Vol.4 No.2 2011
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シンセシオロジー 研究論文−92−Synthesiology Vol.4 No.2 pp.92-99(May 2011)1 はじめに私達がガスセンサーの研究開発を始めたのはわずか10年ほど前であり、その頃からこの論文で紹介する新しい原理の水素センサーの開発がスタートした。旧工業技術院から産業技術総合研究所への変革を迎える中で、私達は材料研究者として将来どのような研究を推進していくべきかを探っていた。すでに民間企業の研究レベルがとても高く、ハードウエアである分析設備やプロセス装置も大手メーカーが一歩先を進んでいるうえ、大学との差別化をどのように図るかに対する一つの答えとして、機能性材料の物性およびプロセスの研究から、それらを利用したセンサー素子の製造へと進化を試みた。水素燃料電池を筆頭にブームが起きた水素関連技術に着目し、水素の安全利用に最も重要となる漏れ検知用センサー技術を確立することを目標として、今までにない原理のセンサー開発を始めた。可燃性ガスセンサーの動作原理である触媒を用いたガスの接触燃焼と、当時研究を行っていた熱電変換材料からなる“知識の融合”である。ガスの燃焼による発熱で生じる素子内部の局部的な温度変化を熱電材料で電圧に変換する新しい原理をもって、それまでに数多くの開発が行われてきた水素センサーの分野に飛び込んだ。水素センサーに限らず、ガスセンサーにはさまざまな性能が要求される。まず挙げられるものとして、検出濃度範囲、検出限界濃度、ガス選択性等の検知性能がある。学会や学術論文における報告のほとんどが、これらの検知性能に基づいた議論を展開する材料研究やデバイス研究に関するものである。しかし、実際の社会で用いるためのセンサーには、検知性能の他に信頼性や経済性が求められる。特に、信頼性は実際のシステムにセンサーを適用する際に最も厳しく問われる課題である。私達が開発したセンサーは、これらの課題に対して解決申 ウソク*、西堀 麻衣子、松原 一郎水素ステーションでの水素漏れ検知に向けて開発した熱電式水素センサーは、優れた水素選択性と、0.5 ppmから5 %までの広範囲の水素濃度検知性能という特徴を示した。1年間のフィールドテストにおいてこれまでの技術を超える高感度と信頼性を実証し、その技術を実用化することで社会へ還元した。触媒燃焼と熱電変換技術を組み合わせた新しい原理、それを最大限活用するための微細加工技術、ガス燃焼に欠かせない高性能のセラミックス触媒部材、これら三つの構成要素を社会的なニーズという境界条件に合わせて、各要素の特長を最大に引き出すことができた。さらに、開発中に検討したセンサー性能評価技術を国際標準の提案へ発展させた。水素センサーの研究開発− 水素安全技術から国際規格まで −Woosuck Shin*, Maiko Nishibori and Ichirou MatsubaraThermoelectric hydrogen gas sensor- Technology to secure safety in hydrogen usage and international standardization of hydrogen gas sensor -A thermoelectric hydrogen gas sensor developed for leak detection in hydrogen stations has shown good hydrogen selectivity and wide hydrogen detection concentration ranging from 0.5 ppm to 5 %. We have demonstrated high sensitivity and reliability of the sensor exceeding conventional technology through a field test of one year. We could optimize the following three constituent technology elements to meet the social needs, i.e. new principle integrating catalytic combustion and thermoelectric conversion technology, micro-fabrication technology to realize the principle and high performance ceramic catalyst for gas combustion. In addition, the sensor performance evaluation technology established during the development has been proposed for ISO standardization.キーワード:水素センサー、ガス検知、水素ステーション、フィールドテスト、熱電変換、燃焼触媒Keywords:Hydrogen sensor, hydrogen station, field test, thermoelectric, catalyst combustor産業技術総合研究所 先進製造プロセス研究部門 〒463-8560名古屋市守山区下志段味穴ヶ洞2266-98Advanced Manufacturing Research Institute, AIST 2266-98 Anagahora, Shimo-Shidami, Moriyama-ku, Nagoya 463-8560, Japan *E-mail: Original manuscript received February 1, 2011, Revisions received April 26, 2011, Accepted April 27, 2011

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