Vol.4 No.2 2011
28/66
研究論文:水素センサーの研究開発(申ほか)−94−Synthesiology Vol.4 No.2(2011)材を載せる技術を開発し、上記①の原理のセンサーをマイクロセンサーとして完成させた。これらの技術要素①、②、③の統合により試作したセンサーは、優れた水素選択性と、0.5 ppmから5 %までの広範囲の水素濃度検知性能を示し、1年間のフィールドテストにおいてこれまでの技術と同じ安定性を実現することができた[4]。センサーの高感度の特性は、選択性あるいは安定性とトレードオフとなるのが一般的であるが、熱電式センサーでは両立させることに成功した。接触燃焼式センサーの検知下限が500 ppm程度であることを考えると、熱電式センサーの検知性能は革新的である。センサーの安定性については、応答性能の劣化を引き起こす要因を科学的なアプローチで明らかにし、触媒の組成および膜厚を制御する等の改良研究によって向上させることができた[5]。しかし、開発した新しい原理のセンサーが、それだけで実用化に向けた信頼性が確保できているとは言い難い。そこで、開発したセンサーの信頼性を実証するために、東京有明水素ステーションに実際に熱電式センサーを1年間設置し、アラ-ムレベル100 ppmでも十分な応答を示すことを実証するフィールドテストを実施した[6]。3.2 もう一つの構成的要素:センサー(製品)評価技術それぞれの技術要素をまとめていくと、センサー素子という構成された形が作られる。その“出来栄え”を分析・評価する技術要素は、最終的な製品の構成要素に含まれないように見えるが、実は不可欠な要素である。開発された“製品”を使うユーザーにとっては、製品の特性がどのように表現されているかによって、さまざまな判断を下す指標となるためである。この研究では、図3に示した次の三つの評価方法が活用された。・ガス応答中の素子表面温度変化をIRカメラでその場観察する試験方法・万人が同一の方法で応答速度を評価できる試験方法(ISO CD26142付録)・量産技術としてガス応答性能を評価するシステム前述のとおり、熱電式ガスセンサーは熱電変換デバイスおよびそれに載せるセラミックス触媒の二つの構成要素からなる。1番目の試験方法はセンサーとして構成するために融合した異なる二つの要素を切り分けて評価することで、各構成要素の間の有機的なバランスを明確に把握するために活用した。2番目の試験方法は、特別な設備を用いることなくセンサー応答性能の評価が誰でも同じ方法で実施できることを考慮し、容積30リッターのチャンバー内に計測するガスを充填させただけの簡単なものである。この方法は、2010年に発行された国際規格(ISO)の中で応答速度評価方法として記載された。3番目の試験方法は量産技術としての評価法である。ガスセンサー素子の製造コストは一体どのくらいであろうか?小さな部品を一つ一つ覗いてみると、それほど費用がかかっているようには見えない。高付加価値のセンサー素子は商品となる前のテストにかかるコストが最も大きい。部材や部品に対する評価装置は市販されているが、センサーのΔTA-B温度差BA信号⇒触媒技術安定性StabilitySensitivity感度Selectivity選択性熱電式水素センサー微細加工技術新しい原理基板熱電材料膜白金触媒電極H2OH2H2+O/触媒⇒H2O+熱 温度勾配⇒熱電変換で電圧信号にO2Catalystthermoelectric図2 水素センサーに求められる性能と技術要素の相関図センサーは高感度であるべきだが、選択性または安定性とのトレードオフとなる。熱電式センサーはセンサーデバイスの局部的な温度差を熱電変換する新しい原理により、高感度でありながら選択性と安定性を併せもつことができる。
元のページ