方法情報の伝え方タイミング、指示方法道路状況発話時の道路の状況道幅、速度等ドライバー状態発話時のドライバーの状態運転余裕度、前提知識運転行動修正運転行動支援補助情報の充実助手席者は現在の状況において、ドライバーが運転を進めるのに際し、ある運転行動が必要だと考えるが、ドライバーがその行動をとらない可能性があると思ったとき助手席者は現在の状況において運転者が運転を進めるのに際し、ある運転行動が必要だと考えるが、運転手がその運転行動をとる可能性があるが、情報を与えることによって運転行動が促進されると思ったとき助手席者は現在の状況において、運転手がある知識を得ることによって、ドライブの満足が高められると思ったとき図1 トリップ中のモニターの様子表1 提供された情報を記述するための属性表2 助手席者の情報提供の動機
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