Vol.4 No.1 2011
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研究論文:マイクロ燃料電池製造技術開発への挑戦(藤代ほか)−38−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)すようにセルやモジュール部材の体積を小さくし、相対的な温度勾配を小さくする設計を採用することである。これにより、起動エネルギーを減少させると同時にSOFCの温度分布を制御し易くなる。その結果、セルおよびモジュールの高い耐熱衝撃性が得られる。また、平板セルのモジュールではセル容積の減少によりユニットの体積当たりの発電密度も減少するので、発電効率や電力密度等の性能を向上させる必要がある。その対策として、図2に示すような小型の管状セルにて直径等の単位構造の制御で電極面積を増やし、体積当たりの発電性能を向上させる量産可能な新たな高集積化製造技術が不可欠になる。また、要求される出力容量として数W〜数kW級のモジュールでの大きさをターゲットとして、高分子型燃料電池の性能を越える2 kW級でも1 L以内の大きさに収まるモジュールの構築技術が重要となる。出力容量が大きくなると共にモジュール温度制御が困難となるので、この開発では集積化技術での低温作動化や起動停止の制御が容易なセル集積モジュール化技術が求められる。SOFCモジュールは、緻密な酸化物イオン伝導性セラミックス電解質と電気化学反応を進める電極(燃料極、空気極)、および燃料や酸素(空気)で構成されている。通常のSOFCはセラミックス部材としてそれぞれの機能を発現するセラミックス粉末を用いて目的形状に成型、塗布積層し、焼成過程により単位構造を作製する。そのためセルや集積モジュールの形状や大きさにより、さまざまなセラミックス製造プロセス技術を活用する分野である。さらに、熱膨張特性、電気的特性ならびに強度の異なる種々の機能性材料を多層積層してセルや集積モジュールを作製するために、ナノ〜ミクロ〜マクロサイズレベルの各材料の設計や作製過程での構造制御が最終的な発電性能に強く関わる。今回の新しいマイクロSOFCからなる集積モジュール実現への挑戦は、すなわち、セラミックス製造プロセス技術への挑戦であり、セラミックス部材としてセルおよび集積モジュール製造技術に立ち返った技術開発が不可欠となる。しかし、個別の要素技術の構築を待っていては開発期間が長期となる。セラミックス部材として、サーマルマネージメント特性や低温での発電性能を向上させる電気化学的構造をもつセラミックス材料や、部材の革新的なものづくり技術開発が求められる。このような背景の中、高集積マイクロSOFC製造技術の課題解決と新たな製品化技術の実現のため、“機能性セラミックス製造技術の開発拠点”を活用し、「セラミックリアクター開発(NEDO委託2005−2010年)」の中で“セラミックス集積化製造プロセス技術”を柱に研究開発を行った[6][7]。 図3に示すように、機能性セラミックス製造技術の開発拠点で設計〜製造〜解析のPDCA機能を実行させ、製造基盤技術と製品化技術を同時に開発した。その結果、セラミックス製造企業やユーザー企業の技術者と研究者が連携するオープンイノベーション体制が実現し、プロトタイプモジュール製造での技術開発の拠点として研究を推進することができた。このアウトプットとしては、研究成果のみならず、学術的な体系化による学位取得といった産業人材育成の機能も果たした。具体的には、低温化、集積化、高性能化、量産性等の高機能SOFCの実現といった新コンセプトに基づく高集積型セラミックス電気化学モジュールの開発に向け、機能性セラミック製造技術開発拠点において、材料選択セルデザイン(構造・寸法等の製造設計)からセルやモジュール試作技術(杯土設計、塗布、焼成条件等での機能制御プロセス)への展開、新構造セルやモジュールの独自の評価と解析技術(熱挙動、電気化学特性、発電特性)の確立、および、セルとモジュールの総合評価(構造改善/製造プロセス改善)を製造メーカーやユーザーメーカーの技術者と研究者が直接議論し、新たな独創的プロセス技術の提案や新現象の発見での構造制御技術の提案と、産業界へ新規技術活用の提案を進めてきた。このような研究者と企業技術者との連携の中から、新たな集積化モジュール試作課題の解決と材料およびプロセス要素技術の開発での一連の流れが構築できている。私達が進めてきた拠点での研究開発では、歴史的に中部地域のセラミックス産業等と連携して行われたファインセラミックス製造プロセス開発体制が、ものづくり技術としての構築と蓄積がなされ、これまで成形技術に適さない高性能燃料電池材料等においても量産可能な手法で試作と評価と解析の最適なサイクルが機能した。さらには、最適条件を決める構造制御等の検討が試作評価と並行して確実に具体化できたため、これまでにない新規高性能マイクロSOFCと高集積コンパクトモジュール製造技術の開発を短期間に達成できた。1cmマイクロSOFC技術の実現TechnologyScienceユーザーメーカー技術者産総研 研究者製造メーカー技術者セル・モジュールの総合評価の議論(構造改善/製造プロセス改善)新構造セル・モジュールの独自の評価・解析技術(熱挙動、電気化学特性、発電特性)セル・モジュール試作技術(杯土設計、塗布、焼成条件等での構造制御プロセス)・新現象の発見での構造制御技術の提案・新たな独創的プロセス技術の提案材料選択セルデザイン(構造・寸法等の製造設計)ACDP産業界への新規技術活用の提案市場開拓、規格機能性セラミック製造技術開発拠点◯要求・課題1.低温化2.集積化3.高性能化4.量産性・・・・・・・・新コンセプト高集積型セラミックス電気化学モジュール~高機能マイクロSOFC実現への夢(産業界の期待)セラミック集積化技術図3 新規マイクロSOFCモジュール製造技術の研究開発モデル

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