Vol.4 No.2 2011
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研究論文:ヒューマノイドロボットのコンテンツ技術化に向けて(中岡ほか)−81−Synthesiology Vol.4 No.2(2011)いうことについては様々なことが考えられるが、技術的な観点で見ると、それらの多くは「コンテンツ技術」という枠組みでとらえることが可能である。ここで「コンテンツ」とは、それに向き合う観衆・視聴者・消費者に何らかの価値をもたらすひとまとまりの情報や体験を意味している。そして、ヒューマノイドをコンテンツのキャストとして活用できるとすれば、それはコンテンツの表現や運用を支援する「コンテンツ技術」であると言えるのである。ヒューマノイドはこのようなコンテンツ技術としての魅力を潜在的に備えている。そもそも、冒頭で述べた「人々の興味を惹く魅力」は、コンテンツとしての価値に直結するものである。また、ロボットというものはコンピュータで制御される機械であり、様々な情報技術と融合させたり、特殊な身体機能を実装することも含めて、コンテンツの作成・表現・運用において生身の人間ではできないことも可能となる。そして、人々が求めるコンテンツの多くは人間を対象とするものであるため、ヒューマノイドは他の形態のロボットと比べて、より一般的なジャンルのコンテンツに対応可能であると考えられる。以上の特徴は、コンピュータグラフィックス(CG)のキャラクタアニメーションと重なる部分もある。実際、CGキャラクタは様々なかたちで活用され、コンテンツ技術として欠かせない存在となりつつある。その上で、ロボットは実世界における実体をもつという点がCGキャラクタとは大きく異なる。これにより、CGキャラクタでは実現不可能なリアリティや臨場感、物理的インタラクション等の表現が可能となってくる。私達は、そのようなコンテンツ技術としての利用こそが、ヒューマノイドの特性を最大限に活かすことが可能な価値ある応用として、まず実用化を目指すべきであると考えている。これにより、CGやコンピュータミュージック、ゲーム機等のデジタルコンテンツ技術が成してきたように、新たな価値をもつコンテンツを創出し、それらコンテンツと関連技術にかかわる産業を活性化していくことが期待できるのである。また、この応用によってヒューマノイドが広く利用されるようになれば、ヒューマノイドへの継続的な投資も期待でき、先に述べた生活支援等の他の応用の発展にもつながっていくと思われる。2 研究の目的と課題ヒューマノイドを用いたコンテンツと言えるものは、これまで全く存在していなかったというわけではない。すなわち、最先端のヒューマノイドの技術デモンストレーションは、ヒューマノイドの特定の振る舞いを観衆が見て驚いたり喜んだりするという点で、これに相当すると言えるのである。ただし、それらは基本的に、ロボットの開発者が手掛けてきたものであり、内容的にもロボットの技術に焦点をおくものであった。また、これによって十分な収益を得るだけの価値や広がりを実現できているわけではなかった。これに対して、本来コンテンツの作り手となるべきなのは、コンテンツ創作の専門家である「クリエイター」と総称される人々である。そして、様々な分野のクリエイターが自ら手掛けるコンテンツにヒューマノイドを取り込み、そこでロボット技術という範疇にとどまらない内容を表現するようになることが、私達の目指す「ヒューマノイドのコンテンツ技術化」である。これが達成されなければヒューマノイドが広く利用されることは無いであろうことは、既存のコンテンツ技術の状況からも明らかである。しかし、十分な表現能力とそれを利用可能とする手段があるかという点で、従来のヒューマノイドとその周辺技術はクリエイターにとって現実的ではなかったのである。本研究の目的は、この状況を改善するにあたって基盤となる要素技術の開発と統合を行い、その検証を行いながらヒューマノイドをコンテンツ技術として産業化する道筋をつけることにある。この取り組みの概要を図1に示す。私達はこの取り組みにおいて、まず以下の技術的な課題を解決することを目標とした。ロボットハードウエア従来にない表現能力をもつハードウエアとして、全身に渡って人間に近い外観を有する等身大の二足歩行ヒューマノイドを開発する。動作表現支援技術多様な動作の表現を作成する手段として、CGキャラクタのキーフレームアニメーションと同様の操作による二足歩行ヒューマノイドの全身動作の振り付けを可能とする。図1 研究の概要人型ロボットを活用した多様なコンテンツの開拓クリエイター(コンテンツ創作の専門家)リップシンク生成システム音声/歌声合成システム音声表現支援技術統合インタフェース統合インタフェース開発フレームワークロボットへの適用CGキャラクタキーフレームアニメーション動力学シュミレータ全身動作振り付けシステム動作表現支援技術歩行安定化制御等身大二足歩行人に近い外観表現能力の高い人間型ロボット

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