Vol.4 No.2 2011
54/66
−120−Synthesiology Vol.4 No.2(2011)座談会:シンセシオロジー3周年記念座談会吉川 駒井さんは、土壌・地下水汚染の新しいリスク評価技術のみならず科学技術政策論まで踏み込み、システム設計をやっておられる。渡利さんはセラミックス製造の省エネプロセスという大目的を実現するためにあらゆる分野の話が出てきます。これを私は「超領域の設計」と言っているのですが、一つ一つの研究が総合されて「構成」ができるのだろう。諏訪さんは、生命科学と情報通信、ICTの合体したバイオインフォマティクスの中で幅広い研究が統合されている。木下さんの臨床情報学は、ある意味では構成学の設計そのもの、構成の本質問題を議論している。中村さんは、グローバリゼーションも含めて標準の重要性が高まってきた背景もあり、広い範囲の研究をされている。脇田さんのシームレスな日本地質図は、これまで、知識ベースは研究論文にならなかったのですが、その背後にある大きな問題を抽出したということ。このように、シンセシオロジーで扱う科学には、多様な問題の背後に、ある種の抽象的ではあるが、普遍的な構造があるのではなかろうかと思っているのです。第1種基礎研究の方法論とは違う、それに匹敵するような、これが第2種基礎研究だと言えるようなものが蓄積された論文群から抽出できるのではないか。それが私の楽しみですね。シンセシオロジーへの期待赤松 最後に、シンセシオロジーというジャーナルへの期待をお願いします。木下 安全や信頼性を論じるときにはリスク評価が必ずあること、それからディペンダブルな信頼性の高いソフトウエアはこう作るべきである、という筋書きでやってきました。それ以上の抽象的なレベルで考えたことはなかったのですが、今、吉川先生がおっしゃった共通の構造が自分の目の前にあるような気がしてきまして、この辺も追求してみたいと思いますし、そういう方向をシェアしてくれるような著者が現れるといいなと思っています。諏訪 サイエンスという以上、再現性がなくてはいけません。こういうやり方をしたら何%成功したとか、失敗したとか、結果と結びつけた上で研究の構造の分類をすると面白いと思います。それと、世の中の流れや外部の環境とのインタラクションを考えて、その年代における研究集団の成果と、その後の時系列変化に伴う再現性の変化を見られるといいですね。赤松 社会状況の変化によって同じ方法で失敗するかもしれないということですね。失敗を書いてほしいという話もときどき聞くのですが、勇気が要りますね(笑)。脇田 私達の分野で言えば、最近、「地質多様性」ということを提案しているわけですが、そういうものを融合した形で構成学として新しい学問を提案していく。それをやった結果、また新たな失敗例、成功例の論文を出していくという道もつくっていただければいいなと思います。中村 標準は構成学においても共通インフラ的なところがあるのかなと思いまして、自分でも感心しているところですが、“標準”というキーワードで、他の分野との連携・融合が進められると思います。渡利 最近、産総研の中で「分野融合が重要だ」と言っているのですが、社会の大きな問題はすべて融合化されています。せっかくの機会ですから、シンセシオロジーを書いた人に実学をやってもらいたいです。ブレークダウンしていくと、こんな研究要素があって、こういうプロジェクトができますよというふうに実学に落とすことが次の課題かなと思います。赤松 書いて偉そうなことを言っているだけではなくて、やってみろということですね(笑)。駒井 若手の研究者にこういった意識を持ってほしいです。連携講座で社会系の学生に講義をしているのですが、去年から構成学の話を取り入れたら、すごく興味を持っています。全体の俯瞰や、構成をしっかりすることは社会科学としても、これから企業に行く人にとっても重要な部分ですので、若い人たちに普及することが大切だと思います。また、イノベーションスクールで今年モデレーターをしたのですが、ポスドククラスの特にシステム科学やバイオ系の人が興味を持っています。吉川 戦略プロジェクトは、明らかにシンセシオロジーの思想に基づいてつくっているのだと思うのですが、それをもう少し分析的にして、産総研の外にもアピールできるようになるといいと思います。第4期科学技術基本計画では、課題解決型イノベーションと言っているんだけれども、その方法論がないのですね。それを「ここにあり」ということをぜひ実証していただきたいと思いますね。赤松 実践したことを基にして論文に書くだけではなくて、その論文を書く中で得られたことを活かして再び実践しながら実証していくことを目指していきたいと思います。きょうはありがとうございました。
元のページ