Vol.4 No.1 2011
19/74

研究論文:研究戦略の形成とそれに基づいた構成的な研究評価(小林ほか)−16−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)が、特に研究プログラム・リーダーの経験者がいることが望ましい。Y軸には、研究の深さ(Depth)を示す。ここで言う研究の深さとは、研究成果にあっては第2節で述べた研究の四つの特性、①新規性、②独自性、③論理完結性、④作用性、のそれぞれについての質の高さと言える。また計画やプロセスにあっては、同様の特性として高い予測が期待される計画の緻密さや展望の大きさ、重要な研究成果に繋がる良好な研究の進捗状況ということができよう。ここでの評価者は、同一ディシプリン内あるいは複数のディシプリンにまたがるピアが必要となる。次に述べるZ軸(位相)の各段階では、異なった評価者が必要になる。純粋基礎研究の位相にある場合は、同一ディシプリン内のピアがよい評価者であるが、フェイズが社会的出口に近づくにつれて産業界やジャーナリズム界等の専門家が必要とされる。また、その際の作用性は社会的な効果の大きさやそれに繋がる可能性の高さということになろう。Z軸には、研究の位相(Phase)を示す。位相とは、基礎研究から社会的出口までのどの状態にその研究が位置するのかを示す指標である。例えばこれまでより研究は基礎研究、応用研究および開発研究に分けられて定義されている例や[15]、前述の第1種基礎研究、第2種基礎研究、製品化研究という分類に対応させることが可能である。評価者はそれぞれの位相において、それぞれの位相に即した戦略の意義と研究の内容について知見を有し、アウトカムの実現可能性を考察できる評価者が望ましい。この軸の評価においては必ずしも研究成果のみで評価をするのではなく、研究成果とそこに至るプロセスや今後予想される研究成果活用の道筋が推論されて評価される。その意味で、戦略に表された目標とシナリオ、それを具体化したロードマップ等が評価の基礎となるものであり、それぞれの位相(第1種基礎研究、第2種基礎研究、製品化研究等)での研究成果の意義を評価することとなる。なお研究成果の作用性が同一ないし異種のディシプリンに留まる場合は、作用性はZ軸の最下層にあると言えよう。その場合はピアにより深さ軸の中で評価される。以上をまとめると、この概観図は、その各軸が要素評価の軸を示しており、構成的評価の各要素評価の関係を構造的に位置付けて示していることになる。一方、これに研究開発の様相を当てはめて考えると、研究の位置付けがさらに明確になる。図6には研究開発のXYZ軸で作られた位相時空間配置を示す。各軸の評価を構成的に最終的な評価に結び付けるには、第一義的には戦略を参照する必要がある。戦略の形成段階において、研究成果が位相時空間の中でどの部分を占めることを意図していたかが明確に述べられていることが大切である。図6に透明のブロックで示された3次元構造は、戦略上構想された研究プログラムの研究成果の予測概念図を示す。この予測は前述のように演繹的・帰納的・仮説形成的推論が行われた結果として得られたものである。一方、同図で各色の実体のブロックとして示されているものは実際の研究の結果を示している。この透明ブロックと実体ブロック間の対比が最終的な評価に結び付けられることとなる。4.3.2 構成的な研究評価の実際個々の評価軸における評価は、その軸の戦略によって示された目標・シナリオとの比較によって行われる。X軸における進展評価においては、すでに述べたとおり研究の進展が戦略上計画し意図された時間とどの程度一致ないし乖離しているかが、評価指標となる。例えば予測された時間内での進展に計画との乖離があった場合、マネジメントの工夫によって成果の集約化や研究資源の「選択と集中」等によって加速が期待される場合には、その効果を仮説形成的に予測しなければならないという意味で仮説形成の過程が求められる。Process Process Process StrategyProcess Results Plan Process Results Plan Program 1 Plan Process Results Y Progress(進展)Phase(位相) X Z 0 Depth(深度)Program 2 研究の固有性①新規性②独自性③論理完結性④作用性(深さ)(位相)応用基礎実用化Phase1st 2nd 3rd 0 ProgressPlan Process Results (進展)DepthMedium Deep Initial (深さ)(位相)図5 戦略形成および研究プログラム実行に伴う構成的研究評価の俯瞰図図6 研究評価構成の概念図

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です