Vol.4 No.2 2011
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−116−Synthesiology Vol.4 No.2(2011)座談会:シンセシオロジー3周年記念座談会化人類学者の川喜田二郎さんが提唱されていた言葉です。「帰納法、演繹のほかにアブダクションが大事」ということで、本格研究を進める上でアブダクションのプロセスも大事なのではないかということをこの論文に記しました。渡利 「セラミックス製造の省エネプロセスの確立」という非常にシンプルなタイトルで論文を投稿させていただきました。企業で稼働しているセラミックスの製造プロセスを対象とした研究開発についてまとめたものです。研究のポイントはバインダー技術で、バインダーとセラミックス製造のエネルギー消費の関係性を理解し、新しいバインダー技術で製造の省エネ化を図りました。論文を書くに当たって、民間企業との成果を果たして書いていいのかという、自分自身の戦いがありました。ただ、書き進んでいくうちに、どういうふうに自分たちが考えてシナリオを作ったのか、どういう要素技術によってどんなものを抽出してできたのかという、ストーリー性が非常に大事だということが分かり、どうにかまとまったという感じです。そして、難しい研究課題や社会のニーズでも、課題と構成要素を明確化することによってほとんど解決できるのではないか、ということがわかりました。企業との共同研究をして、こういうふうな形でシンセシオロジーにまとめられたというのは、私にとって非常に名誉だったと思っています。どうもありがとうございました。中村 私の論文は「ものづくり産業の国際競争を支援する電気標準」です。例えば、「ものの寸法」は、物差しを作っている企業が責任を持ってその精度を保証するわけですが、その企業は定期的に、社内の標準器を校正機関に持ち込んで社内基準がずれていないかを確認します。その校正機関はもっと上位の機関に、自らの標準器を校正してもらうということで、最終的には国の標準へ繋がっています。このようにいろいろな物理量には、それぞれに必ず「国の計量標準」があるのですが、現在、およそすべての計量標準は産総研が実現し、維持管理と産業界への供給を行っています。ですから、私たちの使命は、国家計量標準を実現し、産業界非常に最短コースを歩んでこられたと思っています。通常の論文は、すべて終わった後で、一番きれいに見せるために最適化したものを書くわけです。駒井さんは「時系列をやめて構成し直した」とおっしゃられましたが、私の場合は時系列そのものが新たな発展を生んでいったので、その時系列が重要だと思っていました。それと、普通の論文に書けないことは失敗談と思うのです。「失敗しました」と言ったら、あと通らなくなる。この論文誌では、失敗したからこそ、次の展開につながるのだという議論ができるところが面白いと思いました。あともう一つ、困ったことといえば、異分野の方にわかりやすく説明しなければいけないということでした。赤松さんに査読をいただいたのですが、「こんなのでは全くわからない」と(笑)。すべての分野の人にわかるような用語を使うこと、これは苦労しました。木下 タイトルは「臨床情報学のための野外科学的方法-技術移転の方法論に向けて-」です。重厚なキーワードを並べましたが、昨年3月までの6年間、システム検証研究センターで活動してきた技術移転活動について記したものです。システム検証というのはソフトウエアシステムのバグ、つまり障害を見つけたり、修復したりする技術です。私どもは産総研に改組される以前の電総研ではプログラミングの意味論に関する理論研究をやってきたのですが、産総研になって、そういうアカデミックな研究をしているものが、どのようにして社会に貢献するために、やるべきことはシステム検証である、と考えました。しかし、意味論研究から産業でのシステム検証活動への貢献までを、ウォーターフォール式に順にたどっていたのでは日が暮れてしまう。そこで、アカデミックな研究と技術移転を並行して行っていく、という活動を試みました。大学の先生も、教育と研究の両方をやっておられて、研究内容がそのまま教育に結びついているわけではないけれども、そのおかげでうまくいっていることもたくさんある。私達も研究と技術移転・産学連携を並行してやってみようと考えました。“臨床”という言葉は、システム検証とお医者さんの診断の類推をして医学から借りてきた言葉です。また、“野外科学”は、文木下 佳樹 氏中村 安宏 氏
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