Vol.4 No.2 2011
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研究論文:水素センサーの研究開発(申ほか)−96−Synthesiology Vol.4 No.2(2011)をもつ専門のスタッフを必要とせず、メンテナンスも容易であるため、開発コストの大幅な削減に繋がった。設備を稼働して結果を出すのは同じチームのメンバーである。メンバーの適材適所な配置、各自の専門に縛られない環境作り、担当する要素技術開発の奨励もまた構成に必要な要素である。それぞれのメンバーの要素技術を守りながら一つの目標に向かわせることは簡単ではないが、【シナリオの共有】ができればベクトルを揃えることができる。熱電式センサー開発では、メンバーが自分の担当技術をしっかり持ちながら他のメンバーの技術領域も理解することで、有機的な連携を実現した。最近ソフトウエア開発でよく使われる概念としてアジャイル型がある。計画重視であるウォーターフォール型の開発ではスタッフ間のコミュニケーションがなかなか難しいとの反省から、現在は適応的開発であるアジャイル型の概念が多く用いられている。私達が行った研究は、メンバー間の意思疎通を強調した点からはアジャイル型に近いが、同じではない。アジャイル型の弱点はなかなか進捗しない議論に陥るリスクにある。私達の成果は全体のシナリオを開発スタート時に作り上げたために得られたものである。初期の頃にどういうものをどう作るかというイメージとシナリオはほとんど纏まっていた。一例として、私達のプロジェクトでの設備導入案は3年後についても当初の計画のまま進められた。プロジェクトのリーダーは、一緒に汗をかくメンバーに対して、5年間のシナリオと5年後の見える成果の形を、初めから語り続けるべきである。これはオーケストラの指揮者に近いものがある。つまり、本質的な部分は、大きなビジョンと詳細な情報の共有に尽きる。4 どう構成すればいいのか4.1 構成要素と構成条件単なる組合せだけでは構成学にはならない。図5にそれぞれの要素を構成する考え方を示す。左側には自然現象と工学的な構成要素があり、それらの特長を定量化するツールとして観察・分析を関連付けた。ここでは各要素の特長を最大に引き出すことが重要であり、観察された各性能は学術的または工学的な価値をもつ。しかし、それらを構成し、新規に統合する際には、具体的で詳細な境界条件が不可欠である。その境界条件は社会的な価値観であるさまざまなニーズである。例えば、触媒と熱電変換材料を構成する場合、触媒燃焼発電機への応用とガスセンサーへの応用とでは構成の条件が異なる。高カロリーのガス燃料を燃焼させることにより大きな電圧と電流を得る発電機の構成では、触媒が高温に達するため耐熱性の触媒材料を選択する構成が必要であり、導入した燃料を効率よく燃焼させるための複雑なガス流路とシステム全体の熱容量を十分に大きくするのが望ましく、電流を多く流せる熱電デバイスの設計が必要である。一方、数ppmから数%までのガス濃度に対して、高い信頼性で確実に、線形性よく検知信号を出力するセンサーの構成では、低濃度でも確実に燃焼発熱を発生させるために、希薄なガスでも確実に燃焼させることができる活性の高い触媒が必要であり、検知ガスが高速で拡散しやすいセンサー構造、高速応答のためのセンサー部材の熱容量の最小化、さらには微弱な温度変化を検知するために高い電 新しい研究の開始国際規格提案ISO規格制定マイクロ素子量産技術・開発指向の 自動設備導入・最適な管理と トレーニングさまざまな応用のユーザーに試験呼気分析応用構成学的な研究の時代センサー評価・社会ニーズと直結・構成要素の再検討指標・共通的な評価法リークテスター等事業化(ベンチャー)医療機器開発応用研究高効率ラボ設計<必要性>熱容量を最小化できるマイクロセンサーが不可欠IRカメラで原理確認発熱⇒⊿Tを熱電で⊿V信号に(電圧に)思いがけない高性能の試作品触媒micro-heaterSiGe-熱電薄膜ABFY2000 FY2007FY2003FY2008FY2010図4 熱電式水素センサー素子開発を進めるシナリオ2000年度からのNEDO産業技術助成事業で新しい動作原理のセンサーを具体化し、その後の水素基盤技術プロジェクトにより水素センサー開発を本格化した。

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