Vol.4 No.1 2011
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−53−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)報告:オープンイノベーションハブに向けた技術統合の方法論な科学について、私達は現場でこういう研究を多く実践しているにもかかわらず、その方法論やアプローチについてはあまり関心を払わずにきたのではないか。あるいは各研究者の中にノウハウとしては蓄積されても、社会全体の財産として共有し、継承されるには至っていないのではないか、ということが私達の問題意識です。「シンセシオロジー」の趣旨が議論のポイントになるのではないかと思っています。本日は、「オープンイノベーションに向けた技術統合の方法論」というタイトルで、豊かな見識と経験をお持ちの方々をお招きしました。新しい科学の方法論をより深いところから議論できれば幸いです。(講演)イノベーション創出に向けた構成的研究の類型化小林 直人(シンセシオロジー編集副委員長、早稲田大学、元産業技術総合研究所) 「シンセシオロジー」は、研究成果の製品化あるいは社会浸透を実現した社会技術としてのシナリオを意識した論文を掲載しています。これらが本格研究の実践につながり、さらにイノベーションを加速することができれば論文誌として大きな役割を果たすことができます。イノベーション創出は簡単なことではありませんが、イノベーションに向けた統合の方法論の一端が見えてくれば有益であるということで、1巻1号から3巻2号までの60編のうち、環境・エネルギー分野8編、ライフサイエンス(バイオテクノロジー)分野9編、ライフサイエンス(ヒューマンライフ)6編、情報通信・エレクトロニクス分野、ナノテク・材料・製造分野10編、標準・計測分野12編、地質分野5編の計50編を対象とし、シンセシオロジー編集委員会の構成的方法論WGにおいて検討しました。なお、その際私が以前提案した①アウフヘーベン型(二つの相反する命題を止揚し、新概念を創出)、②ブレークスルー型(重要基幹技術に周辺技術を結合させ統合技術に成長させる)、③戦略的選択型(要素技術を戦略的に選択・構成)を構成方法の基本タイプ例として考慮しました。全体的にはシンセシオロジーの論文はかなり学際的であることが分かりましたが、それぞれの分野固有の特徴もあります。まず(1)環境・エネルギー分野では、明確な社会ニーズからブレークダウンして課題を戦略的に選択しつつ、要素技術が鍵となって重要技術を生み出し周辺技術との結合によりブレークスルーして統合された技術が生み出されるという「戦略的選択型+ブレークスルー型」の構成が主として見られました。また(2)ライフサイエンス(バイオテクノロジー)分野における特徴的な方法論として、循環的発展ということが挙げられます。例えばバイオインフォマティクスではコア技術が構成され、それが次の発展段階のホップ、ステップ、ジャンプとしてつながり、さらに、この本格研究が次の段階のホップとして循環的に発展します。バイオ産業は、製品化してみないと使えるかどうかわからないという不確実性が他分野よりも大きいため、小さいものでも製品化することが重要となります。第1種基礎研究、第2種基礎研究、製品化がスパイラルに上がっていく、螺旋(ヘリカル)型が特徴と言えます。さらに(3)ライフサイエンス(ヒューマンライフ)分野では、個人にふさわしいメガネフレームの開発が特徴的でしたが、要素技術の統合と、コア技術を分類して新知見に持っていき、顧客の満足度に応じて製品を提供するシステムをつくったことが特色となっていました。(4)情報通信・エレクトロニクス分野では、スピントロニクス技術による不揮発エレクトロニクスの創成がとても特徴的な例で、新材料・新デバイスの開発と、実用化・商品化の鍵となる量産技術という二つの連続したブレークスルー技術が効果を発揮したタンデム形式ブレークスルー型と言えます。また(5)ナノテク・材料・製造分野では、有機ナノチューブの大量合成方法がよい例の一つです。これは完全なシーズ主導ブレークスルー型ですが、同時にこれを作るために非常に詳細な分子設計とその統合技術でこの量産化に至って、さらに用途開拓を今いろいろな企業と共同して実用化に向けて進んでいるという特徴があります。(6)標準・計測分野には、国の標準を確立しそれをSI(国際単位系)トレーサブルとすること、国際的に認知された測定方法で国際整合性の担保をすること、標準供給により社会の末端までトレーサブルな体系をつくるというミッションがあります。そこでの技術開発は主として「戦略的選択型-S(スタンダード)」と名付けることができますが、それは出口が明確であり、その達成のために必要な要素技術を選択・構成していくというのが特徴的です。最後に(7)地質分野では、全体として「総合戦略型」ということができますが、ほかにも個別戦略型、個別戦略・分野融合型、また時間と共に型が変化して発展するブレークスルー型から分野融合型にいくもの等があります。変化する社会ニーズによって研究が進展し、複雑系としての地質現象が理解され、螺旋構造の相互作用をしていくという特徴があります。最後に50編の分析を踏まえ、構成方法の課題を抽出してみました。一つ目は、「シンセシオロジーでの構成方法」です(図参照)。戦略とシナリオ→要素選択と組み合わせ→社会での試用というプロセスが考えられますが、これに加えてもう一つ重要な要素として「フィードバック」があることがわかりました。また要素選択と組み合わせの例としては、前述のアウフヘーベン型、ブレークスルー型、戦略的選択

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