Vol.3 No.4 2010
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研究論文:SiC半導体のパワーデバイス開発と実用化への戦略(荒井)−264−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)3.2 産総研時代(2001年~2007年)の戦略と成果−ウェハからシステムまでトータルソリューションの提案−NEDOプロジェクトを2年残す段階で、2001年工業技術院研究所から産総研への組織再編が行われた。そこでは、特定のミッションを持つユニットとしての研究センターが設計された。研究開発フェーズとしてはSiCパワーデバイスの展開が見え始めた時であった。新規デバイスがパワーエレクトロニクスとして実用化するかどうかはデバイスの性能だけでなく、往々にしてトレードオフ関係にある各種要素技術をいかに最適に統合していくかが重要であると明確に認識していた(図7)。またこの時期、国内産業界におけるパワーエレクトロニクス研究開発は、システム側のインフラへの投資抑制にともない困難な状況にあった。新規パワー半導体デバイスの実用化をめざした研究開発には、長期的研究開発を担う公的機関の役割が重要であると考えた。そうした考えのもとに、一研究ユニットの中で材料からデバイス・プロセス開発、そして変換器、システム応用への展開をすべて含んだ一貫した基盤研究開発(トータルソリューション)を行い、「革新的パワーデバイスによるパワエレの革新」を実現することを掲げ、5グループからなる「パワーエレクトロニクス研究センター」(PERC)が設立された。研究センターの前半期は「超低損失電力素子」プロジェクトの目標達成に注力したが、それも含めて「革新的パワーデバイスによるパワエレの革新」という目標に向けて本格的に活動を開始した。常勤専従職員14人で、回路・実装チームは常勤職員ゼロ、実装チーム、システム応用チームは産総研内の他研究ユニットからの併任研究者でのスタートであった。発足時には選択と集中の観点から、この統合的アプローチへの批判もあったが、産総研の「第2種基礎研究を軸にした本格研究」推進と軌を一つにしていることで次第に認知され、職員数も2007年には18人に増員し、併任研究者5人と常駐メンバーを合わせると陣容は80人を超すまでになった。「超低損失電力素子」プロジェクトが終了した後、その成果をもとに、より実用化への貢献を意図したNEDO提案公募型省エネルギー先導研究開発の2課題(2003年度~2005年度)(「超低損失デバイスとMOS信頼性と変換器の高パワー密度化の基盤研究」と「先進的ダイオード開発」)(企業との共同提案)を中心に研究開発を進めた。それらの成果により、三菱電機(株)の変換器実証を柱とするNEDOプロジェクト「パワーエレクトロニクスインバータ基盤技術」(略称「インバータ」プロジェクト)(2005年度~2007年度)へと展開することができた。そこではパワーデバイスの実用化を保証する大容量化、高信頼化(MOS酸化膜)、変換器の高パワー密度化の可能性を明確化する研究開発を企業との集中研究方式で進めた。3.2.1 ウェハ課題への貢献プロジェクトで開発した技術は学会等で公表するとともに、積極的に産業界に移転した。日本で開発された結晶欠陥低減成長法(RAF法)をも踏まえて、欠陥の低減と大口径化の開発を進めるとともに、ウェハの実用化に不可欠な切断・研磨技術の開発とその技術移転も行った(図8)。エピについては、C面ではオフなし面でも成長が可能であり、かつC面上に形成したMOS界面の移動度が高いという発見を基に、エピ技術の実用化を促進するために、(財)電力中央研究所/昭和電工(株)/産総研が共同研究体大村一郎(東芝) : 次世代パワー半導体デバイス実用化調査パワーモジュール技術の諸課題周波数容積配線の壁回路実装の壁損失ストレスの壁EMI・電気回路トポロジーの壁半導体材料の壁デバイス構造の壁信頼性の壁(寄生要素)電気抵抗の壁熱抵抗の壁温度の壁絶縁の壁AIST/PERC ウェハ 転位密度 : 約2000 - 500本/cm2 貫通螺旋転位 極少市販ウェハ 転位密度 : 約10,000本/cm2前後研磨表面の原子間力顕微鏡像• 高速かつ環境にやさしい 工業的研磨プロセス• 原子オーダーの平坦性Si face(0001) 4H-SiC ~0° offSi face(0001) 4H-SiC 8° off研削・研磨単結晶成長90 min~1 process90 min1 process~15 min1 process(CMP)化学機械研磨(ラッピング)機械研磨研削切断・成形75 mm径単結晶3インチ高品質4H-SiCウェハ大型4H-SiC単結晶図7 パワーモジュール技術の諸問題いろいろな要素課題は複雑に関係しており、統合的に解決していかなければならない(次世代パワー半導体デバイス調査委員会 大村一郎氏((株)東芝)作成)。図8 SiC単結晶ウェハ作製技術ウェハの高品質化、低コスト化はSiCパワーデバイス実用化の最重要課題である。低コスト化には、単結晶切断・研磨等の周辺技術の開発も重要である。

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