Vol.4 No.1 2011
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研究論文:マイクロ燃料電池製造技術開発への挑戦(藤代ほか)−42−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)料極のこれら抵抗成分が運転条件によって変化し、発電性能向上に大きく寄与することが新たに分かった。図8に示すように一連のセラミックス製造プロセスの最適化により、燃料極の50 %を越える高気孔化を実現し、低温域での発電の反応抵抗成分が大きく低下することを発見した。図8bに燃料極の気孔率と600 ℃でのセルインピーダンス抵抗値の関係を示す。図8bのように燃料極の気孔率の増加に関係して、抵抗値を示す円弧が小さくなり抵抗値の減少が確認できた。その結果、600 ℃という低温域においても図8cに示すように、1 W/cm2を超える出力性能を実現している。これは、高気孔率を有する電極構造内において還元したニッケルがナノ粒子化し、その高分散構造が形成され、活性サイトとなる三相界面数の増加に繋がったことが反応後の電極構造の観察から考えられる[15]。この技術の実現には、セラミックス製造企業等が量産・低コスト化の可能な押出製法や湿式塗布プロセスによりセル製造レベルで高い特性を実現できたことも重要な因子である。すなわち、図3のような研究開発モデルでのPDCAサイクルを考慮した製造プロセス技術の検討により、これまで700−800 ℃レベルで1 W/cm2の出力密度を示すジルコニア系電解質のSOFCで、600 ℃といった低い温度域でその性能を達成するマイクロSOFC製造技術を確立した[16]。マイクロSOFC製造技術として、発電部材としての集積モジュール製造技術への展開が必要であるが、これまでのエネルギーモジュールのイメージを越えた指先サイズや手のひらサイズのインパクトの高い高集積モジュールも開発し、国内外より大きな注目を得ている。これらのセルは数百W級の集積モジュール製造が可能なことや、燃料電池として40 %を越える効率も実現できることも、一連の製造〜評価でのユーザー企業等との連携の中で検証できている[17]。開発したマイクロチューブ型SOFCからなる集積モジュールを用いたkW級モジュールへの展開と、その低コスト製造技術が今後の課題となる。さらに、前述した図9aのような新コンセプトのハニカム型マイクロSOFC開発でも、ハニカムSOFC間のガスシール性と集積セルの電気化学的モジュール化が必要となる。図9bに示すようにインターコネクトとして銀−シリカ系ペースト等を用い、金属とペーストで容易に接合構造を形成し、ハニカム構造の得意とする熱機械的特性を生かした急速な熱履歴に対応する新たな集積モジュール化技術も開発した。本SOFCモジュール技術を用い数百セル/cm3の高集積構造を組み合わせて、任意の直列構造ユニットを製造することが可能となった。また、高比表面積、かつ低い比熱容量のマイクロSOFC構造の温まり易さを活用し、図9c、dに示すように起電力や電流値を確認することにより、要求される技術課題の一つである3−5分といった数分レベルの急速起動に耐える使い易いマイクロSOFCモジュール製造技術を提案した[18]。また、650 ℃ではその単位体積当たりの出力性能も2.8 W/cm3とチューブ集積型モジュールと同等であり、SOFCとしての高い変換効率が期待できる。ハニカム型マイクロSOFCの高いセル集積性や急速起動性のメリットを活かし、より使い易く安価なSOFCモジュールとして開発を進めると共に、さらなる低温化を含めた課題解決でのモジュール発電性能向上を目指す。以上の開発セルおよび集積モジュール技術は、これまで例のない小さな押出部材からなる新コンセプトのセラミックス集積構造であったため、開発当初より既存技術との比較の中、さまざまな反響があった。特に、発電密度や発電モジュール構造が既存のセルや集積モジュールと同等の性能では、発電モジュールとしての実用化に疑問の声もあった。そ(b)(d)(c)(a)ハニカム壁端面での接続電流銀-シリカ系ペーストガラスインターコネクト3分電流 (A)温度 (°C)時間 (分)100080060040020000.30.20.1050403020100 試作直列モジュール(30 W級)燃料極電解質空気極起動開始 3 分H2 flow時間 (分)温度 (°C)昇温スタート100080060040020001.00.80.60.40.201214161086420起電力 (V)1 µm1 mm図9 急速作動が可能なハニカム型マイクロSOFCモジュールa:ハニカム構造を利用した集積セル、b:試作モジュールと接続構造例、c、d:急速起動および熱履歴での発電特性
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