Vol.4 No.1 2011
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研究論文:研究戦略の形成とそれに基づいた構成的な研究評価(小林ほか)−21−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)のためには、関連部局との連携を強固に図りながら、目標に到達するためのシナリオを共に描いて戦略的な研究開発を分野横断的に進めることが強く求められる。研究機関が行う研究開発・技術支援の役割と将来像を整理するためには、各研究機関で展開されるべき研究開発の構成をプログラムとして最適化することが課題であり、長期的な戦略に基づいたプログラム構成になっているかという視点で今後構成的な研究評価を遂行することが肝要である。6 構成的評価の反映と連環戦略形成に基づいた構成的な研究評価の大きな責務の一つは、評価結果の反映である。産総研においては、前述のとおりこれまで隔年で研究ユニット評価を行ってきたが、その際(1)研究ユニットにおける研究のエンカレッジメント、(2)産総研経営へのフィードバック、(3)内外に対する説明責任の遂行、を目的として評価を行ってきた。これらのそれぞれのプロセスにおいて評価結果が有効に反映されることが重要である、特に事前評価の反映にあっては、そのプロジェクト等の開始や研究ユニット創設に当って研究開発に必要なリソース、環境、条件を最適化するように評価が活かされなければならないし、場合によっては大幅な目標の見直しも必要である。進行途上での研究評価にあっては、そこでの評価を次のステップにどのように繋げるかが重要である。そのためPDCAモデルを基本的に回していく方法論を確立することが大切で、最終的には評価が戦略へと螺旋的にフィードバックされ、新たな戦略の形成へと引き継がれていくことが最も望ましい。さらに研究開発の推進に当っては、研究成果がどこに受け渡されて直接的アウトカムを産むかを考慮することが必要である。また研究評価の課題として、プロジェクトレベルから政策レベルへのPDCAの連環が相互に有効に活かされ、全体として最適な戦略システムになっていることが必要である。連環が不十分なまま一部分のみのPDCAサイクルでは、戦略的な研究評価が十分意味を成しているとは言えない。公的研究機関であれば、期待されているミッションと投入リソースを含め、国として期待される機能を果たしているかという研究所レベルの評価から、国(あるいは地方自治体)としてそれを有効に活かす施策を行っているか、イノベーション政策の中で明確に位置付けているか等の政策レベルまで、評価が常に連環として繋がっていることが重要である[28]。7 おわりにこの論文では、研究の固有特性に立脚した研究戦略形成とそれを実現する研究開発プログラムに注目し、その研究評価を戦略形成とそれに基づく構成的評価の側面から見てきた。これまでの研究評価においても事前評価、中間評価、事後評価、追跡評価等が行われており、この論文で述べた構成的評価の要素もすでに取り入れられている。しかし、ここで改めて強調すべきことは、①研究評価にあっては、研究戦略が極めて重要であり、これとの対比による評価を基本に据えるべきであること、②また、研究の進展・深さ・位相の3側面からの評価が必要であること、③さらに、それらを全体としてまとめ仮説形成的推論を加えた構成的評価が重要であること、である。この論文で論考を進めてきた研究の固有特性、研究戦略の形成およびそれに基づいた構成的な研究評価の関係とそれらが及ぼす研究評価のねらいを整理したものを図12に示す。研究戦略は研究開発によって達成すべき目標とそのシナリオを示すものであるが、それに基づいて構成的な研究評価を行うことにより、研究の価値の抽出、研究の進化、研究者の意欲の源泉の創出、説明責任の達成等が有効に行われると考えられる。この論文で提示した研究戦略形成と構成的な評価をとおして、効果的に研究プログラムが進化しそれらが新たな発展に向かうことができれば、大きな意義を有すると考えられる。 研究の固有特性 (1)新規性 (2)独自性 (3)論理完結性 (4)作用性 研究戦略の形成 (1)大局的課題 (2)社会的(領域的)課題 (3)研究プログラム (4)研究プロジェクト (5)研究課題 構成的な研究評価 要素評価 (1)進展軸(2)深さ軸(3)位相軸要素評価の組み合わせと推論 (1)基本的考え方 ①研究の統一的取扱い ②契約に基づく評価 ③研究者-評価者の協力 (2)ねらい ①研究の価値の抽出 ②研究の進化 ③研究者の意欲の源泉 ④説明責任 研究評価の視点 トップダウン ボトムアップ 図12 研究の固有特性を念頭においた研究戦略形成と構成的な研究評価

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