Vol.4 No.1 2011
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研究論文:有機化合物のスペクトルデータベースの開発と公開サービス(齋藤ほか)−31−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)とから可能であった。現在は、国内ユーザーへのサービスとして、アクセスするコンピュータの言語設定が日本語の場合には、フレームに日本語で説明が表示される仕組みにした。重要な情報であってもこのデータベースで整備し切れないものに対しては、積極的に他の利用可能なデータベースとリンクを張ってユーザーへの便宜を図った。2006年からは東京化成工業株式会社のオンラインカタログとこのデータベースのリンクならびに、科学技術振興機構の化学物質リンクセンター[11]とこのデータベース間のリンクを張った[12]。日本語を利用した化合物検索や構造式検索等、現在このデータベースで独自に整備し切れていない部分を補完するようにした。ウェブでデータ公開したメリットの一つとして、公開データを一括管理できることが挙げられる。公開用サーバのデータを更新することで、すべてのユーザーに対して同時に同等のサービスを提供することが可能となった。ウェブを介してユーザーからのコメントが直接開発者に寄せられることも、ほかの研究と異なる特徴である。ウェブ公開以前は、1989年からオンライン[13]で、1991年からはCD-ROM媒体にデータと検索プログラムを入れたデータベースソフトウエア[14]として販売した。このCD-ROM媒体を利用できたのは国内数十件程度の特定ユーザーのみであった。この形態では、提供されるデータはある時点までに収集されたものに限られ、長期間にわたって保存できるが、データの更新やソフトウエア改修等への対応は難しい。また、CD-ROMでは所有する一部のユーザーに対してのみのサービスに限定される。しかし、MS-DOSで動くCD-ROMで検索、表示可能にしたことで、現在のウェブ公開に必要な要件をあらかじめ検討できた。このことは、開発前に先導的研究を行ったことによりこのデータベースを適切に設計できたことと類似している。CD-ROMでの公開は、このデータベースをウェブで公開するための重要な先導研究であったと考えられる。4.2 ユーザーの解析と公共財としての役割このデータベースのユーザーを解析するために、2009年度のアクセスログを国別認識記号で集計解析した結果を図6に示した。延べ5千万件超のページビューのうち国内からのアクセスは約14 %であり、一方最もアクセスが多かったのは北米地域であった。商用を表す「.com」、ネットワークを表す「.net」等、特定地域に限定されないドメインは、国別識別コードとは別に集計した。日本国内からのアクセスに関してアクセス元のドメインを集計したところ、図7に示したように大学等の学術機関である「.ac.jp」からのアクセスが最も多く、ネットサービスやインターネットサービスプロバイダ等に発行される「.ne.jp」、一般企業のための「.co.jp」がそれに続いた。これらの中で学術機関とネットワークプロバイダー等のドメインからのアクセスは、一年の中でも3月と8月は、最もアクセスの多かった6月の半分以下と、季節変動が激しかった。一方、一般企業からのアクセスは、多少の変動はあるものの一年を通しておおむね同じ程度のアクセス量があった。このことから、学生の夏休みと学期末と重なる時期にアクセス数が低下する傾向にあることがわかる。ネットワークプロバイダー経由のユーザーのアクセス傾向が、学術機関からのユーザーのアクセス傾向と類似していることから、ネットワークプロバイダー経由のユーザーも多くは学生であることが示唆され、全体として多くの学生に利用されていることがわかった。このようにこのデータベースは多様なユーザーに使用され、産総研のような公的研究機関が提供する公共財の役図6 2009年度1年間にデータベースへアクセスしたユーザーの地域ドメインの割合地域を特定しないドメインのうち、「.com」と「.net」は独立に集計した。不明は、アクセス元にIPアドレスを利用する等、ドメイン名が特定できなかったアクセス元である。図7 2009年度1年間にデータベースに国内からアクセスしたユーザーのドメインごとの集計学術機関、ネットワークプロバイダー等、一般企業、公益法人等、ネットワーク管理組織、政府機関は、それぞれ「.ac.jp」、「.ne.jp」、「.co.jp」、「.or.jp」、「.ad.jp」、「.go.jp」ドメインに対応しており、これ以外の「.jp」ドメインからのアクセスはそのほかにまとめた。 不明 28 %その他の地域 3 %アジア太平洋 2 %.net 15 %.com 6 %欧州 15 %北米 16 %日本 14 %その他 5 %政府機関 3 %公益法人等 3 %管理組織 3 %ネットワーク一般企業 24 %ネットワークプロバイダ等 27 %学術機関 36 %
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