Vol.4 No.2 2011
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研究論文:ヒューマノイドロボットのコンテンツ技術化に向けて(中岡ほか)−84−Synthesiology Vol.4 No.2(2011)CGアニメーションにおいて最も基本となる手法は、「キーフレームアニメーション」と呼ばれる手法である。ここで「フレーム」とはアニメーションにおいて秒間数十コマで切り替わっていく時系列の各画像を意味している。この手法では、キーフレームとして選んだいくつかのフレームにおけるキャラクタの姿勢(キーポーズ)を与えると、残りのフレームに対してキーポーズ間を補間した姿勢が自動で生成され、その結果がキャラクタの動きとなる。これにより、無駄な作業は省きつつも、キャラクタに対して直接詳細な動きを振り付けていくことが可能であり、動きの素になる姿勢を与えていくという操作も直感的で分かり易い。この手法のロボットへの適用を目指したソフトウエアシステムは以前より開発されてきたものの、それらはいずれも「二足歩行型」のロボットに対しては不完全なものであった。そもそも多くのシステムでは、キーポーズから動きを生成する処理において、実世界におけるロボットと床との間の物理的な挙動を考慮していない。その場合、自脚でバランスをとって支持することに関して物理的に無理のある動きとなってしまい、それをロボットで実行しようとすると容易に転倒に至ってしまうのである。ここがロボットとCGキャラクタで大きく異なる点である。そのようなシステムでも、ロボットが小型軽量で相対的な足裏サイズも大きい場合は、転倒せずにバランスを維持できる領域も広くなるため、キーポーズの調整次第では転倒しない動きになることもある。このことにより、それらのシステムは主にホビーロボットの分野で限定的に用いられてきたが、私達の目的に対しては全く現実的ではない。ロボットと床との間の物理的な挙動を考慮した唯一のシステムとして、“SDR Motion Creating System”[19]があり、このシステムを用いて身長58 cmの小型二足歩行ヒューマノイドQRIO[20]の全身を使った様々な動作が実現されていた。ただし、このシステムにおいてキーポーズから動きを作れるのは上半身のみであり、下半身についてはシステムの提供する特定のコマンドとそのパラメータによって動きを設定するようになっている。この場合、下半身の動きはコマンドで表現できるものに限定されてしまうし、全身の動きを作成する作業はより複雑になってしまう。逆に、そのようにしなければ安定な動作を作れなかったところに、この問題の難しさがある。以上のように、等身大二足歩行ヒューマノイドの全身動作をキーフレームアニメーションと同様に作成可能なシステムはこれまで存在しなかった。私達はそのようなシステムこそがヒューマノイドの動作表現のための基盤となる技術であると考え、キーフレームアニメーション技術と二足歩行ロボット技術の統合によりこれを実現することを課題として設定した。4.2 全身動作振り付けシステムの開発私達は、上で述べた課題を解決する技術として、二足歩行ヒューマノイドのための全身動作振り付けシステムの開発に成功した[21]。このシステムのインタフェースとそれを用いて作成した動作の例を図5に示す。本システムのインタフェースは、上半身と下半身を分けることなく全身に対して統一されたものとなっている。ユーザーは図5の中段に示すようなキーポーズをロボットのCGモデルに設定していけばよく、その結果は自脚でバランスをとって支持することに関して安定な動作となる。後は自己干渉や関節角速度のリミット超過が無ければ(それらが発生した際の修正はユーザーに委ねる仕様としている)、ロボット実機で転倒せずに実行することが可能である。これを実現するため、私達はこれまでにないインタフェース設計を考案した。その大きな特徴は、各キーポーズにおける腰の水平位置を、ロボットがバランスをとれるようにシステムが決定するところにある。この決定はユーザーがキーポーズの入力や修正を行う度に瞬時に行われ、その結果はキーポーズにおける腰位置の補正というかたちでその場でユーザーに提示される。そして、キーポーズ間の補間もバランスのとれた動きとなるよう行われる。これは逆に言えば、初めからバランスのとれた動きしか振り付けできないということである。これを実現しながらも、ユーザーの行う操作自体は通常のキーフレームアニメーションと同様なため、まさにCGキャラクタと同様の感覚で、ロボットに振り付けを行っていくことが可能となるのである。なお、床に対するロボットの体重のかけ方を、足裏と床との間の圧力0.0[s]2.3[s]3.1[s]1.7[s]4.1[s]6.0[s]6.7[s]4.8[s]図5 全身動作振り付けシステムの動作編集画面と作成した動作(キーポーズ)の例この例では8パターンのキーポーズを与えることにより、ポーズをとりながら一歩踏み出してキックする約7秒の動作を作成することができている。

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