Vol.4 No.3 2011
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研究論文:札幌市庁舎ビルの空調システムの省エネルギー化実証実験(武内)−138−Synthesiology Vol.4 No.3(2011)熱との併用について等、低温側での質問も多く、これらに対しては新規薬剤の開発等、基礎研究からのフィードバックが必要である。また、食品や飲料を扱う工場の冷房システムに導入したいとの問い合わせも多かったが、万が一循環水が漏れて食品等に混入してしまう可能性も皆無ではないので導入を見合わせた例もあった。東南アジアに展開している日本企業から、工場の冷房システムに使用できないかという問い合わせもあったが、現地での濃度管理体制に問題があり見送らざるを得なかった。8 今後の展望これまでは、薬剤を開発した会社が製造および販売はもちろんのこと、ビルへの導入検討、注入作業そして保守点検を一貫して行ってきた。今後は、ビルメンテナンス会社、ビル管理会社や設計事務所等が、水質や配管系等の事前チェック、薬剤注入および濃度管理を中心とした保守管理を適切に行えば、この技術の加速的普及につながるものと確信する。そのような視点から、この技術に詳しい講師による技術体験セミナーをメンテナンス会社等の技術者を対象に、年に一度程度定期的に開催することも有効かもしれない。また、地域冷暖房システムへの適用も省エネ化を大きく促進するものであるが、伝熱性能の問題については残念ながら明確な結論が出ていないため、実証実験を前提とし、システムを構成する要素技術の専門家が集結して速やかに解決すべき問題と考えられる。謝辞実証実験はエネルギーの有効利用を目的とした産総研と札幌市との基本協定に基づき、札幌市総務局および環境局、東京理科大学理工学部機械工学科、(財)周南地域地場産業振興センターおよび(株)藤原環境科学研究所が共同研究契約を結び実施した。各機関の担当者に多大なご尽力をいただいたことを感謝する。また、薬剤使用にあたり技術的な指導をいただいたエルエスピー協同組合および、現場での実験実施およびシステム維持管理に積極的な技術支援をしていただき、現在でもその維持管理に当たっている札幌市役所および(株)キタデンの皆様に謝意を表する。注1)第二種エネルギー管理指定工場:年度におけるエネルギーの使用量の基準値が燃料(熱)については原油換算で1,500 kL以上3,000 kL未満、電気については600 kWh以上1,200 kWh未満の施設が指定される。そして、エネルギー消費原単位を年平均1 %以上の低減を図るという目標が課せられている。(財)省エネルギーセンター:「オフィスビルの省エネルギー」パンフレット (2009).B.A.Toms: Some observation on the flow of linear polymer solutions through straight tubes at large Reynolds numbers, Proc First Int. Congr. on Rheology, North Holland, Amsterdam, 2, 135-141 (1949).Y.Kawaguchi, et al.: Experimental study on drag-reducing channel flow with structure of surfactant additives−Spatial structure of turbulence investigation by PIV system, Int. J. Heat and Fluid Flow, 23 (5), 700-709 (2002).特許 第3671450 (2005).産業技術総合研究所産学官連携部門:「スムースウォータ」実用化研究会報告書 (2003).例えば、H. Usui and T. Saeki: Drag reduction and heat transfer reduction by cationic surfactants, J. Chem. Eng. Japan, 26 (1), 103-106 (1993).中川浩哉: 抵抗低減用界面活性剤の実物大建物空調システムへの適用実験, 東京理科大学理工学部機械工学科卒業論文 (2007).H.Takeuchi, Y.Kawaguchi, K.Tokuhara and Y.Fujiwara: Actual proof test of energy conservation in central heating/cooling system adapting surfactant drug reduction, Proc. of 8th International Conference on Sustainable Energy Technologies, 218, 1-4, Aachen (2009).化学工学便覧 (1999).例えば、朝日新聞 (2007.5.29).NHKニュース (2008.1.4).[1][2][3][4][5][6] [7][8][9][10][11]参考文献執筆者略歴武内 洋(たけうち ひろみ)次世代化学材料評価技術研究組合専務理事。1980年京都大学大学院博士後期過程化学工学専攻退学、同学部助手。工業技術院北海道工業技術研究所研究企画官、産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門副研究部門長等を経て定年退職後、現職。流動と伝熱が専門。この実験はエネルギー技術研究部門所属中に行った。同時に同研究部門の10余名と札幌市内で過冷却蓄熱を利用したコジェネレーション実証研究も実施した。査読者との議論議論1 全般コメント(小野 晃:産業技術総合研究所)この研究は基礎的な研究の成果を社会に展開するために、自治体という普段研究者があまり付き合いのない相手とうまく共同研究を組んだ例であり、また実稼働中のビルを実験対象にするという難しい課題でもあったと思います。第2種基礎研究あるいは製品化研究の方法論を示す良い事例として、広く読者に参考にしてもらえるものと期待します。議論2 公的研究機関で行う実証研究の意義コメント(長谷川 裕夫:産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門)新しい省エネルギー技術が現場に導入され、普及していく過程ではそれを妨げるさまざまな要因があり、長い期間を要します。この論文は、公共の施設を対象として公的研究機関が導入手順と省エネルギー効果を実証してみせ、その後の普及促進に貢献したところに大きな価値があると思われます。

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