Vol.4 No.1 2011
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シンセシオロジー 座談会−46−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)日本のものづくりとシンセシオロジー矢部 「シンセシオロジー」は「ものをつくりあげる」重要性を日本、そして世界に訴え、その方法論を多くの方と共有したいということを発刊の大きな目的にしています。さて、研究開発の成果が実用化するまでには、その間の「死の谷」を越えるための克服すべき技術的な課題があります。幾つか事例を申し上げますと、私が関わったスーパーヒートポンプ・エネルギー集積システム研究開発は、1993年までの約10年間がヒートポンプの性能を倍に上げるという国のプロジェクトでした。プロジェクトの終了時に東京工業大学の故片山先生が「レーシングカーができましたが、高級乗用車にはなっていませんね」と言われました。その後、世の中に出るまでにさらに十数年かかりました。まさにそこが「死の谷」と言えるのですが、この間にさまざまな技術が補強され、経済性と性能向上の両立に十数年かかったと言うことでしょう。今は国内販売や海外展開もされています。また、エコ・エネルギー都市システムでは水和物スラリーによる冷熱蓄熱輸送を開発しましたが、これは実用化されるまでに6年かかりました。エネルギー技術の場合、経済性は重要なファクターであり、この6年は経済性へのチャレンジだったと言えます。もう一つは、中小企業と一緒に行った自動車の製品検査工程の自動化です。レーザーの反射回折を使った自動検査装置で、原理は5年ほどでできたのですが、実際に自動車会社に売り込んでから実用化するまでに7年かかりました。これは信頼性、耐久性、高速性へのチャレンジでした。一方、ニューサンシャイン、ムーンライトというエネルギープロジェクトの中には死の谷から抜け出ていない技術がたくさんあります。そこでお尋ねします。死の谷を越えるための有効な方法はあるのか、また、死の谷を越えるために技術の統合の視点、つまりシンセシスはどの程度重要なのでしょうか、さらに、世界をリードするべき日本のものづくりの持つべき特徴は何があるのかということについて議論していきたいと思います。ものづくりにおけるシンセシスの重要性柘植 「世界をリードする日本のものづくり」とはフロントランナー型のイノベーション創出であり、巨大複雑系社会経済システムの個別先端科学技術創造と、その統合化能力の両方が不可欠です。巨大複雑系社会経済システムとは、例えばインターネットに代表されるような人工物の社会ネットワーク、高速日本が優位を保ってきたものづくりに、新たな強みを付加することが求められています。そのためには、研究開発における新たな仕組みを構築する必要があります。日本においてものづくりを主導してこられた方々に、新たなものづくりの戦略とその中でのシンセシスの重要性、また、産総研の目指す本格研究の役割を語っていただきました。 成合 英樹 柘植 綾夫 矢部 彰筑波大学名誉教授、前原子力安全基盤機構理事長芝浦工業大学学長、前総合科学技術会議議員、元三菱重工業(株)代表取締役常務産総研理事(シンセシオロジー編集委員:司会)座談会出席者シンセシオロジー編集委員会柘植 綾夫 氏

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