Vol.4 No.1 2011
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研究論文:マイクロ燃料電池製造技術開発への挑戦(藤代ほか)−40−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)集電ロスの計算を行った。集電抵抗成分に起因する集電ロスとセル長さの関係を図5に示す。このとき発電での集電ロスが3 %以下になる長さを試算すると、両端集電では長さ2.0 cm、片端集電では1.0 cmのセル長さでの集積モジュール設計が必要であることが分かる。これは、セルを長くすることで発電電極面積を増加させるためには、両端集電と燃料極の厚さを厚くする必要があることを示している[10]。逆に、セル性能の向上においては、電極厚さを薄くすることが必要であることから、セル長の最適化が低温運転条件での集積モジュール発電性能の向上技術として重要となる。このような設計指針をもとに、ボトムアップ的設計での集積モジュール製造技術を発展させ、押出成型技術の成型精度向上と薄膜塗布技術により、量産可能なセル製造技術を開発した[11]。その結果、2.0 mmφのセリア系電解質を用いた燃料極支持型マイクロSOFCとして、570 ℃で1.0 W/cm2の高い出力密度を達成している[11]。さらに、この高性能セル(マイクロチューブセル)を組合せ、多孔質セラミックス内に集積したモジュール構造の作製においても、同様な等価回路シミュレーション設計によってモジュール内の最適なセル配置を検討した。図6に示すような集積モジュールモデルでの集電ロスの計算により、構成する集電部材(セル間)としてセル間隔1.0 mmでは100 S/cmを越える導電性が必要なことを見い出した。これにより、角砂糖サイズの大きさのスペースで2.0 mmφ外径以下のマイクロチューブ型SOFCを数個集積した2W級の発電ユニットを実現した。この検討によって、550 ℃で2 W/cm3を越える発電性能を有する集積モジュール(キューブモジュール)の設計および製造技術を開発し、直列接続等さまざまな集積モジュール構造の作製が可能となった[12]。ii)高度塗布プロセスでのセル構造制御技術SOFCとその集積モジュールの高性能化において、電気化学的な構造設計に基づくセラミックス電極や電解質等の異種材料の多層構造をナノ〜ミクロサイズでの構造制御で作り込み、マクロな接続等に展開できる製造プロセス技術を開発しなければならない。さらには、セル等を配置する基材の組織に影響されずそのセル集積度を効果的に制御可能な簡単、かつ量産性に優れた湿式コーティング等の製造技術が求められる。SOFC等セラミックス電気化学デバイスでの電極作製においては、多様なセル形状、組成制御および積層構造の新規開発が必要であり、機能性セラミックスでの形状自由度の高いコーティング技術と3次元空間への高度塗布技術の両立が求められる。このとき、構築する電解質膜の緻密化および薄膜化や、セル構造形成での構造制御性を高めなくてはならない。私達は、性能向上に必要な膜構造を形成する目的で、新たな湿式塗布製造プロセス技術を高度化し、スラリー塗布をサブミリ径の3次元空間へ均質に行う製造プロセス技術の開発を進めた。図7に、種々の湿式セラミックス塗布プロセスの特徴を示す。セラミックス基材への湿式ペースト塗布プロセスとして、主にチューブ形状のセルではディップコート法でシングルμm厚レベルの緻密な電解質を形成する制御技術を実現している[11]。一般的なディップコート法は、チューブ部材等の基材外周への薄膜形成では有効であるが、微細空間の内壁に電気化学的な機能層の形成が必要となる場合、粘性抵抗と毛細管力とのバランスによりスラリーが奥まで染み込まず全面への均一な塗布が容易ではない。また、スラリーアスピレーション法等で内壁を浸すようにスラリーを充填して吐き出す手法もあるが、内壁への塗布膜が厚く不均質になり、配列孔数が増加すると塗布量が制御できない問題がある。これらの塗布プロセス法の問題を解決するために、新たにスラリーインジェクション法という、塗布ペースト材料へ毛細管力を打ち消す外力を付加し、塗布するペースト材料を流動させ塗布量を制御するユニークな塗布プロセスを開発した[13]。この技術により、新たに、トップダウン的製造としてのサブミリ径の3次元的な規則配列孔を有するハニカム構造体等への微細空間を利用し、膜厚制御1.21.00.80.60.40.20110(c)(b)(a)5 %49 S/cm108 S/cm139 S/cm多孔質集電部材の導電性チューブ間の間隔Z(mm)集電ロス(%)100マイクロSOFCyxZ(キューブモジュール等)多孔質集電部材/空気極多孔質集電部材1 cm集電電極技術開発注入上下移動吸引ポンプ試料スラリーインジェクションスラリーアスピレーションディップコートスラリー図6 キューブモジュール設計と開発集積モジュールa:集積モジュール設計モデル、b:集電ロスの計算結果@650 ℃、c:開発モジュール例図7 湿式セラミックス塗布技術

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