Vol.4 No.2 2011
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研究論文:ヒューマノイドロボットのコンテンツ技術化に向けて(中岡ほか)−86−Synthesiology Vol.4 No.2(2011)この課題に対して、私達はヤマハ株式会社と共同で、同社の歌声合成技術“VOCALOID”[27]をHRP-4Cの音声表現に用いるシステムを開発した[28]。VOCALOIDは歌声の合成用に開発され、人間の歌唱に近い音声が実現可能な音声合成技術である。さらに、この技術をイントネーションの豊かな自然な話し方の生成に応用した“VOCALOID-flex”技術も利用可能となっており、多様な音声表現が可能である。このシステムはVOCALOIDの音声データからロボットのリップシンクを自動で生成する機能を実現しており、これを用いることでロボットの自然な発話や歌唱の振る舞いを容易に作成可能となっている。6 統合インタフェース4.2節で述べた全身動作振り付けシステムの実装にあたっては、キーポーズ処理の本質的な部分に加えて、各種データの管理、3Dモデルの表示や操作、キーポーズの時系列表示、動力学シミュレーションをはじめとする多様な機能を連携可能なかたちで実装することが必要である。また、ロボットの総合的な表現を作成しそれをロボット実機で提示するためには、振り付けシステムと音声表現支援技術、およびロボットハードウエアも連携させ、それをユーザーにとって分かりやすく使いやすいかたちで提供しなければならない。さらに、既存のものや今後開発されるものも含めて、ロボットの表現において有用な情報技術・メディア技術も連携して利用可能とできれば、コンテンツ技術としての有用性をさらに高めていけると思われる。4.3節で述べたモーションキャプチャ利用技術もそのような技術の例として挙げられる。私達は以上を実現するため、統合インタフェース開発のためのソフトウエアフレームワークである“Choreonoidフレームワーク”を開発した。そしてこの上に本研究で開発・選定した技術のインタフェースを実装し、これを統合ソフトウエア“Choreonoid”注3とした。ChoreonoidフレームワークはC++言語を基盤としており、CやC++で記述されたプログラムとの相性がよく、高速な処理が必要なアルゴリズムやインタフェースも実現しやすい。また、Model-View-Controllerと呼ばれるアーキテクチャとシグナル機構に基づいて設計されており、オブジェクト同士の独立性を高めることで保守性や拡張性を確保しつつも、オブジェクト間の複雑な連携を行うことが可能な設計としている[29]。これにより、プラグインとして新たな機能の追加ができるようになっており、プラグインが既存の機能や他のプラグインの機能と連携することも容易である。このような特徴により、Choreonoidは今後コンテンツ技術という枠組みも超えて、ロボット用ソフトウエアの上位層を開発する環境として広く活用されていくことも期待できる。7 コンテンツ制作実験本研究においては、実際にChoreonoidとHRP-4Cを用いてコンテンツを制作し、技術の検証と改良、およびプロモーションを進めることが必要である。この際、本研究の目的を考えると、私達ではなく外部のクリエイターに主体となってコンテンツを制作してもらうことが重要である。これにより、実用性の検証や新たなコンテンツの開拓において大きな効果を期待できる。これを実現するため、東京大学IRT研究機構特任研究員の石川勝氏と共同で、ダンスクリエイター/ダンサーとして著名なSAM氏にHRP-4Cを用いたエンタテインメントコンテンツを制作してもらう取り組みを行った。これはデジタルコンテンツEXPO(DC-EXPO)注42009、DC-EXPO2010の支援を受けて行い、結果を同イベントにて発表してきた。以下ではChoreonoidの開発後に行われたDC-EXPO2010の取り組みについて紹介する。DC-EXPO2010では、本論文で述べた技術を総合的かつ本格的に検証するため、図7に示すようなHRP-4Cが歌って踊るコンテンツの開発に挑戦した。このコンテンツは、HRP-4CがSAM氏の振り付けによるダンスを踊りながら、日本の音楽グループ“Every Little Thing”の曲である「出逢った頃のように」を歌う約3分のデモとなっている。ダンスの動作はSAM氏の振り付けをもとにすべてChoreonoidを用いて制作した。振り付けにおいては事前にロボットの動作能力をSAM氏に伝え、その能力の範囲内で魅力あるコンテンツとなるよう振り付けを行ってもらった。実現したダンスの動作は図8に示すように全身を活用した様々なポーズ・動作を盛り込んだものとなっており、ロボットのダンスとしては表現の豊かさの点でこれまでに無いものである。演出面でも、ダンスのイメージにあったウィッグと衣装をHRP-4Cに装着し、ステージのライティングも趣向を凝らしたものとした。さらに、SAM氏の振り付けはバックダンサーとのコンビネーションを含めてデザインされており、人間のバックダンサー4人との共演による迫力あ図7 HRP-4Cが歌って踊るデモ

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