Vol.4 No.1 2011
53/74

−50−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)座談会:日本のものづくりとシンセシオロジー矢部 シンセシスのレベルを上げるにはみんなが情報を交換し合い、知恵を出し合う制度としてつくっていくことが一つの有用な方法だというお話をいただきました。さて、我々にとって「持続可能な社会をつくる」ことは非常に重要です。シンセシスの中に持続可能という目的指向をどのように入れていくか。それは個人のレベルなのか、組織のレベルなのかを含めて、いかがでしょうか。柘植 持続可能な社会をつくりあげるための方法論で一番大事なことは、持続可能なイノベーション牽引エンジン構造をつくる、これに尽きるわけです。その中で一番重要なのは「人材の育成」です。図3に示すようにフロントランナー型イノベーション構造を担う育成すべき人材像は、大きく分けると4タイプあります。一つはタイプD型、Differentiator科学技術を創造する人材。ひょっとしたらノーベル賞をとれるかもしれない人材です。タイプE型は、Enabler技術創造人材。忘れられがちなのがイノベーション構造を本当に支えているタイプB型、Baseという意味ですが、幅広い基礎技術と基盤技術・技能を有する人材。どちらかというと工学教育のかなりの部分はタイプB型の人材を育てる役目だと思います。さらに、私は今の科学技術教育政策で忘れられているのではないかと危惧しているのが、いわゆるタイプΣ型人材。イノベーション構造の縦・横統合により社会経済的価値創造を担う人材です。このΣ型人材は、まさにシンセシオロジーを支えている人材でもあり、持続可能な社会をつくりあげるために非常に大切だと思います。成合 持続可能な社会をつくるということを、私は高度な科学技術を利用するこの社会が続いていくという観点で捉えています。私自身は原子力の安全に関わる研究や規制関係の仕事をしましたが、原子力プラントは基本的には米国を中心とする海外で開発が進められ、我が国はその導入とプラントの製造・建設、運転することをやってきました。研究者は、たとえ故障が起こっても住民や従事者の安全を守るための研究や検討を、一生懸命やったわけです。原子力プラントでは冷却水がなくなると発熱している燃料が溶融し、放射性物質が放出される心配があるということで、冷却配管が破断して冷却水がなくなっても非常用冷却水の注入により燃料溶融を防止するための大変複雑な現象の解析や実験を含めて研究しました。故内田秀雄先生はこのような研究を「原子力安全の開発」と言われましたが、目的を達成するために色々な知見を総動員して研究を行う、いわゆる目的指向型の研究開発のおかげで「安全の論理」と言われるほど抜けのない構成ができたわけですが、基本的な点はシンセシスということです。食品や医薬品分野でレギュラトリーサイエンスが提唱されていますが、リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーション全体にわたる研究であり、人文社会科学を含む関連科学が必要ということで、従来の基礎応用科学の範疇ではなく、目的指向型なものということです。原子力でも、リスク評価やリスクコミュニケーション、行政のあり方を含むリスク管理の問題が指摘されつつありますが、高度技術依存社会において社会的受容性を考えると、安全と安心を確保する方法論、科学が必要であり、これにはシンセシス的発想が重要だと考えます。柘植 成合先生の目的指向的なものには人文社会科学も含めた視点が不可欠というお話は、設計科学、つまりあるべEnabler Technologies Enabler Technologies シンセシオロジーを支える人材でもある!Σ型人材は知の統合と社会経済価値創造に必須の人材出典:柘植綾夫、イノベーター日本、オーム社要求される技術の高さType-Σ : イノベーション構造の縦・横統合により 社会経済的価値創造を担う人材要求される科学技術のスペクトルの幅の広がり(人文、社会まで)Type-B : 幅広い基礎技術と 基盤技術・技能を有する人材Type-E : Enabler 技術創造人材Type-D : Differentiator 科学技術創造人材育成すべきイノベーション人材像DifferentiatorTechnologyDifferentiatorTechnology基盤技術とものづくり力基盤技術とものづくり力フロントランナー型イノベーション構造図3 持続可能な社会を作り上げるために必須な人材像

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です