Vol.4 No.1 2011
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研究論文:研究戦略の形成とそれに基づいた構成的な研究評価(小林ほか)−22−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)謝辞この研究の推進および論文作成に当たっては、独立行政法人 産業技術総合研究所評価部の皆様に色々な面で大変お世話になりました。この研究の中心的考えは、同研究所が旧工業技術院研究所を統合して新たに独立行政法人の研究所として発足して以来、評価部が中心となって行ってきた9年以上にわたる研究ユニット評価の経験と知見の上に成り立ったものです。また、吉川弘之産総研初代(前)理事長(現産総研最高顧問、(独)科学技術振興機構研究開発戦略センター長)からはアブダクションや構成的評価に関する重要な示唆とこの研究に関する変わらぬ励ましをいただきました。ここに深く感謝の意を表します。さらに、長崎県の公的研究機関のあり方に関するロジックモデル等の作成に尽力いただいた長崎県科学技術振興課並びに長崎県窯業技術センターの関係各位に感謝いたします。注1)2009年12月エネルギー省(DOE)のSteven Chu長官が主導したクリーンエネルギーの研究や開発、実用化にわたる一連の活動を支援するプロジェクト。注2)2007年開始のEU全体にわたる研究開発プログラム(FP7:Framework Program7)の策定に当たり目標とされた戦略。2000年リスボンの欧州閣僚理事会で宣言された。注3)2010年6月に閣議決定された我が国の戦略(基本方針)。強みを活かす成長分野としてグリーン・イノベーション、ライフ・イノベーション重視の方針を打ち出した。注4)演繹が、規則(りんごは美味しい)、事実(この果物はりんごである)から結果(この果物は美味しい)を導き出し、帰納が、事実(この果物はりんごである)、結果(この果物は美味しい)から規則(りんごは美味しい)を導き出すのに対して、アブダクションは規則(りんごは美味しい)、結果(この果物は美味しい)から事実(この果物はりんごである)を推論する方法である。演繹推論が内容に依存しない論理構造をもち、帰納推論が多くの具体性や経験に立脚した論理性をもつのに対し、アブダクションは論理性がより弱く、推論を進める条件に種々の制約が必要となるが、一方で演繹や帰納とは異なり、大きな推論可能性を有する方法である。歴史的には、ニュートンの万有引力の発見やケプラーの天体の楕円軌道説等はその典型と言われている[11]。演繹、帰納、アブダクション:演繹(deduction)あるいは演繹的推論(deductive inference)とは、「推論の内容を考慮に入れずに推論の形式のみによって、真なる前提から必然的に真なる結論を導きだす」こと、帰納(induction)あるいは帰納的推論(inductive inference)とは「個々の具体的事実から一般的な命題ないし法則を導き出す」こと、である。一方、アブダクション(abduction)あるいは仮説形成的推論(abductive inference)とは米国の哲学者C.S.パース(1839~914)が主張した第三の推論形式であり[11]-[13]、「ある結果とそれを引き起こす可能性のある命題ないし法則から、個々の事例を導き出だす」こと、である。ロジックモデル:ロジックモデルは、研究プログラムがそ用語1:用語2:用語説明の目的を達成するまでの論理的な繋がりを明確にする際に、戦略形成の重要な要素であるシナリオを可視化するために開発されたツールで、アメリカで各省庁がOMB(行政管理予算局)に対する予算申請の際に活用されてきた。シナリオ作成のためには、リソース、研究開発、アウトプット、顧客、短期アウトカム、中期アウトカム、長期アウトカムという要素にブレークダウンし、時代背景を把握しながら、プログラムの長期アウトカムからバックキャストして、研究開発の成果を受け取る顧客に渡って生み出されるべき直接的なアウトカムを明確にして、取り組む研究開発の成果目標を読み取る作業が必要で、それを一枚の絵に落とし込むためのツールがロジックモデルである[4][5][23][24]。第1種基礎研究、第2種基礎研究、製品化研究:吉川弘之の定義によれば、第1種基礎研究とは、未知現象を観察、実験、理論計算により分析して、普遍的な法則や定理を構築するための研究を言う。また第2種基礎研究とは、複数の領域の知識を統合して社会的価値を実現する研究を言い、その一般性のある方法論を導き出す研究も含む。さらに製品化研究とは、第1種基礎研究、第2種基礎研究および実際の経験から得た成果と知識を利用し、新しい技術の社会での利用を具体化するための研究を言う[8][9]。基礎研究、応用研究、開発研究:OECDの定義によれば基礎研究とは、「特別な応用・用途を直接に考慮することなく、現象や観察可能な事実の基礎をなす新しい知識を得るために行われる実験的または理論的研究」を言う。応用研究とは、「主として第一義的には特定の実用的な目標や目的に向けられる新たな知識を獲得するための独創的な研究」、開発研究とは、「基礎研究、応用研究および実際の経験から得た知識の利用であり、新しい材料、装置、製品、システム、工程等の導入または既存のこれらのものの改良をねらいとする研究」を言う[15]。ROAMEF:R(Rationale:設定の理由と位置づけ)、O(Objectives:目的、目標、内容)、A(Appraisal:事前評価)、M(Monitoring:途上評価)、E(Evaluation:事後評価)、F(Feedback:ROAMEFサイクルによる見直し)のこと[16]。PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクル:マネジメントサイクルの一つで、1950年代に米国のウォルター・シューハートとエドワーズ・デミングにより提唱された理論で、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)の頭文字を取ってPDCAサイクルと命名されたもの。このサイクルを一周したら最後のActを次のサイクルのPlanにつなげ螺旋状に事業の改善を行っていく。またPDCAサイクルは小さいグループから組織全体にわたるものまであり、それぞれのPDCAサイクルが上位のPDCAサイクルと連環としてつながって行くことが望ましい[24][28]。用語3:用語4:用語5:用語6:
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