Vol.3 No.4 2010
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研究論文:SiC半導体のパワーデバイス開発と実用化への戦略(荒井)−262−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)では軍事目的の研究開発でも、将来、産業として花開く可能性のある基盤研究は通産省(現経済産業省)が支援すべきである」との主張だけでなく、SiC半導体を用いた新デバイス産業が興り、SiCパワーデバイスの導入によって大きな省エネ効果が期待できることを提示したことがプロジェクト化の力になった(図3)。「超低損失電力素子基盤技術開発」プロジェクトにおいては、基礎研究が中心であった国内で、パワーデバイス開発の基盤となるウェハ技術とデバイス・プロセス技術を早急に構築する必要があった。そこで、すでに実用レベルの素子開発が行われていたショットキーダイオードは主要な対象とせず、パワーエレクトロニクスに革新をもたらすスイッチングデバイスの基盤技術の開発に的を絞った。FETデバイスを作製できるまでの力のあるデバイスメーカー3社(株)日立製作所、三菱電機(株)、新日本無線(株)が異なるタイプのFET(MOSFET、JFET、MESFET)の試作開発を目指すとともに、産総研に産官学が結集して材料・プロセス・デバイスの一貫した基盤研究開発を一体的に行うプロジェクト(参加研究者が一か所に集まる集中研究方式で、新機能素子研究開発協会との共同研究開発)として進めた(図4)。重要な要素技術ごとに産学官の混成グループを形成し、Si半導体とは異なる要素技術を必要とするSiC半導体の技術開発を進めた。このプロジェクトは、1994年より6年間の京都大学松波弘之教授(現プラザ京都館長)をリーダーとして関西で進められたNEDO重要地域技術開発(重要地域技術研究開発「エネルギー使用合理化燃焼等制御システム技術開発」(1994年度~1999年度)、NEDO)とともに、SiCパワーデバイス研究開発の国内における基盤を構築することに貢献することができた。2000年5月には国際ワークショップを開催し、日本における国家的SiC研究開発を国際的にもアナウンスした注2。これは、研究者人口の少ないこの分野において国際協力を進める上で有効であった。次項でこのプロジェクトにおける特徴ある開発アプローチと成果を示す。3.1.2 「超低損失電力素子技術開発」プロジェクトの成果当時SiCウェハの供給は、米国クリー社の独占状態にあった。デバイス製造企業がデバイスの製品化に安心して投資するには、安定してウェハ供給ができるセカンドソースを必要とする。独占状態では、ウェハ供給の安全性に懸念があるだけでなく、ウェハ価格と品質の向上が一社に握られてしまい、デバイスのコスト低減や性能向上に直結するウェハへのデバイスからの要求が通りにくいからである。Si変換素子をSiC変換素子に置き換えることによって電力変換損失を1/3にすることができ、2030年には580万kWもの省エネルギー効果が得られる。580万kW203020202010200019900510電力変換損失(×100万kW)Si素子の場合の全損失SiC素子の場合の損失幹線電力系統損失・ 直流送電・ 電力補償(SVC等)分散電源損失・ 太陽電池・ 燃料電池・ 超伝導電力貯蔵電力系統周辺回路損失中小規模電力系統損失・ 保護回路・ 配電柱用産業用電力機器損失・ インバータ・ 電気自動車幹線電力系統変換損失低減中小電力係分散電源変換損失低減産業用電力機器変換損失低減電力システム技術電力変換基本技術SiC素子技術SiC基盤技術研究開発フェーズ超低損失電力素子開発の電力変換への波及効果図3-aイメーイメージを 経済産業省資源エネルギー庁省エネ対策課「省エネルギー技術戦略」デバイス開発計画による予測高品質・低コストウェハ供給による導入普及の前倒し圧延機26342634モータードライブのインバータ化率向上4466ウェハ供給確立による積み増し(主としてモータードライブへの普及拡大)コンピュータ用電源分散電源無停電電源電気自動車・燃料電池自動車SiCデバイスの導入シナリオとその省エネルギー効果モータードライブ万kl/y 省エネルギー量 原油換算80080048948917661766901901200520102015202020252030年10002000300040005000図3-b 新規半導体素子研究開発への取り組み 一貫研究開発が必要 ・ 基板結晶技術 ・ プロセス技術 ・ 基本デバイス作製新しい半導体材料であるSiC ・ GaN素子は、Siテクノロジーの延長技術では基盤技術確立が困難オン抵抗基板結晶成長除去原因材料科学デバイス科学欠陥欠陥欠陥電極抵抗チャンネル抵抗チャンネル抵抗電極実際理論値理論値SiCSi耐圧基本デバイス作製 ・ 評価プロセス要素技術図3 SiCデバイスが導入された時の日本における省エネルギー効果オリジナルの図面は工業技術(1997.8 石井格)に掲載(図3-a)。幾度かの改定の後、「省エネルギー技術戦略」(図3-b)に採用されている。図4 NEDOプロジェクト「超低損失電力素子基盤技術開発」の開発コンセプト

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