Vol.4 No.2 2011
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−117−Synthesiology Vol.4 No.2(2011)座談会:シンセシオロジー3周年記念座談会において計量の正しい値を保証し、これを通して我が国のものづくり産業の国際市場での展開を側面支援することです。コンデンサ(キャパシタ)は我が国の主要産業の一つですが、最近、大容量のコンデンサが蓄電池用として期待されています。また、キャパシタンス標準の精度に対する要求レベルも高くなっています。キャパシタンスの国家標準は昔からあったのですが、今のニーズに合ったキャパシタンス標準を新たに開発し、それを校正事業者を通して世の中に供給したことを書きました。「シナリオを書け」と言われると、どうやってここまで来たのかを振り返らなければいけない訳ですが、そもそも国家標準は最高精度の標準になりますので、どこまでも高い精度が良いわけです。何となく世界のトップを目指すという感じでやってきたのですが、産業ニーズや、世界の他の国々の標準と見比べ、最短時間で、しかもリーズナブルなコストで実現できるスペックがどんなものかということが、論文を書いていて自分の中に整理できました。もう一つは、供給した標準が産業の現場の方にうまく届いているのかということです。産業現場では時間とコストの問題がより厳しくなってくるので、「国家標準レベルの精度は産業現場では要らない、精度は多少悪くても、もっと簡便に、もっと安く、もっと早く供給して欲しい」という話が出てくる。そこで、シナリオをもう一度見直して、次に必要な研究開発をしたという、実際を追う形でストーリーを書きました。脇田 「シームレスな20万分の1の日本地質図」というタイトルですが、シームレスとは継ぎ目がない状態を指します。産総研地質情報総合センターの前身である地質調査所では、明治の頃は富国強兵の、第二次世界大戦後は復興の鉱物資源探査開発のために地質図を作ってきました。その後、地質情報もその利用目的があいまいになってきたという面が若干あって、地質学も、例えば日本列島はどうしてできたのか、この岩石や鉱物はどうしてできたのだろうというような、産総研で言えば第1種基礎研究に集中していく形になりました。私も入所以来、日本列島がどうしてできたかということを真剣に考えて、ひたすらそのことの結果として地質図を出していた時期が長くありました。その結果、日本中の地質図がそれぞれの研究者のアイデアでバラバラにできてしまった。そこで、産総研発足後、ユーザーの利便性を考えた地質図のあり方を考えて、最新情報を用いて統一規格で作り直すこと、境界を最新の知見でデジタル化してつなげるようにしようと、シームレス地質図のプロジェクトを立ち上げました。地質図が完成して数年たった段階も利活用が進んでいますが、その基本理念と作るプロセス、波及効果と反響等について書いています。データベースをどうやって作ったかとか、社会にどうやって役立ったかというような論文はどこにも載せるところがないので、いいチャンスだったと思います。昔、実学だったものがピュアなサイエンスになって、また実学に戻りつつあるという時期に、こういう活動をして、それを論文で発表させていただいたということで大変ありがたく思っています。論文執筆によって得られたもの赤松 自分であらためて見直して、ストーリーなり、シナリオが実はあったのだということに気がつくということが共通に起きているのではないかと思います。それがどういうふうに次に生かされているだろうかということに私は関心があるのですが、いかがですか。中村 標準の場合、開発し供給することに視点がいきがちなのですが、研究室の人には、「標準が供給された後、どう波及していくのかというところまで最初にシナリオとして考える」ということを言えるようになりました。赤松 実際に普及させるプロセスが研究者の間で今まであまり共有されていなかったということですね。地質にも同じような印象を私は持っているのですが、いかがですか。脇田 第3期に向けて次世代シームレスというプロジェクトが立ち上りましたし、JISや国際標準化との連携やGEO Gridのシステムの中での活用の広がりが出てきました。多くの若手研究者を含めて、情報技術分野と連携して地質情報をどのように利活用すべきかというユーザー志向が明確になっ脇田 浩二 氏赤松 幹之 氏
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