Vol.4 No.1 2011
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研究論文:レーザー援用インクジェット技術の開発(遠藤ほか)−8−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)インクの濡れ広がりを抑制する技術課題を設定して解決することにより、インクジェット印刷技術のスループットの向上と低配線抵抗化を実現できること、レーザー援用インクジェット技術によってインクの濡れ広がりが抑制され、3次元実装に必要である高周波伝送への対応や非平面基板上の配線描画、さらにはフレキシブルな基板への配線描画技術としての可能性をもつことを示した。このような、レーザー援用インクジェット技術が実装技術に及ぼす位置付けと可能性は以下のとおりである。①ICチップの高周波化:高周波伝送線路の作製と1 GHz−40 GHzの良好な高周波特性 ・素子間配線の短距離化をせずに高周波伝送できる可能性②3次元配線技術:凹凸段差かつ粗面基板上への配線が可能 ・フリップチップ実装のみではなく電気的な接続の簡易化③配線の耐久性:配線の密着強度の向上 ・耐環境性が求められるデバイスの配線への適応性この結果を足掛かりとして実用的な3次元実装技術として確立するためには、まだ多くの技術課題を解決する必要がある。その基盤となるレーザー援用インクジェット法の基礎メカニズムや、配線を高アスペクト化する現象の解明も重要である。すなわち、今後は、第2種基礎研究を入り口として、第1種基礎研究と製品化研究への両面展開を図っていく必要があると考えている。この論文で示した、液滴直径以下の配線幅をもつ配線が形成されるメカニズムや配線の高アスペクト化が実現される現象はまだその原理が解明されておらず、今後一層の高性能を目指すためには現象解明を目指す基礎研究、すなわち、第1種基礎研究が必要である。一方、実用化までの時間を大きく短縮するために、インクジェット印刷技術の不得手とする分野である生産効率の向上を開発課題の中心として、多機能化や歩留まりの向上を目指した技術開発は、製品化研究と位置づけられる。生産効率の向上のための技術課題としては、マルチノズル化やポストアニール処理技術の高度化等があり、また多機能化の技術課題としては、機能性インクの開発や各種基板材料への適応性把握、描画条件の制御技術等が挙げられる。このように、研究開発の進展に伴って、第1種基礎研究から製品化に至るまで技術開発課題は多様化していく。当然ながら、産総研のような単独の研究機関のみで実用化技術として進めるには、人的資源や資金面でも限界がある。第2種基礎研究で取り組んだ研究結果の技術コンセプトを効果的にアピールし、さまざまな分野の研究者や技術者の集積を図って産学官連携を進めていくことが必須である。そして、このような研究開発の展開を通じてレーザー援用インクジェット技術を実用化の方向に進め、ミニマルマニュファクチャリングを実現するための基盤技術として確立していきたいと考えている。6 まとめと将来展望この論文では、インクジェット印刷技術による配線技術を発展させ、実用的な多品種変量生産方式のための基盤技術となる可能性をもつ、レーザー援用インクジェット技術の研究開発の過程を報告した。他の実用化されている配線技術と比較し、多品種変量生産のための課題抽出と解決手段を選択する過程と、それに伴う研究結果とその結果の位置付けについてとりまとめ、今後重要となる課題や進めていく技術展開の流れについて記載した。今後は、さらに、多機能化の開発を進めて、ユーザーの欲しい機能を即座に提供するカスタムメイド生産に繋げていき、これまでの市場の拡大や新しい機能をもった電子機器新規市場の創出につなげていきたい。また、レーザー援用インクジェット技術のスループットをさらに向上させ、これまでのインクジェット印刷技術では不可能であった大面積デバイスに対応できる技術として発展させていく予定である。謝辞この研究の成果は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「高集積・複合MEMS製造技術開発事業 MEMS−半導体横方向配線技術(高密度な低温積層一体化実装技術)」(2006年度~2008年度)によって得られたものであり、研究を進めるにあたり材料の評価に協力していただいた産総研先進製造プロセス研究部門の朴盈珪氏と電気特性の評価に協力していただいた津田弘樹氏に謝意を表します。粗面基板鏡面基板配線したテープ配線したテープ配線の剥離配線の剥離セロハンテープセロハンテープ剥離試験テープ接着描画配線図11 鏡面基板と粗面基板上の配線のテープ剥離試験

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