Vol.4 No.1 2011
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−56−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)報告:オープンイノベーションハブに向けた技術統合の方法論カーナビゲーションの場合伊藤 肇(元矢崎計器株式会社常務取締役、元トヨタ自動車株式会社ボデー設計部室長) ナビゲーションの先達としては、船舶航海用の六分儀を使った天測航法や航空機の電波航法がありますが、現在地を測る、そしてどちらの方向に向かうかということを考える上で、カーナビゲーションの発展において非常に参考となる技術だと思います。カーナビには30年の歴史があります。初期のカーナビは、推測航法という、「現在地入力」を入れて、方位センサーをもって現在地からどういう方向にたどって目的地に行くかというものです。この技術を1980年ごろ、日本の三つのカーメーカーがおよそ同時期に同じような技術・商品を出したことは非常に驚きです。企業の皆さんは世の中にどんな技術があるかということを鵜の目鷹の目で探していて、この技術を使えばこういうことができるのではないかと気がついて一斉に作り出した。私は20年間くらい設計に携わっていましたが、1年以内に同じような製品が出るということを過去何度も経験しています。“企業の競争”は大きなキーワードだといえます。1970年代後半から当時の通産省初めいろいろな省庁で行った今のナビゲーションの機能を一部持ったような研究や、表示、メモリ、CPU等の多方面な技術力の結集の賜物として1980年にカーナビが出てきた、ということができます。その後、カーナビの商品力が向上し、多機能化し、車にとって大事な商品になっていきました。車に搭載するためには、車の作り方から考えなくてはいけませんから、車側では標準装備化を準備するようになりました。技術分野では、ナビをITS (Intelligent Transport Systems)の一分野と言っていますが、このITSを推進する部隊と、それを標準化する部隊の両方が並行して、ものを開発しながら標準化を行って世界同一の基準で進むというふうに動いています。ITS推進協議会は官学民共同でITSについて議論する日本の機関ですが、こういう機関が必ず全体を統括しながら動いているということで、メーカー単独で動いているということではありません。ここも大事なポイントです。ヒューマンファクタについては、ヨーロッパでHARDIEガイドラインが作られましたが、日本が1980年以降、ナビを多く作ったため、日本の自動車工業会のガイドラインが世界標準の基礎のガイドラインというか、ヒューマンファクタの要件になりました。例えば、走行中に目的地設定できなかったり、生活道路に入るとナビの地図の表示が消えたり、ルートガイドは県道優先で指示したり、走行中はテレビが見られない等というものですが、日本のこういう要件が世界の検討要件になって、それがISO検討要件になり、結果的に国交省のガイドラインにもなりました。ナビは、運転そのものの要件ではありませんから、車の中では視線中央から少し離れたところに、しかし走行中に見ても事故が起きないようにということで、わりあい見やすいところに位置しています。先ほど表示する要件を言いましたが、メーカーは要件を守らなくてはいけませんが、それ以外の競争領域で商品性を出して競争することがナビメーカーに課せられます。走行中に安全に見ることができ、運転者の役に立つ、こういう商品がカーナビの今後の姿だろうと思っています。カーナビの進化の系譜 1970 1990 2000 1980 方位磁石 電子方位計 ナビコン エレクトロジャイロケータ ナビゲーション エレクトロマルチビジョン 歩行者ナビ ケータイナビ スマートフォン VICS GPS 地図DB 表示 CRT TFT メモリ カセット CD DVD cpu 16 bit 32 bit C.C. Telematics PROBE 準天頂 PND HDD バックソナー バックガイドモニタ ジャイロ ITS車載機 運転制御 安全表示 多方面の技術他 の力の結集 (総合討論)80年代のWhatと現在のWhatはどう違うのか小林 直人 鈴木さんから、根本的エンジニアリングということで俯瞰して一番重要なのはWhat、何をするかだというお話がありました。1980年ごろに光大プロがあったわけですが、その当時の状況と、今のWhatとはどう違うのでしょうか。鈴木 浩 WhatはWhy、なぜ必要か、ということから出てきます。電気技術史の中で、技術が社会的背景、社会的ニーズからどのように生まれてきたかを分析したことがあるのですが、エアコンは初め冷房専用機だったものがインバータとヒートポンプの開発により冷暖房兼用機となり、最近は健康志向やヒューマンファクタのようなことが出てきています。社会が何を必要としているかという社会的背景、あるいは私達の生活にとって何が大切なのか、Whatをどう作るかというところに私達は力を発揮してきました。しかし、ここに来て、その辺がまたおろそかになってしまってHowばかり考えている気がするので、根本に戻って議論ができればと思っています。

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