Vol.4 No.2 2011
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研究論文:水素センサーの研究開発(申ほか)−95−Synthesiology Vol.4 No.2(2011)ような“製品”に対する評価装置は市販されておらず、量産用の製品テスト装置は各メーカーにおいて最も重要な機密事項である。そこで私達は、研究開発を始めた頃から、素子の量産技術の最重要課題として高効率な評価システムの開発に取り組んだ。3.3 構成的方法はまずシナリオを作ることここまで述べた技術要素の構成による統合は社会のニーズに対応するためにさまざまな技術課題の解決を目的とした研究開発の流れそのものである。図4に熱電式水素センサー開発のシナリオを時系列で示す。平成12年度から3年間の研究開発で得られたシーズは、触媒燃焼と熱電変換を融合させる“知識”の技術要素であった。そのアイデアは最初はとても脆いものであり、開発を開始してすぐに、優れた原理のセンサーであっても十分な性能を引き出すにはマイクロ化が不可欠であることが分かった。2002年度は動作確認ができたばかりのセンサーをマイクロガスセンサーデバイスまで開発を広げる、5年間の壮大な“開発シナリオ”を描いていた節目の時期であった。2003~07年度が構成学的な研究の一つのサイクルであった。最初は構成要素がばらばらにあるが、これらを融合し構成することで必要な性能を実現させる成果を出し、最後は研究成果が収穫され次の研究がスタートする、という一つの循環が明確であった。この循環を以下の四つのステップに分け、ここでは主に【③構成する】に対して方法論を論じる。①アイデア:新しい着想・発見する、またはニーズを発掘する②知識の融合:それを具体化した実験等で定量化する③構成:応用に必要な特性を定め(目標)、開発を進める④仕上げ:研究成果をまとめ、次の研究に繋げるそれぞれ異なる特長の要素に対し、うまく構成をするには長い時間がかかる。性能向上のための新しいアイデアを基にセンサー製造プロセスを行い、結果を確認し、次の方法を探ることで、各要素技術を担当するメンバーに新たな方向性を示す、いわゆるフィードバックには、数カ月から1年の時間が必要なこともある。これはオーケストラの練習に近いものがある。私達が熱電式センサー開発で実践した最も機動力の高い方法論は、以下の二つである。・最初から実用化を目指したラボ設計(自動化プロセス設備とセンサー評価装置)・開発シナリオ全体の共有と現場中心のディスカッションたとえ知識の融合といえども、いかに迅速に実験による結果の確認を行えるかが重要である。そのためには、プロセスツールと分析ツールの両者を充実させる必要がある。この論文でラボ設計の詳細を述べるのは難しいが、この研究のマイクロセンサー素子製造に対して、クリーンルーム空間を最小限にし、半径5メートル以内におよそすべてのプロセス設備群を集約した極めて効率の高いラボ設備でプロセスを行ったことが、実用化まで開発を進めることができたポイントである。全自動のプロセス設備の導入が良い結果をもたらした。通常、研究の初期段階では実験用設備を導入しがちであるが、私達は汎用的セミ量産装置を導入したことにより実用化を見据えた開発ができた。このような設備は高い知識 量産用自動評価センサー応答評価システム動作原理の検証社会的受容性素子20個パレット量産技術センサー素子応答評価素子表面の温度変化IRカメラガスタンク試験槽(℃)16010040DCpowerDCpower30L TestchamberData LoggerTemp. & HumidityControl cabinet200LPCGas injectContinuous heatingblowerCatalystthermoelectric507070diffusion chamberdevice holdersensor devicerubber filmcutteroperating at 100 ℃1 vol.% H2 in air応答評価用チャンバー図3 三つのセンサー素子応答評価動作原理の確認、評価方法の社会的受容性、量産技術としての評価法としてそれぞれ意義をもつ。
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