Vol.4 No.1 2011
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研究論文:研究戦略の形成とそれに基づいた構成的な研究評価(小林ほか)−15−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)研究プログラムに沿った各研究プロジェクトの計画と内容、実行するための体制や研究資源、時間、場所等をきめ細かく検討する。特にその研究プログラムの狙いを明確化し、研究プログラムが含む複数の研究プロジェクトについて個々の計画・リソース・予想アウトプット、等とともにそれぞれの研究プロジェクトがどのように相互作用(プロジェクト成果の共有や活用)をするのか等のダイナミックな関連性が明らかにされることが重要である。事前評価には蓋然性の高い推論に則って戦略を判断する帰納的かつ仮説形成的な評価の実施が必要になろう。一例を挙げれば、ある有機材料を利用した新技術の開発により地球温暖化ガス低減・低コスト生産・高い輸出競争力に資するという研究戦略を作ったとして、現状の材料・デバイスの性能から判断して実現可能性が高いということが帰納的に推察されるものの、一方でその耐久性に問題があるという反論に対しては、水分や酸素との接触を極力避ける技術開発により耐久性を飛躍的に向上できるいう仮説による推論のもとに戦略の事前評価を行うことが可能となる。なお、一方で状況の変化に沿って適切に対応できるシナリオの柔軟性が重要になるであろう。ただし、戦略やシナリオ形成の厳密性と柔軟性の両立は必ずしも容易ではなく、その柔軟性をどのように埋め込んでいくかも課題の一つである。プロセス評価では、個々のプロジェクトの進行状況を確認するとともに、問題があれば修正するというフィードバックや、他プロジェクトとの連携の推進を推奨する等ダイナミックな対応が必要である。アウトプット評価は、プログラムの達成によって具体的に出た成果が所期のプログラム目標と比べてどうであったかを確認する。ここでは第1種基礎研究にあっては後述するピアによる評価が第一に重要であるが、社会的な効果が主要になってくる場合は専門家やステークホルダーの評価が重要になってくる。プログラム評価では、戦略で目指した研究プログラムの目標とシナリオの実践が確実に行われたかどうかを検証する評価が行われる。また直接的アウトカム評価は、研究プログラムのアウトプットが外部に渡されて産まれる直接的アウトカムが戦略の目標と比べてどうであったかを検証する評価である。ただし、この直接的アウトカムの創出はプログラム終了後ある程度の時間がかかるのが普通である。評価はフィードバック・ループ(Feedback Loop: FBL)が大切である。上記の過程で、FBL①では事前評価で抽出された課題がプログラム構築に戻され反映される。FBL②はプログラム実行の際に、プロジェクト・レベルで行われるいわゆるPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクル用語5の一つである。ここでは個々のプロジェクトでの進行状況チェックがプロジェクトの軌道修正や投入リソースの見直し等に反映される。FBL③④はプログラム評価およびアウトプット評価で評価された内容が次のステップのプログラム形成に反映されるループである。FBL⑤は、直接的アウトカムの評価を研究戦略の修正や新たな戦略の形成に役立てるプロセスである。なお、研究プロジェクトは研究プログラムに比べて単純な構造あるいは機能を有している。そこでは、研究目的、研究手法、研究成果、想定されるアウトカムが小さな範囲に留まっているが、研究プログラムとフラクタル構造を有していると言えるので上記の評価プロセスが適用可能である。ただし研究プロジェクトは、研究プログラムの一要素として位置付けられるために研究戦略の事前評価の部分は簡略化できると考えられる。4.3 構成的な研究評価とその活用4.3.1 俯瞰的概念図図5に研究戦略形成に基づく研究プログラム実行に伴う研究評価の俯瞰的概念図を示す。まず研究評価を幾つかの要素評価に分けて分析的に考察する。X軸に研究の進展(Progress)を示す時間軸を示す。ここでは、図4のプログラム構築からアウトプット創出までの過程を単純化して計画(Plan)・研究実施(Process)・成果創出(Results)という三つのブロックで一つのプログラムを示している。この評価軸での評価は、研究の進展(Progress)が戦略で想定した過程に沿って研究の計画・実施・成果創出がなされているかを主として判断することになる。ここでは研究の内容もさることながら、研究の効果的な進展のためのマネジメントを主に評価することになろう。ここではすでに合意された戦略という規範に則って演繹的に判断することが必要であるが、それのみではなく研究マネジメントのさまざまな試みや工夫のエンカレッジを行う評価が必要となる。ここにおける評価者は研究の進展に経験を有するピアおよびエキスパート(専門家)が相応しいプロジェクトAプロジェクトAプロジェクトBプロジェクトB戦略形成戦略形成直接的アウトカムの創出直接的アウトカムの創出アウトプットの創出アウトプットの創出プログラムの達成プログラムの達成プロジェクトAプロジェクトAプロジェクトBプロジェクトBプログラム実行プログラム実行プログラム構築プログラム構築アウトカム評価アウトカム評価アウトプット評価アウトプット評価プログラム評価プログラム評価プロセス評価プロセス評価事前評価事前評価⑤④③② ② ①①図4 戦略形成からアウトカムに至る過程での評価

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