Vol.4 No.1 2011
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研究論文:レーザー援用インクジェット技術の開発(遠藤ほか)−7−Synthesiology Vol.4 No.1(2011)接地導体が同一平面内に配置しているコプレナ伝送線路のパターンをレーザー援用インクジェット技術のみでパターニングし、高周波伝送特性の測定を行なった。ネットワークアナライザによるTRL(Thru-Reflect-Line) 校正法による高周波数領域で伝送特性(S21)と反射特性(S11)のパラメータ測定によって、伝送線路やパッケージを考慮した場合、どの程度の周波数まで使用可能かを正確に把握することができる。配線の比抵抗値を3×10−6Ω・cm、長さ4 mm、配線幅30 µm程度の矩形形状の配線と設定して1 GHz−40 GHzまでの高周波伝送特性のシミュレーションを行った結果と実験結果を併せて図9に示す。これまでのインクジェット法による配線は、ドット様の配線形状を持ち、配線の高周波伝送が困難であったが、レーザー援用インクジェット技術による配線では、理論計算値と実測値がよく一致しており、高周波伝送が可能な配線が実現されていることがわかる。また、S11の結果から、周波数が高くになるにつれて、計算値と実験値で利得の若干の隔たりが見られるが、これは、レーザー援用インクジェット技術で作製したコプレナ伝送線路パターンの配線側面部分の乱れが、電磁界のインピーダンス整合に影響を与えているものと推察される。一方、S21の結果から、レーザー援用インクジェット技術による描画配線は、40 GHzまでの信号を伝送することが可能であり、10 GHz程度までは減衰が少ないことから、良好な伝送特性が得られていることがわかった。以上の結果から、10 GHz程度の高周波領域であれば、レーザー援用インクジェット技術によって、3次元実装におけるチップ間接続やワイヤボンディングで困難とされていた高速伝送実現の可能性が示された。4.3 段差乗り越えレーザー援用インクジェット技術の凹凸面への描画の適用可能性と、粗面基板上のインクの濡れ拡がりの抑制効果の2点を確認するため、深さ200 µm程度の凹型に研磨したガラス基板上に配線を描画した。段差・粗面基板上で描画された配線パターンの電子顕微鏡像を図10に示す。レーザー援用をしない場合、基板表面粗さが大きいと、基板表面の微細凹凸の面内方向の毛細管力により、描画パターンは著しく広がっており、研磨溝の両端で配線抵抗を測定したが、導通が確認できなかった。一方、レーザー援用を行った場合では、基板表面粗さの影響を受けず、段差部でも同様な配線幅で描画されており、研磨溝の両端で配線抵抗を測定したところ導通が確認された。以上の結果から、レーザー援用インクジェット技術が、ICチップ間接続において、バンプや微細貫通ビアを用いない側面接続や濡れ性が異なる基板間の配線へ適用可能であることが示された。4.4 粗面基板による配線の密着力の向上レーザー援用インクジェット技術によって鏡面基板と粗面基板を用いて配線を描画し、メッキの剥離試験(JISH8504)と同様にセロハンテープによる剥離試験により配線の密着力を確認した。図11に鏡面基板と粗面基板上の配線のテープ剥離試験の結果を示す。この結果、鏡面基板上の配線は、セロテープに密着し、配線全体が基板から剥離した。一方、粗面基板上の配線は、セロテープの密着力では剥離しなかった。この結果から、基板表面に粗面加工を施せば、物理的アンカーリング効果により基板との密着力向上が可能であるこが示唆された。しかし、配線幅、厚さが数十 µm程度の微細配線の密着性を定量的に測定する方法は確立されておらず、配線の密着強度の評価方法について新たな開発が必要である。5 レーザー援用インクジェット技術がもたらす技術的な可能性と今後の展開この論文では、電子デバイスの多品種変量生産における配線工程においてレーザー援用インクジェット技術によってこれまでのインクジェット印刷技術では困難とされていた課題を解決する可能性を示した。周波数 (GHz)S11(dB)S21(dB)005101520253035400-20-20-15-10-10-5-30-40S11S21S21(a)(b)5kU×75200 µm45 22 SEI5kU×75200 µm48 22 SEIガラス基板描画配線研磨溝ガラス基板描画配線図9 描画配線の高周波伝送特性(<40 GHz、青:実測値、ピンク:理論計算値)図10 段差乗り越えと粗面基板上への配線(a)レーザー援用なし(b)レーザー援用あり

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