Vol.4 No.2 2011
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−119−Synthesiology Vol.4 No.2(2011)座談会:シンセシオロジー3周年記念座談会諏訪 おっしゃるとおりです。質的なものは明確には説明できないのですが、確かに入っていて、その質のレベルが途中で変わっていきます。ある時点で学問的なニーズがあって、さらに世の中の時世の流れみたいなものがそこに混ざってくると、ある種のベクトルができます。そのベクトルに対してどうするかをそのつど考える。循環的に、もう1回基礎に戻る、ということが繰り返されるというイメージが強いです。赤松 渡利さんは、ストーリー性が大事だと強調されておられましたね。渡利 私は2年前からイノベーション推進室でいろいろなプロジェクトを担当していますが、構成学の考え方はプロジェクトの立ち上げや、テーマを理解するのに非常に勉強になりました。最近、もう一つの活動として、企業との共同研究を進めています。最近の傾向として、産総研職員と企業の人との間で、共同研究テーマの提案がうまくできないのです。なぜかというと、お互いに持っている課題をもとに、それをうまくブレークダウンしていくような構成学を持たないからです。要素技術のどれを選択するのか、どれを基礎研究のターゲットとして進めれば花開くかを考えます。相手のニーズを把握し、充分にコミュニケーションを取りながらシナリオを作る等、一連の構成学の考え方は技術を社会に出すためには必要と思います。今の産総研にとっては構成学をつくるという学問が一番大事なのかと感じました。木下 企業の方と共同研究の相談をするとき、言葉が通じないというか、半年ほどたったら実は全然通じていなかったというような経験をもっています。渡利 ターゲットをどれだけ絞り込んだ議論ができるかという前準備の段階だと思うのですけど、産総研内でも語彙が難しいですね。赤松 シンセシオロジーに他の分野の研究者がわかるように書くというのは、訓練になりますね。渡利 普通は、他分野の研究論文を読んでもわけがわからないですが、シンセシオロジーを読むと流れがわかる。質問を先に読むと、皆さんがどういう問題意識をお持ちで、どこがポイントかわかる。科学の知識を持っていたら、すべての学問に対応できるというのがシンセシオロジーの論文のいいところだと思います。査読者との議論を通じて赤松 査読者との議論が一つの特徴でもあるのですが、査読者との議論の質はどうお感じになりましたか。駒井 すごく勉強になりました。2回ほどやりとりして、シナリオを作ったら明解になったので非常にありがたい経験だったと思います。私のところは企業とのお付き合いがものすごくあるのですが、企業の人はものづくりとか製品化に対して真剣です。産総研の研究開発は、製品化の最後のところまでいくシナリオを書いていない嫌いがあると思っています。シナリオを書くことで研究プロジェクトや最短での製品化提案ができるのではないかと思います。諏訪 最初は、産総研の本格研究の枠組みの中で自分の研究をどう説明するかを書かなければいけないと思っていたのですね。無理やりそれに合わせたら、ねじれがあって自分もつらかったのですが、「設計したものを自由に披露してほしい」と言われて、気が楽になって書けました。私自身、自分の研究を振り返ることが出来て勉強になりましたし、非常にいい論文にさせていただきました。ただ、このような議論は産総研の職員に対してだからできる話だと思うのです。今後、産総研外の人へも論文投稿依頼を広げていかれると思いますが、普通の論文は査読でそんなにやりとりはしませんので、それだけの時間的コストをかけてくださる産総研以外の方がいらっしゃるのか、ということは気になりますね。赤松 吉川先生、皆さんのお話を聞かれていかがでしょうか。諏訪 牧子 氏渡利 広司 氏
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