Vol.4 No.2 2011
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研究論文:適応学習型汎用認識システム: ARGUS(大津)−76−Synthesiology Vol.4 No.2(2011)Normal 1Normal 2Cancer 1Cancer 2201510501101201301401図18 癌検出への応用例(上図は各標本の異常値)ダブルチェックによる見落とし防止等、病理医を支援するシステム開発のニーズは大きい。実際の胃癌のリンパ節転移に対してこの方法を適用したところ、病理医の所見に近い解析結果を得ることができた[18](図18)。現在、癌病理診断支援システムの構築を目指し、大学病院や癌センターと共同研究を行っている。5.7 時系列データ解析画像に限らず、一般にセンシングデータはN次元(Ch.)の時系列データ{si(t)}Ni=1, t = 1, . . . , Mで表される。これらをN×Mの2次元配列(画像)とみなしてHLAC特徴を抽出することもできるが、一般に次元(Ch.)の添え字iの順序は随意である。そこで、例えば任意の3個の組み合わせをとると、 K = NC3個の2次元配列(3×M)が得られ、それぞれから3×3でHLAC特徴をとるとK×HLACの次元の特徴ベクトルが得られる。これを多変量解析(PCA、DA)することで、時系列データの解析(異常検出や判別)ができる。この方法は心電図の異常検出[19]や多自由度のロボット多指ハンドの動きの解析[20]に応用されている。また、時系列データ間の非対称な相互関係(相関)として捉えられる因果関係は多くの分野で重要であり、線形自己回帰モデルを用いた解析指標としてGranger Causality[21]が提案されているが、これを多項式回帰モデル(したがって高次局所自己相関特徴が関係する)へ拡張した[22]。さらに因果関係の有無を示す重み関数w(t)(Causality Marker)を導入し、因果関係の存在箇所を自動的に抽出する方式を提案した[23]。5.8 対応関係の学習対応関係の学習は、一般的な幅広い応用に繋がる。パターン(静止画あるいは動画等)に対する人の判断や評価(外的規準)の表現、例えばキーワードや印象(感性)語の質的表現y注7や評点yと、パターンの特徴ベクトル表現(HLAC/CHLAC)xとの対応関係を学習的に近似(正準相関分析CCAや重回帰分析MRA)することにより、印象検索や双方向検索、さらに自動評価(予測)が可能となる。図19に家紋の印象検索(CCA)[24]と運動の自動評価(MRA)[25]への応用を示す。前者はさらに一般画像の検索(annotation)に応用され[26]、後者はスポーツ映像の自動インデキシング[27]や、さらには超音波画像からの牛肉の肉質等級(BMS)判定にも応用されている[28]。6 理論的アプローチの有効性以上、パターン認識における特徴抽出理論に基づき、基本要請条件を満たすべく構成された適応学習型汎用認識システム(ARGUS)とその応用、特に視覚システムとしての種々の実応用について概説した。物理や化学の科学的アプローチ(現象解明)と異なり、工学応用、とりわけ情報技術においては、機能実現に向けての構成法は自由度が高く、とかくアドホックで恣意的なものとなりがちであるが、応用ニーズの基本要請条件を押さえて理論的な視点から新規性のある本格的な解決を図ることが重要である。本方式は、理論的な視点からパターン認識の基本的枠組を踏まえて、幾何学的不変特徴抽出としての高次局所自己相関(HLAC/CHLAC)と統計的判別特徴抽出としての多変量解析手法の2段階からなり、後者によって課題に応じた例からの学習が可能となっている。対象に関するモデルや事前知識を一切必要とせず、対象パターンの形状とその動きを判別特徴空間の点として区別する。対象の切り出しも不要であり、計算量も一定の積和主体と少ないため、動画像に対しても通常のPCで実時間処理を遙かに超える高速処理が可能である。本方式の特長は次のとおりである。• 非モデルベースな方式 → 高い汎用性• 基本的な初期特徴(HLAC/CHLAC)→ 広範囲のデータ 形式に適用可能• 統計的な学習(MDA)→ 課題適応性と精度向上• 並列積和演算 → 高速で大量データ処理が可能図19 対応関係の学習[24][25]

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