Vol.4 No.1 2011
40/74
研究論文:マイクロ燃料電池製造技術開発への挑戦(藤代ほか)−37−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)ジルコニア(酸化ジルコニウム)等の電解質材料開発、および種々の混合導電性のセラミックス電極や触媒材料と組み合わせたサーメット電極材料の開発が進められてきた。一方では、平板型や円筒型等のセラミックスセル製造やスタックとしてのモジュール製造技術の開発が日本を初めとして進められてきており[3]-[5]、材料開発と両軸を成している。これまでは、高温域での炭化水素等の直接改質反応を利用でき、水素以外の燃料で高いエネルギー変換が達成可能であるというSOFCの特徴があることから、ニッケル系電極では700 ℃以上の温度領域で開発が行われてきた。そのため、低温型のPEFCと比較して、これまでの各種SOFCモジュールでは、高い出力性能を得るために運転温度を高くし、セル抵抗を下げて発電面積を増やす必要がある。それにより、発電面積の増加と共にモジュールが大きくなり、熱機械的ストレスを避けるために急速な起動や停止を繰り返す運転を行えない等の技術課題があった。一方、電力負荷に合わせて起動停止をすることにより無駄な発電が抑えられるため、低温作動化や急速な起動および停止が可能なSOFCモジュールの実現が強く求められていた[2]。モジュールの小型高出力化や発電温度の低温化の技術課題を乗り越え、このフレキシブルな運転が可能となればCO2排出のさらなる削減に繋がり、また、モジュール作動温度の低温化が進めば低コストの金属材料が利用できるメリットもある。この論文では、セラミックス集積化プロセス技術を活用する革新的マイクロSOFC製造技術への挑戦として、種々の研究開発における課題解決の取組みを示す。2 エネルギーモジュール技術の開発状況〜低温作動が可能な高出力密度のコンパクト燃料電池への産業界の期待図1に示すように、SOFCの各種産業での利用用途の多様化で、数W〜数kW級の高効率エネルギー変換を必要とする産業ニーズも増え、省スペースで使い易いコンパクトサイズのSOFC技術の利用が強く期待されている。セラミックス材料からなる電気化学モジュールとしてのSOFC作動条件の幅を広げて利用用途を拡大していくためには、より低温域の650 ℃以下でもこれまでの運転温度(700 ℃〜1000 ℃)と同等の性能を有し、急速起動および停止が可能なマイクロSOFC技術が不可欠となる。マイクロSOFCとは、手のひらサイズのように、これまでに比べてサイズが小さいセルでの発電技術であり、それにより省スペース化に対応するコンパクトなモジュール設計が可能となる。そこで、種々のSOFCでの技術課題を解決すべく、マイクロSOFC技術開発への取り組みが始められた。図2にマイクロSOFCの利点を示す。一般的に、酸化物セラミックス材料は金属に比べて熱伝導性が小さいため、セラミックス電気化学セルおよび集積モジュールの容積が大きくなると昇温時(特に急速昇温時)にセル全体に急峻な温度勾配が発生し、セルやモジュール部材の破壊に至ってしまうことが問題となっていた。その解決技術の一つは、図2に示高い産業ニーズ(数W~kW)0.10.01ダイレクトメタノール形(DMFC)ダイレクトメタノール形(DMFC)効率(%)溶融炭酸塩形(MCFC)固体酸化物形(SOFC)リン酸形(PAFC)高分子形(PEFC)SOFC+GTエンジン1000100103050404020ガスタービン(GT)リーンバーンエンジンシステム規模 (kW)1電気自動車、モバイル機器、 レジャー・災害用等ポータブル電源、補助電源(APU)、小型定置発電 等体積当たりの電極反応面積の増大体積発電密度(W/cm3)小型セル大型セル小大起動エネルギー(加熱)、温度分布● モジュールの小型・高性能化● 急速起動運転高い耐熱衝撃性0.01チューブ径 (mm)20151050.10体積当たりの高い発電密度101参考)解説 燃料電池システム、J. Larmine、A. Dicks(槌屋治紀 訳)、オーム社(2004年)等電解質材料作動温度特徴発電効率酸化物イオン伝導性セラミックス500-1000 ℃(低温域での高性能化が課題)40-70 % プロトン伝導性高分子膜~38 % 溶融炭酸形(MCFC)溶融炭酸塩600-700 ℃45-60 % リン酸形(PAFC)リン酸160-220 ℃35-42 % 固体電解質形(SOFC)固体高分子形(PEFC)常温-約90 ℃高温で作動するため、電極抵抗が低く、高いセル性能を有する。また、排熱を利用した燃料改質によって大幅な効率向上が可能。将来の分散電源として期待されている。作動温度が低く、取扱が容易。家庭用、自動車、携帯用等に向けて研究が進み、一部商用化も進む。大型化が容易。燃料にごみや木材を利用し生成するバイオガスが利用可能。二酸化炭素の分離も可能。市販されている燃料電池の中で業務用として開発。工場での分散電源等へも利用実績がある。表1 燃料電池の種類と特徴図1 マイクロSOFCの産業展開図2 マイクロSOFCモジュールの利点と集積化技術
元のページ