Vol.4 No.1 2011
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研究論文:研究戦略の形成とそれに基づいた構成的な研究評価(小林ほか)−14−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)例えば、超低エネルギー消費の光スイッチ素子の開発とそれを用いた光パスを利用した通信ネットワークが構築できれば現状のインターネット通信の電力消費を3桁程度落とせるという推論ができたとして、それにより低炭素社会の実現に大きく貢献するというシナリオが描ける[14]。これは一つの要素技術であるが、そのような要素技術群の実現をベースに研究プログラムの構成を行う方向がある。これらは個々の事実と特定の論理的推論から命題を形成する言わば帰納的な戦略形成と言えるが、ここにもやはりアブダクションによる推論が入っている。現状の技術を纏め上げて一つの具体的なシステムに創り上げるには多数の仮説が必要だからである。このように、演繹的なトップダウン的構成性と帰納的なボトムアップ的構成性の結節点としての仮説形成的(アブダクティブ)な研究戦略形成が必要となろう。3.2 研究プログラムの構成研究プログラムの構成に当たっては、このような学術的枠組みの中でどの領域(Domain)に研究の主たる中心を設定するかの考察が必要となる。今後の地球的・人類的課題(例えば産業発展と環境問題)を解決するためには、単一のディシプリンに依存するだけでは不可能で、人文・社会科学の知識も含んだ多分野にわたる知識が必要になる。そのための領域はかなりの広がりを有することになる。また研究プログラム設定にあたっては、研究戦略によって示された研究プログラムの目標とそれを達成するための具体的なシナリオを示すことが必要である。それを時間軸上に逐次達成すべき里程標(マイルストーン)とともに示したものがロードマップである。そのためには、図3に示すようにこの研究プログラムαを構成する個々の研究プロジェクトの設定が必要となる。この場合は、幾つかの研究領域の課題である研究プロジェクト群(A、B、C)からプログラムが構成されていることを示している。4 研究評価の構成4.1 研究評価について研究評価を考えるに当たって、それが研究者の役に立ち研究を進化させるものとすることが望ましいが、その一方でたとえ基礎研究であっても社会の中できちんと研究の「価値」を見えるものにし、社会の理解と協力を得るための有効な手段として活用できることが重要である。そのために以下に基づく考え方で、研究評価を進めるのが相応しいと考えられる。すなわち、(1)研究評価の方法の基本的考え方として、①基礎研究、応用研究、開発研究用語4[15]、あるいは第1種基礎研究、第2種基礎研究、製品化研究[8][9]に限らず統一した考え方で研究とその評価を捉えること、②契約に基づいて研究評価を行うこと(研究の狙いを、戦略およびシナリオとして関係者(研究資金提供者、研究推進者、評価者)があらかじめ契約内容として共有しておき、それに基づいて評価を行うこと)、③評価者と被評価者が同じ地平で協力できること、等が挙げられ、また(2)研究評価が目指すこととして、①研究の価値を引き出せること、②研究が進化すること、③研究者・研究推進者の意欲の源泉になること、④スポンサーやステークホルダーへの説明責任が果たせること、等が挙げられる。以下では、研究評価の特質について考察を進めた上で「構成的な評価」の説明を行う。なお、「構成的な評価」とは、研究評価のいくつかの側面(これを要素評価と呼ぶ)の特性を明らかにした上で、それらの関係を構造的に明確に位置づけ、研究の総合的な評価を構成する評価法、と定義できる。なお、これまでの研究評価の方法について大谷による分かり易い論説が出されたので参照されたい[16]。4.2 研究プログラム・プロジェクトとその評価研究開発の評価にあたっては、研究のそれぞれの過程での評価の特質を把握しておく必要がある。主なものとして①事前評価(Appraisal)、②プロセス評価(Process Evaluation)、③アウトプット評価(Output Evaluation)、④プログラム評価(Program Evaluation)、⑤アウトカム評価(Outcome Evaluation)等がある。図4に、戦略形成からプログラムの構築・実行、アウトプットの創出、プログラムの達成、直接的アウトカムの創出までの戦略に基づく一連の研究開発プロセスにおいて、どのような評価とそのフィードバックがなされるかを示してある。なおこれらの一連のプロセスは最近ROAMEF用語5というプログラム評価の方法論として推奨されているものにおよそ等しい[6][16] 。研究評価に当たっては、初めに事前予測(Foresight)に基づく事前評価が特に重要である。事前評価では、戦略に沿った研究展開シナリオと研究プログラムの妥当性、 研究プログラムα研究領域3研究戦略の目標研究領域4研究領域1研究領域2研究プロジェクトB研究プロジェクトA研究プロジェクトC図3 研究プログラムを構成する研究プロジェクト群とその特性

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