Vol.4 No.1 2011
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研究論文:研究戦略の形成とそれに基づいた構成的な研究評価(小林ほか)−20−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)整理し(図10)、関連部局と共有した。この整理図を一般形として、窯業技術センター[27]の戦略形成へ適用した例を次に述べる。(2)窯業技術センターの戦略形成昭和5年に東彼杵郡波佐見町に設立された長崎県窯業技術センターは、県内窯業の発展・振興をその使命として、新材料や廃棄物の再資源化等の研究開発、新技術との融合による新分野の製品開発、陶磁器産業支援のためのモノ作り基盤技術の高度化等に取り組んでいる。今後の研究開発の戦略形成のために、陶磁器分野、無機材料分野、およびデザイン分野の産業支援について整理したロジックモデルのうち、陶磁器分野の整理図を紹介する(図11)。このロジックモデルでは「陶磁器の基盤技術と新製品の開発」が一つのプログラムであり、個々のアウトプット(例えば、「新たな軽量磁器素地開発技術」)に関する研究課題が個々の研究プロジェクトに該当する。また中長期アウトカムは中長期戦略に対応していると言える。上記の窯業技術センターのミッションのうち、陶磁器分野の目指すところは陶磁器産業の活性化であり、ブランド力の向上、新機能をもつ陶磁器製品による新たな市場の開拓、他産地との競争を勝ち抜く国内市場シェアの獲得を中・長期アウトカムとして掲げている。また、短期アウトカムとしては、生産コスト低減、高品質・高付加価値の製品開発、新分野展開、生活様式の変化に対応した製品開発、高度化支援が必要であると整理している。これらの短期アウトカムを得るためには、顧客に渡すべき研究開発のアウトプットとしてどのようなものが求められるかを詳細に整理したのが図11である。これらのアウトプットを出すためには、陶磁器の基盤技術と新製品の開発に集中した研究開発と生産現場に対応した技術支援を戦略的に進めることが求められる。5.2.3 研究事業評価の反映[28]と今後の課題長崎県の研究事業評価には、この論文で必要性を述べた戦略形成を取り入れ始めたところであるが、構成的な研究評価で示された考え方の導入は今後の課題である。しかし現在では条例に基づき、外部委員による研究事業評価を行い、県民や産業界のニーズを反映し、市場を見据えた研究の徹底を図っている。またそれを職員の意識改革にも活用している。評価のスキームとしては、県の研究機関が行う個々の研究を対象に、それぞれ事前評価、途中評価、および事後評価を、必要性、効率性、および有効性の視点で評価している。研究機関ごとに設定される分野研究評価分科会(外部評価委員6名)で評価を行い、その報告を基に親委員会としての研究事業評価委員会(外部評価委員8名)でメタ評価(Meta-Evaluation:評価事業そのものの評価)を行っている。2009年度からは、ロジックモデルを活用して各研究機関で取り組んでいるすべてのプロジェクトの俯瞰図を作成し、各プロジェクトの各研究機関のミッションに照らした位置付けや、研究の成果が顧客に渡ってどのようなアウトカムを形成していくかのシナリオを明示して、研究機関の全体的なプログラムに照らして適切にプロジェクトが推進されているかについて説明を行い、それに対して的確な評価コメントを得るようにしている。研究事業評価委員会の評価結果は、研究機関にフィードバックされてプロジェクトの改善に活かされるとともに、「長崎県科学技術振興ビジョン」に示された具体的施策の進行管理、科学技術の振興に資する新たな施策の提案、戦略的振興分野の提案等の議論に活かされている。幅広い視野から隠れたニーズを掘り起こし、市場が求める新たな技術を創出することは、長期的かつ永続的な経済効果を生み出すことに繋がり、雇用拡大も期待される。そ 将来に夢を持てる元気な長崎県産業構造の転換地域構造の改革既存産業の一歩前進シームレスな受け渡し(研究成果の事業化)② 安心で快適な暮らしの実現① 競争力のあるたくましい産業の育成科学技術の活用による生産高アップ・雇用拡大既存産業の体力アップ(地域資源活用型産業)地域発の技術、製品を大企業のバリューチェーンへ組み込み新事業、新産業の創出(高度加工組立、新エネ・環境、情報・電子)シェア拡大ブランド化自社製品の開発県内外からの受注、海外への輸出設備投資拡大新分野進出県内産業のマーケティング・デザイン力の向上地域資源活用製品の開発(技術移転)省力化、コストダウン県内産業の技術力の向上県内産業の生産性向上農林業者漁業者企業県民予防・在宅医療システム化技術機能性食品開発技術再生可能エネルギー導入技術農林水産技術の高度化ものづくり基盤技術の高度化技術支援研究開発リソース(人・物・金)最終目標長期アウトカム中期アウトカム短期アウトカム顧客アウトプット図10 研究機関のあり方構築のためのロジックモデル(長崎県科学技術振興課作成) 3Dプリンタによる迅速な見本作成技術他産地との競争を勝ち抜く国内市場シェアの獲得高品質・高付加価値な製品によるブランド化ブランド力の向上新機能をもつ陶磁器製品市場を創り出す新たな市場の開拓企業のQC活動を支援企業の製品化を支援業界対応地域人材養成依頼試験技術相談アウトプット生産現場に対応した技術支援技術サービス石膏型成型業の高度化支援陶磁器産業における資源の有効活用および生産コスト低減短期アウトカム厨房オール電化等生活様式の変化に対応した製品開発磁器製照明製品の開発技術輸入原料高騰対策・国内原料有効活用による新製品開発技術中長期アウトカム業務新たな軽量磁器素地開発技術科学的な可塑性評価技術確立新たなはい土配合技術陶磁器製品の高付加価値化技術燃料費を約20 %削減歩留まり良い量産技術確立陶磁器技術の新分野展開(照明・道路資材・その他)高品質・高付加価値な陶磁器製品開発(原料開発含む)陶 磁 器 産 業 の 活 性 化陶磁器の基盤技術と新製品の開発研究開発(共同研究含む)図11 窯業技術センターの戦略形成のためのロジックモデル(長崎県窯業技術センター作成)

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