Vol.4 No.2 2011
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研究論文:超高精細映像送受信を支える光通信ネットワークの実証実験(来見田ほか)−107−Synthesiology Vol.4 No.2(2011)することのできないオフィス機器の電力が一部含まれたために装置群の定格を積み上げた値より若干大きな数値になったが、基本的に電力の値は大容量通信データを詰め込んでいけばいくほど省エネルギー効果が顕著に得られることがわかった。具体的にはシリコンフォトニクス光スイッチが実現されポート当たりの伝送レートが100 Gb/sとなれば現状と比べると1,000倍の電力効率が得られる見通しである。今後予測される高精細映像情報のような通信需要増に対しても、電力の伸びを抑えられる点で適度な低電力化が達成されたと考える。光パス・ネットワークにより通信ネットワークの低消費電力化に貢献可能である。光パス・ネットワーク構築をスタートさせて初めて明らかになることが複数あった。ネットワーク接続の基本となるOSIモデル用語8からみると、レイヤ間連携が複雑になったということが第一にあげられる。これは物理層がスイッチで切り換わることに始まり、ブラウザのキャッシュがある程度の映像を貯めながら表示させるといったところにまで、複雑に絡み合う。メディアコンバータ用語9を使用している回線ではそれ自身に対向するリンク連動機能が働いて資源管理装置からの命令と異なる動きとなる等、一つ一つの光パスの通信確立に時間を割いた。デモ実験においてはレイヤ間連携に関連する問題を一つ一つ解決し動作状態としたが、よりスムーズに光パス・ネットワークを構築しその特徴を最大限に発揮させるには接続標準化を含めたより具体的なデモ実験・相互接続のような機会が必要になると考えられる。このような知見はデバイスからアプリケーションまでの技術を持ち寄って実施する「垂直連携」がなければ得ることができなかった。今後光パス・ネットワークにおいては、レイヤ間連携や送受信機の光の波長や性能の違いを補償してくことが必要になる。この点については、光パスコンディショニング技術としてAISTネットワークフォトニクス研究センターにて研究開発を進めている。7 おわりに−この実証実験の意義産業技術総合研究所、情報通信関連企業5社、情報通信研究機構、NHK放送技術研究所の共同で高精細大容量映像時代を支える新しい光通信ネットワークの実証実験を成功させた。各組織をまたがる垂直連携により、現在のネットワークを構成する装置群の消費電力、通信容量等の限界を超える新しいネットワークの可能性を示せたことは有意義であった。新しく開発された光通信向けの要素技術を取り込んで、新しい映像情報サービスの一面を現実のものにできたことは光通信技術進化の一つの重要なステップであったと信じたい。謝辞デモ実験を進めるにあたりNICTおよびNHKの両機関には多大なる貢献をいただいており、ここに感謝の意を表したい。各社協働企業の皆さま方のご尽力によりデモ実験が成功に導かれたことにお礼を申し上げたい。デモ設置・立上に関して多大なる実働をいただいた、AIST情報技術研究部門工藤知宏グループ長をはじめとする、各要素技術を担当したAIST研究者各位に感謝する。最後に、AIST一村信吾理事および石川浩センター長の指導・支援がなければこのデモ実験が実現しなかったことを付記したい。図6 デモ構成における通信容量と消費電力(含予想値)144 W1.2 kW (定格)1.5 kW (計測)13.4 kW実験値1,000倍の効率全てシリコンフォトニクス光スイッチ使用時予想デモ構成(1、10、43Gb/s混在)平均約9 Gb/sIPルータ使用時予想1000100101.00.1全ポート1 Tb/s使用時予想全ポート100 Gb/s使用時予想デモ構成ネットワーク総消費電力 (kW)PLC(Planar Lightwave Circuit)型光スイッチ:平面光回路型の光スイッチ。PLCは石英系平面光導波路を指すことが多い。クロスバスイッチ:2入力、2出力の接続ポートを考えた時、バー状態とクロス状態の二つのスイッチングステートをもつスイッチを指す。ディジタルスイッチングが普及する以前に電話交換機等で利用されていた電気スイッチ方式からきている。近年では装置内部のCPUやメモリ間でデータをやり取りする時に経路を動的に選択する内部スイッチ素子を指すことが多い。トランスポンダ:クライアント信号を収容し基幹系伝送路に適したフレームフォーマット(OTN等)に変換し、任意の波長で通信を行う光送受信装置。トランスポンダアグリゲータ:これまでROADMが抱えていた光経路設定における波長制約および方路制約を解消し、伝送路と光送受信装置(トランスポンダ)の間における光経路の再構成自由度を提供する装置。波長選択性のある光導波路と光マトリクススイッチにより構成され、任意のトランスポンダが任意の波長で任意の光ファイバー伝送路と接続する光経路設定を可能にする。Cバンド/Lバンド:光通信で使用される光の波長帯。Cバンド(Conventional-band)は1530-1565 nmの波長帯、L用語1:用語2:用語3:用語4:用語5:用語説明
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