Vol.4 No.1 2011
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研究論文:研究戦略の形成とそれに基づいた構成的な研究評価(小林ほか)−25−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)議論7 ロジックモデルと構成的研究評価コメント(中村 和憲)長崎県の例は、戦略的研究開発を推進するためにロジックモデルを活用し、これに基づいて分野研究評価分科会、研究事業評価委員会を実施した事例について述べられています。本事例におけるロジックモデルに基づいた評価と、この論文で取り上げられた構成的研究評価の基本的な違い、特徴等を明確にする必要があるのではないでしょうか。回答(中村 修)「構成的な研究評価の考えを試行的に取り込んだと考えられる研究開発評価」の事例の一つとして紹介したもので、基本的な違いはありません。この論文で述べたように、長崎県科学技術振興局のミッションは、科学技術を活用して将来に夢の持てる元気な長崎県づくりに貢献することであり、各研究機関が地場企業・産地のニーズを速やかにくみ取り、求められる研究成果を得るための研究課題を設定しているかを評価していただくために、まず走っているすべてのプロジェクトを整理してロジックモデルに纏めてもらいました。シナリオの戦略性のロジックを問うには、ロジックモデルの適用が有効であるからです。各評価委員会では、そのロジックモデルを基に各研究課題の立ち位置を確認してもらいながら、各研究機関のミッションに照らして戦略的な研究開発が行われているかについて評価していただき、全体のプロジェクトの構成が戦略的であるか、すなわち戦略的なプログラムになっているかを確認していただくとともに、個々のプロジェクトが長期的視点に立ち、明確な目標をたてているか、目標に向けて妥当な成果が着実に出つつあるかについて評価していただきました。もっとも、この試みはまだ緒についたばかりであり、今後さらに進化させる必要があります。議論8 総合的評価の具体的内容コメント(赤松 幹之)評価を「総合」することが構成的評価であることが書かれていますが、どういったことが総合的に評価することなのか、例示がないために理解がしにくいと感じます。三つの軸を足し算するので良いのか、ある軸上の位置によって、他の軸での重みを変えて評価するのか、等が想定されますが、具体例があることが望まれます。回答(小林 直人)まさにこれが評価の設計の眼目となります。産総研の場合は重みを付けて足したり、幾何平均をとったりして工夫をしましたが、これこそが評価を推進する組織の知恵の出し所だと思います。その点も含めて、「4.3.3 総合的な研究評価」に以下の記述を追加しました。「構成的な評価にあたっては、研究の特性を十分に踏まえ、研究推進側と評価者が、到達すべきゴールを含む戦略や成果指標に関する共通認識の下、研究の進め方や成果に関する深い議論を行い、戦略で目指された成果目標と実際の研究成果の距離を確認しつつ最終的にその研究プログラムの実施の意義と効果を仮説推論的に議論・検証することが重要である。その過程を通して“研究評価=仮説形成とその表現”と考えることができる。これはまさに創造的な行為である研究そのものとも密接に関係しており、研究評価は創造的な営みの一つであると考えることができよう。(中略)具体的には、要素評価とその適切な構成に加えて、研究推進側と評価委員側との発展的な深い議論の結果を組み込むことを含めて、総合的な評価システムを設計して行くことが望ましい。」議論9 結論コメント(赤松 幹之)研究評価について、(1)第1種、第2種、製品化で統一、(2)契約に基づく、(3)評価者と被評価者が同じ地平、(4)研究の価値を引き出せること、(5)研究が進化すること、(6)意欲の源泉になること、(7)説明責任、を要件として掲げていますが、これらと第3章以降で論じられた研究戦略形成と構成的評価がどのようにつながるのか、結論等で記載できませんでしょうか。おそらく、戦略形成は(1)から(3)および(7)を満足させるためのものですが、(4)から(6)については構成的評価で実現できるものと期待するという位置付けだと思います。研究の固有特性の四つの視点、研究評価の7つの視点、研究戦略形成、構成的評価の四つの関係をサマライズした記述と、それを図示したものがあると、論文内容も整理されて分かり易くなると思います。回答(小林 直人)とても重要な示唆を有難うございました。新たな図12を最後に追加し、下記の表現を追加しました。「この論文で論考を進めてきた研究の固有特性、研究戦略の形成およびそれに基づいた構成的な研究評価の関係とそれらが及ぼす研究評価のねらいを整理したものを図12に示す。研究戦略は研究開発によって達成すべき目標とそのシナリオを示すものであるが、それに基づいて構成的な研究評価を行うことにより、研究の価値の抽出、研究の進化、研究者の意欲の源泉の創出、説明責任の達成等が有効に行われると考えられる。」

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