Vol.4 No.1 2011
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研究論文:レーザー援用インクジェット技術の開発(遠藤ほか)−5−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)ファイン化と配線工程の高スループット化は、まさにトレードオフの関係にあり、これまでの技術では克服できない技術課題であった。3.3 レーザーエネルギーを用いたインクの乾燥方法の考案そこで私達は、トレードオフの関係にあった配線幅のファイン化と高スループット化の関係を両立させるために全く新しいアプローチによるプロセス技術の開発に取り組んだ。すなわち、インクの濡れ広がりを抑える方法として、これまでの解決手段である高粘度インクの使用、ノズルの小口径化、基板の表面処理の延長線上に取り組みを設定することなく、新たなパスとして、吐出された液滴にエネルギーを援用し、乾燥速度を上げる方法を選択した。ノズルの乾燥や突沸現象を起こさないように、吐出された液滴に直接エネルギーを投入する方法として、私達は図5に示すように、レーザーを液滴に集光させることによって乾燥を促進し、インクの濡れ拡がりを抑制する簡易な方法(以下レーザー援用インクジェット技術)を考案した。このレーザー援用インクジェット技術は、インクジェットヘッドから吐出された液滴がガラス基板に着弾すると同時に集束レーザー光を液滴及び基板に照射して、熱エネルギーにより瞬時にインク溶媒を蒸発乾燥させる方法である。このような局所的なレーザーエネルギーの援用によって、ノズル詰まりや基板へのダメージの軽減と、液滴の乾燥と高粘度化によるインク濡れ広がりの抑制が可能となった。この研究では、シングルヘッドから液滴径25 µm−50 µm程度の液滴を吐出し、波長10.6 µmの炭酸ガスレーザーをCW(Continuous Wave)モードで吐出液滴の近傍に照射して配線描画を行っている。3.4 技術開発目標の設定とその狙いインクジェットによる配線描画技術において配線抵抗を下げるためには、濡れ広がりを抑え、配線厚を向上する、言い換えれば配線のアスペクト比を改善することが必要である。そこで、高いスループットと配線抵抗低減を同時に解決するために、重ね塗りすること無しに高いアスペクト比をもつ配線の描画が可能なプロセス技術の確立を目指して、技術開発目標を設定した(図6)。インクジェットによる配線描画技術では、まず第一に、吐出される液滴径の設定が重要となる。これまでのインクジェット技術では、一般的に使用されている液滴20 µm程度で配線描画した場合は、インクが濡れ広がるために描画後の配線幅は、基板表面処理を行ったとしても30−50 µm程度が限界とされていた[2]。また、配線抵抗を下げるために重ね塗りする場合は、描画したインクの乾燥を待たねばならず、描画速度の向上が困難となっていた。液滴径10 µm以下で配線描画[10]した場合は、液滴の微細化に伴って単位体積当たりの表面積の寄与が大きくなることから[9]、インクジェットヘッドから吐出された液滴の飛翔中に非線形に蒸発速度が高まるために、着弾したインクの濡れ広がりが抑えられ、配線幅数µm以下の配線描画を実現できる。一方、描画速度が低く、配線厚が薄いために、配線抵抗を低くするためには多数回の重ね塗りが必要となり、スループットが低下してしまうという課題があった。このようなこれまでの技術の限界を克服するものとして、レーザー援用インクジェット技術では、高いスループットを維持しつつ、これまでの技術では困難とされている配線幅10 µm以下を実現することを目標とした。このことから設定した技術課題は、直径25 µm~50 µm程度の液滴を使用し、エネルギー援用で乾燥を促すことによって、吐出された液滴径より配線幅を小さくすること インクジェットノズルインク液滴ガラス基板描画方向描画配線レーザースポットレーザーヘッドレーザービームインクジェットヘッドインクの濡れ広がりにより配線幅が増加サイズ効果により乾燥速度が向上し配線幅が減少エネルギー援用により乾燥速度が向上し配線幅が減少配線断面図配線上面図配線幅に及ぼす効果インク液滴サイズ速低描画速度配線抵抗低高配線幅 : 0.5~10 µm配線幅 : 10 µm以下配線幅 : 30~50 µm小径液滴の吐出が可能なインクジェット(液滴径10 µm以下)従来技術によるインクジェット(液滴径20 µm以上)レーザー援用インクジェット(液滴径25~50 µm)図5 レーザー援用インクジェット技術による配線描画方法図6 レーザー援用インクジェットが目標とした液滴径と配線パターン

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